努力と結果
俺はトボトボと小部屋を出た。
「どうだった?」
とミーナは声をかけてきた。
「スキルは言えないけど、魔法の才能は無かったよ。」
「えっ」
「まぁスキルがあるからショックは少ないけど、やっぱり魔法は使いたかったな。」
「そこまで落ち込まないってことは、良さそうなスキルだったんだね。」
「まぁ後は自分の努力次第かな。」
精霊眼で精霊と仲良くなれば、魔法っぽいことができるんだろうし。
「とりあえず鑑定は終わったことだしそろそろ帰ろうか。」
「そうだね。今日はカシリの好物を作って貰ってぱーっといこう。」
「ミーナが作ってくれれば嬉しいけど、料理が下手くそだからね。」
「それは言わないでよー。」
「ははは。ではクロード教、シエルさん今日はありがとうございました。」
「カシリ君。結果はどうあれ自分に自信をもって前に進んで下さいね。」
「いつでも相談に来て下さいね。ここはそういう場所ですから。ただ甘えるためだけに来ても構わないんですよ。」
「本当ですか?では次きた時は膝まく イタタタタタ 何すんだよ。」
「はいはい。バカ言ってないでさっさと帰るわよ。」
「うふふ。それじゃあ元気でね。」
「はい。さようなら。」
そして手を振っている振動で揺れているお胸様。絶対にまたきます。
「カシリー。早く行くよー。」
「今行くよー。」
軽くお辞儀をしてミーナの元にかけだした。
その夜、食事の席では俺の慰め会のようになってしまった。
「そうか。カシリは魔法の才能は無かったか。」
「大丈夫よ。あなたは頭がいいのだから何だってできるわ。」
「ですよね。学者とか商人とか何でもできそう。」
「そう落ち込むな。農園を継ぐのは俺だからな魔法が無くても大丈夫だろ。」
そう最後に何気なく威張ったのが兄のマルコである。食事を取れるようになってから、会うことは会ったが名前がわかったのは最近だ。弟である自分に後継者うんぬんを延々と言うのでいつも聞き流していたため名前を覚えるのが遅くなった。
「大丈夫ですよマルコ兄さん。僕は世界を旅するのが夢ですから。」
「魔法が使えないのに旅なんかしたら、すぐにモンスターに喰われちまうぞ。」
そうこの世界は普通にモンスターがいる。なのでそれなりに強くなければならない。
「これから鍛えて強くなればいいんです。」
「まぁ。強くなれなくても、農園でいつでも使ってやるよ。」
「カシリ。家は農園だ。戦わなくても暮らしていけるんだから無理だけはするなよ。」
「わかりました。父さん。」
まぁせっかくの異世界だし、世界を見て回るのは絶対だけどね。
次の日の朝。
俺は日課であるランニングを終えて休んでいると、ふと前世の武術を思い出していた。
「久しぶりに型をやってみるか。」
と型に入る前に集中していると体の中に違和感を覚えた。
「ん?何だこれ。どんどん体に力がみなぎってくる感じがする。」
そんな違和感に戸惑っていると、空気が抜けるように脱力していった。
「気を高めてから型に入るつもりだったけど、この世界だと気も一種の魔法なのかな。」
この時カシリは、気を魔法の一種で属性のない魔法と勘違いをしているが、魔力と気力には大きな違いがあり、カシリの才能は気力が大半を占めており魔法の才能が無かったのだ。だがカシリがこれに気づくのはまだまだ先の事である。
「気の力がちゃんと使えるって事は、今までやってきた武術をパワーアップして使えるし、魔法みたいだからいろいろアレンジして凄い事が出来るかも。」
今まで習ってきた武術にも名前はあるけど、魔法を織り交ぜるからとりあえず我流にしておこう。
「やっぱ何となく我流ってかっこいいな。」
とりあえず今日は気を上手に練られるようにならねば。