水汲みと実戦
時は過ぎ、カシリの歳が7歳になると少しは農園の手伝いをするようにもなってきた。
「水汲みはいい筋トレになるな。」
畑を耕したり、水汲みをしたりするのはカシリにとって足腰を鍛えるにはうってつけだった。
「ほんっとカシリってば水汲みを楽しそうにやるね。」
ミーナも11歳になって、獣人という事もあり成長が著しい。汗で服が肌に張り付く姿に色気がでてきた。
前世の記憶があるぶんカシリにとっては目のやり場に困ってしまう。
「こうやって体を鍛えると技にキレが生まれるんだよ。」
カシリは目を逸らしながら答えた。
「そんなことより、ついでに水浴びして汗流しちゃお。」
そんなことを言いながらミーナは急に服を脱ぎ出してしまった。
「もー。なんで急に脱ぎだすんだよ。」
「いーじゃない。今はカシリしかいないんだし。」
「兄さんが来たら襲われるよ?」
「最近のマルコさんは、私を見る目が怖いよ。」
「まぁ、そういう歳だし。一番身近なのはミーナだからね。」
「だからカシリがちゃんと守ってね♡」
「はいはい。」
「それにカシリになら・・・・・」
「なんか言った?」
「なんでもないよー。」
そんな会話をしている最中、もちろん覗きたいが我慢して前を向いていると茂みが少し揺れた気がした。
「何だ?」
そのまま注意深く見ていると一匹の狼が威嚇しながらでてきた。
「グルゥゥゥゥゥ。」
今までの成果を試すのにはちょうどいいな。普段ならミーナが倒しちゃうけど、今なら見てないし。
「やるか。」
カシリは構えをとり気を高めた。
それをスキだと思ったのか、狼は真っ直ぐに走ってきた。
それを最小限の横移動で避け、流れるような体重移動で腹におもいっきり気を込めた拳をきめた。
「はっ!」
いい感じに決まったから狼は吹っ飛ぶかと思ったがそうはならなかった。
「うわ!?」
つい声をあげてしまった。なぜなら狼の腹は抉れてなくなり大量の返り血を浴びてしまったから。
「なにこれ⁈」
ミーナが声を聞いて駆けつけてきた。
「どうしたのこれ?怪我はない?」
ミーナは俺の体を触って心配をしてくるが、俺はそれどころではない。
ミーナは裸でペタペタ触ってくるので目の前に発展途上のお胸様が踊っている。
「怪我は無さそうね。もー血だらけじゃない、一緒に体を洗うわよ。」
「大丈夫だよ。自分でやれる。」
鼻を押さえながら理性で断る。
「私も途中なんだから、ついでに洗ってあげるわよ。」
と無理矢理連れられて強引に洗われてしまった。
裸で密着しながら洗われるのは気持ち良かったです。ありがとうございます。
「じゃあスッキリしたし、帰ろう。」
「ちょっと待って、狼の魔石とってくる。」
この世界は便利である。モンスターを倒すと魔石と素材を落とすのだ。解体をしなくていいのは楽だし、死体が残らないので違うモンスターが寄ってくることもない。しかし返り血は消えない。多分だけど、モンスターの元を離れたものは認識されないからだろう。
「魔石と、今回は肉か。」
これで今日は肉が食べられるな。
「よし行くか。」
そして水と肉を運びながら家に帰ってくるともう昼になっていた。
「今日は遅かったわね。」
食事の準備をしている母さんに声をかけられた。
「ちょっと狼を倒した後に返り血を洗い流してたから、でもそのおかげでお肉がとれたよ。」
「もしかしてカシリが倒したの?」
「そうだよ。」
「毎日のように鍛えてたけど、もう1人で倒せるようになったのね。」
「狼なんて楽勝だよ。」
「1人で出来るようになったからといって油断して怪我しないようにね。」
とそこにミーナがやって来た。
「そーよ。返り血を浴びてるようじゃまだまだなんだから。」
「あれは加減を間違えただけだ。」
「はいはい。そのへんにして、ご飯だから父さんたちを呼んで来てくれる?」
「はい。カシリ行こ。」
「わかったよ。」
そうして俺の初実戦は手ごたえを感じつつ、課題が多く残る結果になった。