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対世界悪特殊組織に入った僕は約束を果たす  作者: 火皿木
1章  ビレバール第十七駐屯地 殲滅作戦
6/8

3 月夜の・・・

 同日、夜。

 某区ホテル。


 「っはあ・・・疲れたぁ」

 

 恐ろしい人混みと猛暑により宮人の身体は予想以上に疲弊していた。

 どうにも都会は合わなかったみたいだ。

 秋葉で買ったグッズやポスター諸々の入った袋の束をベッドに放り投げた。

 同時にボフッとベッドに飛び込む。

 そのまま大きく伸びて半回転、つまり仰向けだ。


 ・・・。

 天井一点だけを見つめ昼頃から頭を離れない彼との会話を思い返す。

 ー父親の後を継ぐ気はないかい?


 手紙を渡された時からある程度の予想は付いていた。

 しかし、直に言われると衝撃のような胸が大きく跳ねた。

 自然に手にも力が入りズボンの裾と手紙をくしゃっと潰す。


 「・・・後を継ぐって、航空自衛隊になれってことですよね」


 「ああ、そうだ」

 

 「・・・ニュースとか観てたら少しは分かりますよ。

 何処でしたっけ・・・確かフェルロンド帝国だったか。

 そこが最近結構な頻度でうちの国に不法で侵入しているらしいじゃないですか。

 そんな中で求人なんて」


 戦争の為の人員調達ですか?と最後は言葉には出せなかったが。

 宮人の意図は伝わっただろう。


 「そうだな、正直に言えば人員募集だ。

 最近は技術の進歩もあって哨戒等ある程度はリモートでも可能になったのだが、その影響で隊員も減少する一方でな・・・勿論帝国の件もあるが」

 

 「リモートって進んでるんですね・・・ってかそれこそ人間いらなくないですか?

 もう基地内全部機械でいいじゃないですか!」


 機械、AIであることの危険性を知った上で冗談めかして言った。

 

 「それ本気で言ってたらバカ・・・いや、その様子だと冗談だろうから言及はせんが。

 どれだけ技術が発達しようが便利になろうが機械は機械だ、それに現代の技術ではまだ人間の力が必要になる。

 だが、それ以前に君はパイロットの適性があると感じている、それも戦闘機のだ」


 「感じているって・・・そんな見かけで判断できるんですか?」


 お世辞を言っているようにしか聞こえない。

 しかし、彼は自信有り気に腕を組み大きく首を振った。


 「ああ、あるともさ!

 君は素質、いや才能があると思っているよ、なんせ圭の息子だからな!」


 「遺伝ってことですか!?」


 親から受け継いだ才能、なるほどそう言ってしまえば聞こえはいいかもしれない。

 もしかすると自分は本当に人より長けたものを持ち合わせているのかもしれない。

 -だけど、そんなのは。


 「・・・そんな子供が飛びつきそうなこと、僕には無駄ですよ」


 「いや、真剣に考えての発言だぞ。

 てか子供が飛びつきそうなことってな、お前もまだ子供に含まれるぞ。

 俺からしたらな」


 「・・・・・・・・・・・・・・」


 宮人が黙り込んでしまうと、今度はその身体をジロジロ舐めまわすように見てきた。

 はたから見れば変態とも取れるその行動だが。


 「ふむ・・・お前結構身体付きいいな。

 普段から鍛えてるのか?」


 さすがは筋肉盛々の大男である。

 筋肉を見る目はある。


 「そう、ですか?ありがとうございます。

 筋トレだけはやってるんですよ」

 

 「ふうん、筋トレね」


 寺川は意地悪そうな笑みを貼り付けてまあいいかとかぶりを振った。

 それに対して宮人は白々しく空笑いで合わせる。 

 

 「まあ、話もできたし今日はこの辺でいいか」


 「え?もういいんですか?もっとギリギリまで勧誘してくるかと」


 あっさり終わりを告げた。

 こんなことならわざわざこんな所まで呼ばなくてもいいだろうに。


 それからLI〇Eを交換して挨拶をした後に。

 

 「そう言えば寺川さんって自衛隊なんですか?」

 

 「・・・・・・・・・・・・・ははっ・・・・また近いうちに、な」


 そう言って店を出て行った。

 

 「・・・・・・・・・・はああぁぁぁぁ」


 緊張が一気に解け、思わず声を上げながら壁に寄りかかった。

 いつの間にか蒸気した自分に驚きながら落ち着く為にカップを手に取る。

 ゆっくり飲もうと少しずつ傾けながら口へと移そうと。


 「・・・あれ?」


 ー中身がない。

 カップが、オリジナルブレンドの香りのみしかそこにはなかった。

 寺川さんのかな、と失礼ながら思ってしまったが会計する時に持っていくのを思い出して可能性を捨てた。

 

 じゃあ何時飲んだんだっけ。

 もしかすると話に集中し過ぎて飲んでいたことに気づかなかったのか。

 ・・・もったいない。

 

 それだけ喉の渇きが凄かったのか。

 

 「仕方ない、もう一杯貰うか」

 

 カップとコースターを持ちカウンターへ向かった。

 

 「すいません、おかわりを・・・・」


 「申し訳ありません。

 当店は午後1時までの営業となっておりまして」


 「あ・・・そうなんですか」

 

 客の気配を感じないと思ったらもう閉店間近だったらしい。

 コーヒーはまた明日にお預けのようだ。

 そうですか、と会計を済ませた。

 

 ゆっくりできなかったのは残念だったがこの店を発見したことは大きい。

 店員の声を聞いて店を出た。


 ********************


 回想から帰った宮人は長い溜息を吐いてベッドから立ち上がる。

 弾力の良さが生かされてトランポリンのように跳ねた。


 「・・・少し夜風にでも当たるか」


 気分転換でもと部屋を出ようとする。

 そこで。


 「あ、忘れてた」


 宮人はアニメイラストの描かれた袋の中から一つ、全く柄も作りも違うー雑貨店の小袋。

 その中身をゆっくり取り出し腰に差し込む(・・・・)。


 カードキーをポケットにしまい、入口の自動ドアの前に立って。


 都会の星も映さない月夜。

 爛々と輝く故郷の闇夜とは違う、都会の明かりは空をも覆う。

 そんな空に宮人は何故か寂しさを感じた。


 ぶらぶらと当てもなく歩く散歩道。

 遠くでは車やトラックの往来の音が耳に新鮮さと謎の安心感をもたらしてくれて。

 悪くないと道中の自販機で買った某黒い炭酸水を飲む。

 

 程よい気温、甘い飲料と痺れる炭酸。

 郊外に建てられたホテルである為・・・他のホテルを知らないが自然の多いことが印象的。

 たまにすれ違う散歩人にも田舎にはない新鮮さを感じた。

 

 時刻は21:30。

 農業に勤しむ爺さん婆さんの家は布団に入った頃だろう。

 この時間、こんな明るくない。


 「そろそろ・・・戻るか」

 

 頃合いを感じて立ち止まり元来た道に振り返る。

 ・・・公園がある。

 

 どんな公園と比べても変哲も遜色もない。

 街灯の灯に照らされてブランコ、滑り台、トンネル、砂場・・・ゴミ箱。

 ゴミ箱ー手に持つ空のペットボトルを見る。

 

 「もう少し風に当たってるか」


 公園なんて何時振りだろうか。

 というか来たことなんてあっただろうか。

 入口の境界、足元にある下水管のカシャンというやけに響く音。

 

 ゴミ箱近くのベンチに腰掛けそこから投げ入れる。

 宙で綺麗な弧を描き、同じペットボトル類の音に塗れた(まみれた)。

 

 

 -ナイスシュート。

 

 不意に、弾むような声音が暗い公園を覆った。

 

 

 「・・・誰だ?」


 ブランコの何もない空間をーーいた。

 突然現れた人間・・・まるで空間がよじれたみたいに現れたそれは無音でブランコから着地した。

 

 「良く分かったな、気配は無かった筈だが?」


 少年、口調は厳しいがどこか子供らしい。

 街灯に近づくにつれその影は姿を露わにしてくる。

 

 「お前・・・何者だ?」


 問う。

 

 「私は、うーん・・・言うならば"正義の兵士"かな」


 「正義の兵士?」

 

 「あぁ、悪い奴らをやっつける正義の、ね」

 

 「へえ・・・こんな夜に紛れて、勤務外だから遊んでるのか?」


 「あはは、でもまさかこんな時間に人が来るなんて。

 見るからに一般人だよね君は」


 うーんと唸りながら。


 「正直私の注意力の低さが落ち度なんだけど、ね。

 ・・・悪いけど、君には消えてもらうしかないんだ」


 「・・・え?」


 消えてもらう。

 突然何を言い出すんだろうこの子は。

 厨二病ってやつだろうか。


 「消えてもらうって。

 物騒なこと言うなよな」


 「・・・・・・・・・・いやいや、本気だよ私は?

 私はね、この世界では存在しない(・・・・・)人間になっているんだ」


 「存在しない?は?」


 マジで何なんだ。

 頭おかしいんじゃないか?

 

 「・・・理解しなくてもいいよ。

 君には本当に悪いと思っているけど、君は私という存在を瞳に脳に記憶してしまった。

 だから消えてもらう」


 子供の顔がはっきりと浮かんだ。

 白髪で藍色の瞳、顔の整った綺麗なーーーーーーーーーーーー。


 

 「さよなら」


 何かが・・・刺さった。  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  


 

 

 

 

 

 

 

 


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