短編1 〜紙切れ〜
初めまして、後です。私の書いた小説(笑)を読んで笑ってくれたら嬉しいです。
入学式が終わって体育館にいた生徒たちがぞろぞろと自分の教室に戻り始めた。当然俺も教室を目指して歩く。自分の教室に着き自分の席に座ろうと椅子を引いたとき、俺の足元に一枚の紙が落ちていた。普段の俺なら足元に落ちている紙切れなんか気にかけたりはしないのだが、今日は違った。その紙には4文字のひらがなが、正方形の線を囲むように書かれていた。
手に取って見ると書かれているひらがなは、上の文字から時計回りの順に、な、ち、め、ひ、と書かれている。おそらくこの四角い線の中にひらがな一文字を入れて言葉を作るクイズだろう。席に座りながら頭をフル回転させ考えていると、前の方から小さな声が聞こえてきた。前を見ると三つ編みメガネのTHE 委員長な見た目の女性が立っていた。
「あのーその紙切れは私が落としたものなんです。」
「そうだったのか。俺の足元に落ちていたから拾ったんだ。ところでこれって何なんだ?」
「多分クイズだと思います。私も今朝この教室で拾ったものなので、詳しくはわかりませんが...。」
「えっ、これ、落ちてたの?」
「はい。教室の扉の近くに落ちてました。不思議に思ったので考えてみたのですが、わからなくて。多分入学式にいくときにあなたの席の近くに落としたのかもしれないです。」
「そうか、でも一体誰が落としたんだ?」
「誰なんでしょう?私もわからないです。」
二人で考えていると、周りで喋ってたやつらにも声が聞こえていたのか何人かが俺の席に集まってきた。そいつらにもこの紙切れのことを聞いてみた。だがそれでも、この紙切れの持ち主はいなかった。すると、その中の一人が他のやつらにも聞いてみようと言い出し、教壇に上がり「この紙切れを知ってる奴いるかー?お前知ってる?」とクラスの一人一人に聴き始めた。結局、この紙切れの持ち主はいなかった。でも、四角い線の中に入る文字はクラス中の頭脳を集結させたところ、全員が納得のいく答えを1つ出すことができた。
答えを出したのとほぼ同時に、おそらくこのクラスの担任であろう男が教室に入ってきた。「お前らー、席つけー。よし、着いたな。俺の名前は 〇〇 △△だ。1年間このクラスを受け持つことになった。よろしくな。」
???
クラスの全員が狐につままれた顔をした。もちろん俺もだ。それでも先生は話し続ける。
「そこの三つ編みメガネっ娘。よくあの紙切れを捨てなかった。偉いぞ!!特別にお前を委員長にしてやる。」
「やめてください!!!あと、三つ編み眼鏡っ娘って言わないでください!!!!!!」
(気にしてるのかよ...。)クラス全員がそう思っただろう。もちろん俺もそう思った。っていうかなんで先生は紙切れのことを知ってるんだ?まさか...!?
「なんで先生があの紙切れのことを知っているんですか?」
「その質問は野暮ってもんだだろ、委員長?まぁいいか、俺がその紙切れをこの教室に落としたからだ。」
先生はニヒルな笑みを浮かべている。
「委員長にはなりません!でも、先生はなぜ、この紙切れをこの教室に落としたんですか?」
彼女は皆が言いたいことを代表するかのように聞いた。
「2つだ。その意味は2つある。1つはこのクラスの空気をよくすることだ。俺は何年も教師をやってきたんだが、大抵は新一年生の入学式後の一発目のホームルームはお通夜みたいな空気でやるんだよ。その空気が俺はダイッッッッッッッッッッッッキライなんだよ。吐き気がする。だからこいつを使ったんだ。うまくいけば今日のお前らみたいな感じでお通夜空気がなくなるからな。まあ、大抵は無視されたり、捨てられたりするんだけどな。今回はうまくいってよかった、よかった。」
「なるほど、それなら2つ目の意味はこの四角い線の中に入る文字を当ててみろということですよね、先生。」
前の方の席に座っている生徒が立ち上がり、そう言い放つ。ノリが良すぎやしませんか?
「そのとおりだ丸坊主。もちろんお前らはわかったんだろ?何の文字が入るか当ててみろ。」
先生が俺たちを煽る。クラス中が俺を見る。お前があの紙切れを拾ったんだから、お前が答えろと言いたい顔だ。このクラスはノリがいいのかな?でもね最初に拾ったのは三つ編み眼鏡っ娘さんですよ?彼女の方を見るとGOサインを出している。おいおい、そんなキャラじゃないだろあんたは。先生にでも感化されたのか?早すぎるだろ!クソッ、後であいつを委員長候補として推薦してやる。決定事項だからな、覚悟してろよ。俺は椅子を引き立ち上がる。
今の俺は、さしずめ謎解きを始める名探偵というところだろう。しょうがない、ここまできたんだ。腹をくくろう。
「端的に言います。答えは に です。あれは50音表の一部を切り取ったものですよね。言われてみるとすぐにわかりますが、これを思いつくのは大変でした。どうです先生?」
クラス中のみんながドヤ顔で先生の方に視線を集める。
「うんうん、難しいことをよく思いついた。でも違うんだなー、これが。」
クラス中のドヤ顔を見ながら先生がゲラゲラ笑っている。
「いやーワロスワロス。お前ら、ドヤ顔でこっち見んなよ。面白すぎるだろ。」
先生、涙、出てますよ。
「正解はな...ぐ、だよ。」
みんなの顔が・□・こんなになっている。もちろん俺もだ。先生は続ける
「さっき俺の名前は〇〇 △△って言ったろ。あれは違うんだよ。あの紙切れはな、それに書いてある文字と答えを合わせて俺の名前を当ててみろっていうクイズのつもりだったんだ。でもお前らは頭が良すぎたのか、そんな答えを出すとはな。いやー、びっくり、びっくり。まぁ、このクイズもかなり難しいけどな。」
立っていた俺、丸坊主、未来の委員長は静かに席についた。みんなの顔が真っ赤になっていくのは見なくてもわかる。当然、俺も真っ赤だ。
「いやー、こんなに面白くなるとは思わなかった。よし、この流れで自己紹介いっとくか。まずは1番の、」
キーン、コーン、カーン、コーン。ホームルームの終了のチャイムが教室に鳴り響く。
「え!?終わりかよ。しゃーない、今日はこれで終わりな。明日から授業始まるし教科書ちゃんと持ってこいよ。解散。」
先生が教室を出た後、俺たちはみんなで話し合った。あの先生に一泡吹かせるというクラス全員の総意の下に。そして先生は知らない、明日彼の頭の上に黒板消しではなくキングオブ害虫であるG様が降ってくることを。
読んでいただきありがとうございます。次も書くのでよかったら読んでみてください。