2 領空侵犯
次回までプロローグです
要請が下って5分。
F-44の発進と高峰圭のがその情報を受け取ったのはほぼ同時だった。
ブリーフィングで同室していた数人も知ることになったが、圭のみが支援するという名目で退出、その他は他役者に変更で再開となった。
新人は少しばかり自分も一緒にと同行を頼み込んできたが、良くあることだと置いていくように去った。
「ここでも普通に多いんだなこういうの・・・ただ、国籍不明ってのは妙だな」
ぶつぶつと呟きながらまた自転車に乗りうろ覚えの不安を感じながら司令部へ急ぐ。
同刻、AM8:38 太平洋領空内。
F-44パイロット込田と並空する西紀は今にも領空へとその機体を入れ込ませようとしている目標を発見した。
通告を行う所なのだが、どこをどう見ても顔見知りではないだろう。
更に堂々と侵犯してくる迷いない突撃。
そして、最近になっての侵犯の増加。
そこで通信が入った。
「目標機が領空に侵入したことを確認した。領空侵犯として正式に捉え、即警告を開始しろ」
「了解、警告を開始する」
≪Warning、Warning、You are approaching Japanese airspace territory. Follow my guidance≫
警告を促す。
数秒の空白。
通信の応答はなく、操縦士からの反応も受け取れなかった。
「目標機との通信は取れたか?」
「取れていない、無視しなおも領空内を進んでいる」
「再び勧告を送り誘導しろ」
「了解」
込田は2度目の勧告に声を上げた。
AM8:47 第5航空団司令部本部
全力で飛ばし、1.5kmもある距離を本部室入室まで僅か9分。
本部室ドアを数回ノックし、入室。
「失礼します」
「ん?おお君か高峰」
出迎えたのは第5航空隊圭が在籍する13班の班長だ。
「聞いているようだが今回の侵犯、国籍不明の未確認機とのことだ」
「もう領空まで侵入しているのですか?」
「ああ、今さっき管制から情報が入った」
「ここに向かう途中にリンクで確認したんですが・・・これまでとは様子が異なってますよね?」
「うむ・・・妙に堂々としているな」
「はい、ここ最近のスクランブルを調べたことがあるのでよくわかります」
隅に待機していた隊員がお茶を出してきた。
圭はそれに手で礼をし、一口含む。
「だが私は考え過ぎだと思っている」
班長は圭がコップを置いたのを見て言う。
「ここ最近の侵犯の激多で我々は気を張り過ぎている部分がある」
「本基地のみでも半年で3000、ですからね」
「異例であり異常だ。少なからず我が国に敵意を向けているのは確かだろう」
「フェルロンド帝国ですか」
班長は席を立ち、腕を後ろに組んだ。
そして、少々の間を置きゆっくりととある言葉を紡いだ。
「・・・ところで、君は”絶対領域の空”に聞き覚えはあるか?」
「・・・?・・・いえ、知りません」
「・・・そうか」
圭に背中を向け、窓の奥、外の風景を眺めた。
どのような心境なのか、表情なのか窺い知れない。
「それで、その・・・"ぜったいりょういきのそら”とは一体?」
班長はこちらに振り返り悩む様な素振りを見せて。
「そう、だな。お前には伝えておかなくてはならないな」
そう言って、班長が口を開こうとした時。
ー轟烈な爆発音が基地を揺らした。
それが地面を伝い圭達の足元に届くまでそうは掛からなかった。
「なっっっ!!」
地震ような揺れを一瞬感じ、足をふら付かせる。
テーブルに置いてあるお茶が零れ落ち、次の瞬間には爆炎と煙が空へと上がった。
「何が起きたっ!?」
班長は声を荒げ早々に状況を確認しに部屋を出て行った。
「班長っ!待っ!!」
続いて圭も後を追って駆け出した。
館内には二人同様、騒ぎに便乗した隊員達が現地に向かっていた。
駐輪場は混雑していてとても乗車できるようではなかった。
「班長・・・早いな、あの人歳幾つだよ」
ずっと前方では自転車に負けじと劣らなく走る班長が見えた。
歳の差ではなく運動不足が生み出したのだろう。
「これならもっと前から運動しとけばよかったよ」
既に息切れてしまった圭は嘆息しまた歩を進めた。




