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ブラジャー買いに行かされる話

作者: 水澤しょう

私なら出がけに絶対殴る。

「ブラジャー買ってきてください」

「だが断る」



「は? え? なに? いるの? ブラジャー? なにお前死ぬの?」

「いるんだよ。ブラジャー。そして別に俺死なない」

「そうかそうか……身も心もちゃんと男だと思ってたんだけどな、お前」

「変な誤解するな。姉ちゃんのだよ」

「なんであたしが香苗さんのブラジャー買ってこなきゃいけねーの」

「……話すと長くなるんだけどな」

「おう」

「おととい家族の洗濯物干してたんだけど」

「偉い」

「姉ちゃんの新品のブラジャー干そうとしたら」

「よく干せるな」

「一陣の爽やかな風が吹き抜けてな」

「……おう」

「あとはお察しください」

「確かにここ十一階だしなー」

「というわけで替わりのブラジャー買ってきてください」

「だが断る」

「なんで!? 幼なじみが今まさに死の鉄槌の真下にいるんだぜ!?」

「正直に話して謝ればいいだろ! お前に死の鉄槌とやらが下されようともあたしの知ったことじゃない!」

「頼む! お釣りいらねーから! おつかいのつもりで! な? な?」

「それに! 香苗さんのブラジャーなんだから、その、なんだ……チュチュアンナとかだろ。そんな可愛い店に入る勇気ないね。死ぬね」

「俺のほうが死ぬね!」

「なら腹括って死ね!」

「俺の代わりに死んでください!」

「……殴っていいかなこいつ」

「お前だけが頼りなんだよ……野郎には頼めないし、女子に頼んだらセクハラになるだろうし」

「あたしはお前の中でどういう部類の人間なんだ」

「とりあえず霊長類」

「やっぱ一発殴っ」

「ごめんて」

「本気度の低さが窺えるぞお前……」

「ほんとに、頼む。一生のお願い」

「一生のお願いが姉ちゃんのブラジャー買ってきてもらうことでいいのか」

「やっぱ今月のお願いで」

「終いにゃ帰るぞこら」

「すみませんごめんなさいお願いします」

「……お前な、香苗さんのカップ数わかってんのか? Dの70だぞ? そんなブラジャーをこんな貧乳が買いに行ったらレジで店員さんに『お、お客様wwwサイズをwwwお間違えではwwwございませんかwwwwwwフォカヌポゥwww』とか言われるに決まってんだろ! 知らねーけど!」

「なんでお前が姉ちゃんの胸の大きさ知ってんの」

「……男子禁制の会があるんだよ、お前が知らないだけで。……とにかく! そんなこと言われたらあたしは一生スポブラで生きていくしかなくなるから無理だ!」

「…………こうなったら仕方ない」

「なにを――まさかお前……!」

「お前が小さい頃うちの襖を蹴破ったこと、お前の母ちゃんにチクったろ」

「やーめーろー! お前んちの御厚意でうちの母さんには黙っててもらってんだよこのやろーめがあああ!」

「お前の辞書に『時効』の二文字ってねーのな……十年経ってもこれが効くんだもんな……」

「…………わかった。ブラジャーだな。チュチュアンナだな。行けばいいんだろ行けば!」

「お前のそういう素直なところ大好き。ってなわけでこれ例のブラジャーの写真な」

「うわ派手……なんで香苗さんのブラジャーの写真持ってんの?」

「いろいろと利用価値が発生すると思ったからな。脅しとか脅しとか脅しとか」

「香苗さんがそんな脅しに屈するとは思えないけどとりあえず彼女には下着を自分で洗うことを強く勧める」

「というわけでこれが代金だ。しくじるなよ? 幼なじみとして信用してるからな」


 二十分後


「ただいまー」

「ねねね姉ちゃん!? 今日サークルだったんじゃねーの!?」

「仲いい子も好きな先輩もいなかったからサボった。誰かいたの?」

「いいやー……?」

「ふーん、あっそ」

「……姉ちゃん、そのチュチュアンナの袋は?」

「あーこれ? こないだ新しいブラ買ったんだけど、サイズ間違えて小さいの買ってたことに一日着てから気付いて。デザインは気に入ってるから同じところで買ってきたの」

「……」

「なに? 顔真っ青」

「……知り合いと、すれ違ったりしなかった?」

「別に見なかったけど。それよりその問題のブラ知らない? あんたおととい干してたよね?」

「あ、えーっとですね……」


「ただいまー! 香苗さんの飛んでったブラジャーの替わり買ってきた! これで襖の件なしな!」


「……」

「……」

「今のって葵ちゃんの声よね?」

「……はい」

「飛んでったって言ったわよね?」

「……」

「……仁」

「はい」

「お前もわたしのブラみたいにぶっ飛ばしてやろうか」



〈おわり〉




復帰作がこんなにくだらなくてよかったのか……。

お読みいただきありがとうございます! さあこれからも書くぞー!

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