表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔女狩り少年と光の魔女  作者: 揚げパン
第5章 陰謀
91/202

第90話 詮索者


 アイスを食べ終えた亮司たちは、そのまま家に帰ることにした。静歌が何を探していたのかわからないままだったが、深追いするにも手がかりが乏しいし、かえって危険だと判断する。鬼怒に言われたように、何らかのサインがあるまで待つことにした。

 志乃は歩きながら、真面目な面持ちで亮司に話しかけた。


「渡良瀬。…あのね、私昨日はお姉ちゃんを助けたいって言ったけど、正直、戦わずに説得できる自信無いんだ。もう何回も説得してるのに、一向に良くならないし…。だからもう、見切りをつけて、私もお姉ちゃんを倒すことに決めた」


「覚悟はあるのか?」


 志乃の決心に、亮司は一言だけ尋ねる。しかし、志乃は自信を持って答えることができず、言葉に詰まってしまった。


「俺や黒薙が戦おうとするのとはわけが違うからな。それに、おまえはもともと戦いを好まない性格だ。姉と1対1になった時、おまえは姉を倒すイメージを持てるか?」


「それは…」


 やはり口籠ってしまう。ただ漠然と戦う決心がついたと言っていたのかもしれない。いざ、本当に戦うことになったら、躊躇なく姉を攻撃できるのか…不安感が残った。


「無理することは無いぜ。戦いに参加しないってのも一つの手だ」


「それはできない!」


 志乃は初めて強い口調で声を発した。亮司はじっと志乃の顔を見る。志乃もじっと亮司を見ていた。


「私の知らないところで渡良瀬や美雨ちゃんが傷つくのはもっと嫌!足手まといだって思われても、私は2人と一緒に戦いたい」


「志乃…」


 志乃の強い眼差しに、美雨は彼女の決心の固さを感じる。それはどちらかと言えば、姉を倒すというよりも、仲間を護りたいという優しさからなのだろうと思った。


「俺は一度もおまえを足手まといだと思ったことは無いぜ。姉を前に決心が揺らいでも、俺がなんとかしてやるよ」


「渡良瀬……」


 志乃は頬を少し赤く染め、ボーっと亮司の顔を見る。亮司の言葉は芯があって温もりがあって…勇気が湧いてくるし、心の曇りを取り除いてくれた。

 志乃は表情を緩めると、にやりと企む笑みを浮かべた。


「でも、私が最初に仲間になりたいって言った時は、私のこと足手まといって言ったよね」


「…なんでそんなこと憶えてるんだよ。そん時の俺は半人前だったんだろ」


 まさかそんな前のこと憶えてると思っていなかったので、亮司は汗を垂らして何とかごまかす。


「あっ!ごまかさないでよー。今は一人前ってこと?」


 志乃のニヤケは止まらない。ここぞとばかりに亮司をからかって楽しむ。

 そんな2人のやり取りを見て、美雨は安心したように微笑む。どんなにつらい気持ちになっても、心が暗くなっても、この2人はお互いに励まし合って最後には明るく笑っているのだ。



 その後、3人は別れて各々家路についた。美雨が住宅街の中の通りを歩いていると、1人の青年とすれ違う。美雨は特に意識を向けなかったが、青年の方は少し歩くと足を止めて、美雨の方に顔を向けた。


「そこの君。君は魔女のようだね。それも蝶を操る魔術を使う」

「…!?」


 美雨は驚愕し、ガバッと勢いよく振り返った。今、確かにこの青年はどんな魔術かまで口にした。

 警戒する美雨に対し、青年は平然と話を続けた。


「君の操る蝶は黒を基調に黄色の線の模様がついている。それと同じ蝶を何匹か目にした。何を企んでいる?」


「あなた魔女狩りですか!?私に何の用!?」


 美雨は攻撃できる態勢に入る。この男は間違いなく能力者だ。どんな能力者かいまいちわからないが、相手が使う魔術を詳しく把握できるようだ。


「違う違う。おれは確かに能力者だが魔女狩りじゃない。君はおれを警戒しているようだけど、おれは君を攻撃したりはしない」


「魔女狩りは相手を油断させるためによく嘘をつきます」


 青年が否定しても、美雨は心を許さない。魔女狩りは卑劣な奴が多い。良い人間を装って油断させる作戦かも知れない。

 いまだ警戒する美雨に対し、青年は困ったようにため息をつく。


「やれやれ…、魔女狩りの弊害だな。まぁ無理もないか…。一つ君に訊きたいことがある。さっき、この近くで一人の魔女の魔力を奪ったか?」

「…!?してません!そんなこと!」


 美雨は即座に否定した。そんな卑劣なことをするはずがない。…どうやらこの男は犯人を捜しているようだ。

 すると、青年が美雨に近付いていく。美雨は得体の知れなさに体を強張らせた。


「本当かどうか確かめよう…」


 青年は美雨のそばに来ると、手を出して彼女の肩に触れた。


「!?触らないで!」


 美雨は慌てて後ろに下がる。対して、青年は納得したような顔になった。


「嘘はついてないな。人違いだったようだ。疑ってすまなかった」


 青年は軽く詫びを入れると、その場を離れようとした。


「待ってください」


 しかし、それを美雨が呼び止めた。青年は足を止めて無表情で顔を振り向ける。


「何か?」


「どうして私が怪しいと思ったんですか?」


「魔力を奪われた子は、君と同じ蝶によってマークされていた」


 青年の発言に美雨はハッとする。…恐らく静歌のしわざだ。静歌はまだ回復しきれていない。完全に回復するために蝶を飛ばして魔女を捜し、その魔女の魔力を奪ったのだ。

 これで話が繋がった。先程静歌が飛ばしていた蝶はそのためだったのだ。それにしても、この青年は本当に純粋な正義感から犯人を捜しているのだろうか。

 ――美雨がそう考えていると、青年は美雨の反応を見て疑念の目を向けた。


「…君は犯人を知っているのか?」


「いえ。知りません」


 例え青年が正義感を抱いているとしても、見ず知らずの人間に静歌のことを話すのはまずいだろう。話がややこしくなる可能性がある。しかし、青年の疑念は一層強くなった。


「…本当か?君が今まで出会った魔女の中に、コピーの魔術を使う者がいるな。名前は如月静歌…。この魔女のしわざじゃないかと思い、さっき反応を示したんじゃないか?」


 この青年の観察眼…ただ者ではない。いや、それよりも能力だ。一体どんな能力なのか。他人の記憶を読み取ることができるのだろうか。

 青年は黙り込んでいる美雨を見て、確信の表情を浮かべた。


「やはりそうか。如月静歌か…。この魔女が、能力者とつるんでいるわけだな。礼を言おう。これでだいぶ捜査が進んだ」


 青年はそう告げて美雨に背を向ける。


「あなたは何者なんですか?」


 美雨が緊迫した表情で尋ねる。対し、青年は淡白な表情で振り返った。


「ただの能力者だ。ただ、この街に感じる得体の知れない邪悪を取り除こうと思っているだけだ」


「名前を教えてください」


中禅寺ちゅうぜんじ元康もとやすだ。…君は言わなくていいぞ。もうわかっている。黒薙美雨。17歳。誕生日は7月3日。県立栄野高校に通う高校2年生。春に転校している。仲の良い友人は佐倉小蜜、高森由香……そして、如月静歌の妹、如月志乃だ」

「…!!」


 美雨は目を見開く。もう既に、志乃のことまで把握されている。もしかすると、元康はこれから志乃に接触し、彼女から静歌のことを訊き出そうとするのではないか…。


「プライベートの侵害ですよ。これ以上の詮索はやめてください」


「不届き者を放っておけと?」


 元康の目つきはひどく冷たく、目を合わせれば心の奥底を覗かれるような感覚に陥る。元康は悪い人間ではないようだが、それでも何か不安感があるのだ。


「そうではありません。…ただ、私の友人を傷つけるようなマネはやめてください」


「傷つく傷つかないは個人の勝手だ。おれは真実だけを突き止める。それだけのことだ」


 元康は冷たく言い放つと、その場から立ち去っていった。美雨は元康の後ろ姿をじっと見続けていると、肩に1匹の蝶を発現させ、元康の後を追うように飛ばした。


『志乃と渡良瀬に伝えないと…』


 美雨はそう思い、スマホを取り出して2人に連絡を取った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ