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魔女狩り少年と光の魔女  作者: 揚げパン
第5章 陰謀
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第94話 悪魔の微笑み その1


 鬼怒は青塚に連れられ、実験室へと通された。室内には様々な器具が揃えられており、デスクにはパソコンも置かれていた。1人で使うには広すぎるくらいだ。


「高度数値解析も難なくこなせるスーパーコンピュータだってある。以前仕事をしていた時と変わらない環境だ」


 青塚がそう告げると、鬼怒は室内を見回したり、パソコンをまじまじと見たりした。


「これほどのものをおまえ1人で揃えられたとは考えにくい。組織を離脱したというのは嘘か」


 鬼怒が顔を上げて青塚の方に目を向ける。鬼怒の指摘に青塚はフッとにやけて見せた。


「それは渡良瀬から聞いたのか。あいつらは今、俺の企みが魔女狩りと関係ないと思っている。それに俺のところには如月静歌もいるから、あいつらの目は魔女狩りよりも俺に向いているはずだ。…そうなれば、ボスも安心できるだろ?」


 やはり、青塚は組織を離脱していないようだ。如月静歌に殺害されたと組織に通達されているというのも嘘だったのだ。青塚は今でも生きており、組織の幹部なのだ。


「つまり、おまえの企みは魔女狩りの企みということだな」


「そういうことになるな。ま、博士はおとなしく俺の言う通りに研究すればいい。深い詮索はした方が良いぜ。俺はボスみたく残酷じゃないから、詮索しても手にかけたりしないが、組織の恐ろしさはよく知っているだろ博士は」


 青塚は軽い口調で忠告するが、鬼怒は目線を下げて冷や汗を垂らす。苦い記憶が脳裏を過ぎっていく。そんな鬼怒を見て、青塚は再びにやけると、懐からチャック付きのポリ袋を取り出した。中には灰色をした粉が入っている。青塚はそれを鬼怒の前に掲げた。


「これがキーアイテムだ。大事にしてくれよ」


 そう言って、ポリ袋を鬼怒に手渡す。鬼怒は受け取ると、中に入っている粉をジッと観察する。触った感じは粉というより砂のようだ。粒の大きさも不均一で、何かを砕いたもののように思える。


「いまいち重要さがわからない」


「そうだろうな。博士は一般人だからそう思っても仕方がない。だが、その粒子はただの粒子じゃない。魔力を帯びている」


 青塚の言葉に鬼怒は驚愕する。手に持っている砂のようなものには魔力があるというのだ。魔力というのは魔女だけが持つ特別な力だと思っていた。それをこの無機物が持っているのだ。


「それを使えば、ある2つの対なるものができると組織は睨んでいる。1つは魔力を供給するもの…。そして、もう1つは魔力を消失させるもの…だ」

「…!!」


 瞬間、鬼怒は目を見開き、緊迫した表情になった。青塚の企み…いや、組織の企みがわかったのだ。


「まさか……これで、魔女を絶滅させるつもりか…!」


 この粒子を使えば魔力を消失させる物質ができあがる。それを使ってこの街の魔女を根絶やしにするつもりではないかと思ったのだ。

 魔女は魔力無しでは生きていけない。だから、魔力が消えてしまえば、魔女は何もせずとも力尽きてしまうのだ。


「半分正解で半分違う。俺達は単に魔女を滅ぼそうとは思っていない。なに…ちょっとしたビジネスだ。その粒子は魔力を供給する物質にもなるって言っただろ?つまり、魔力を消失させる物質に対する薬の役割を持っている。その薬を魔女に売りつけるんだよ。薬を飲まなきゃ魔力が消失して死ぬって脅してな」


 悪魔のような奴らだ―――鬼怒は企みを知ってゾッと悪寒が走った。魔力という特別な力を悪用して、魔女たちを金稼ぎの媒体にしようとしているのだ。


「きさまらは人間じゃない…!人間の皮を被った悪魔だ…!」


 鬼怒は嫌悪感を露にして青塚を睨む。…が、青塚はへらへらと笑っていた。


「それを言うならあんたもだぜ?あんたは今から魔女たちを殺す物質をつくるんだからな」

「…!!」


 鬼怒は言い返すことができなかった。青塚はにやけながらゆっくりと顔を鬼怒に近付けていく。


「あんたはもう逃げられない。逃げたら渡良瀬亮司を捕まえて、あんたの目の前で惨殺してやるよ」


「あぁ…!!」


 鬼怒は膨大な恐怖に押し潰されそうになる。頭は真っ白になり、過呼吸で立っていられなくなり、フラフラになってそのまま床に倒れ込んでしまった。


「自殺しようとしても無駄だぜ。あんたはこれから24時間監視され続ける。下手なマネはよせよ」


 青塚はそれだけ忠告して、部屋を出ていった。


「はぁ…はぁ…はぁ…」


 鬼怒は力無く床に伏せることしかできなかった…。


 青塚が通路を歩いていると、対面から静歌がやって来た。


「ここに1人近づいてきてるわ。例の能力者ね」


 静歌は淡白な口調で状況を告げる。例の能力者というのは元康のことだ。蝶の監視網に引っかかったようだ。


「わかった。もう既に対策は打ってあるから、そいつが諦めて帰ったら教えてくれ」


 青塚はそう告げると、手を軽く上げて去っていった。静歌は少しの間、青塚の後ろ姿を見つめると、顔を前に戻して歩き出した。少し歩くと、誰かの呼吸音が聞こえてきた。呼吸は慌ただしく、平常ではないことが容易に分かった。静歌は呼吸音のする部屋へ足を運び、顔を覗かせる。

 そこには、1人の男性…鬼怒が床に倒れていた。静歌は青塚から既に鬼怒のことを聞かされていたが、実際に面と向かうのは初めてだった。


「あなたが鬼怒勇三ね」


 静歌は鬼怒の前に立って口を開く。鬼怒はハッとして、顔を上に向けた。そこには、志乃によく似る人物が立っていた。


「君が……志乃ちゃんの…お姉さん…か」


「えぇ。志乃は元気?」


 静歌は頬を緩めて志乃のことを尋ねる。


「あぁ…元気だ…。とても心優しくいい子だよ…。君は何故…青塚に協力している…?」


「さぁ…なんでかしら。わたしにもよくわからないわ」


 静歌はあまり真面目に答える気がないような感じでそう言った。すると、鬼怒が拳をギュッと強く握りしめた。


「あの男は…悪魔だ…!君は協力してはいけない…!早く逃げ……」


 次の瞬間、鬼怒の鼻に1匹の蝶が止まった。


「あまり変な事喋らない方がいいわ。わたしだってあなたを監視してるのよ」


 静歌はそう冷たく告げると、鬼怒を見捨てるように部屋を後にした。鬼怒の鼻に止まっていた蝶はヒラヒラと飛び上がり、鬼怒を監視するように部屋の隅へと移動した。




 元康はアジトのすぐそばまで来ていた。明日莉の記憶によれば、今いる場所のすぐ近くに入口がある。


「…ここのはずだ」


 元康は足を止めて目を向けた。――が、そこにはただの更地が広がっていた。アジトらしき建物は見当たらない。


「…おかしい。烏谷明日莉の記憶通りに来たはずだが…。すでに場所を変えているのか?」


 元康は考え込む。明日莉の記憶によれば、彼女は昨日ここに来ている。そして、彼女は3階建ての建物内の階段を下りて地下室へと向かっている。そこに静歌に協力している能力者…青塚がいる。静歌も一緒にいるはずだ。―――元康はそう確信していたが、ないのだ。当然、人の気配もない。危険を察知して場所を変えてしまったのかもしれない。


「すでに勘付かれていたか…。仕方ない、もう一度情報収集をしよう」


 ないものは仕方がない。しかし、まだ諦めたわけではない。如月静歌と烏谷明日莉に関連する人物からもっと情報を得るのだ。


「…やはり、如月静歌の妹、如月志乃から情報を得た方が良いようだ」


 元康はそう考え、踵を返して元来た道へ戻っていった。――その様子を、少し離れた場所から1匹の蝶が見ていた。元康の姿がなくなるのを確認すると、蝶はヒラヒラと飛んで、更地の方へ近づいて行った。

 すると、今まで更地だった場所に忽然と3階建てのビルが姿を見せたのだ。


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