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魔女狩り少年と光の魔女  作者: 揚げパン
第4章 新しい風
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第84話 魔女の裏切り その3


 暁美は大広間のテーブルを拭いていた。すると、扉が開いて明日莉が顔を覗かせてきた。


「さーとーみ!」


 明日莉は愛想が良い感じで声をかけて部屋の中に入る。暁美は明日莉に気付き、手を止めて顔を向けた。


「明日莉さん!来てたんですか」

『うわー…、めんどくさい人来ちゃった…』


 暁美は驚いた表情を見せるが、内心は嫌そうな顔をしたかった。対して、明日莉は手を後ろで組んで、笑みを浮かべながら近づいていく。


「ちょっと訊きたいことがあるんだけど…いい?」


「私で良ければ…」


 何を尋ねるのだろうと思い、暁美は耳を傾ける。


「静歌の妹の志乃って子、新しく魔女同盟に入ったんだねー。他に入った子はいる?」


「あ、はい。美雨が戻ってきました」

「…!」


 暁美が素直に答えると、明日莉は少し動揺を見せる。しかし、怪しまれないようにすぐに平静に戻した。


「あー…美雨が戻ってきたんだー。意外。なんかいろいろあって脱退したって聞いたし…」


「月音が信頼できるから戻って来たみたいです」


 暁美はそう答えたが、彼女はこれを明日莉の前で言ってはいけないという認識がなかった。悪気は無いのだ。からかう気もない。

 言われた方は苛立ちを覚え、なんとか表情に出さない代わりに肩を震わせる。


「そ、そっかー…。月音はしっかりしてるからねー」


 微塵もそんなこと思ってないが、すべては穏便に済ませるために感情を犠牲にする。…しかし、それも長続きはしないので、苛立ちを紛らわすために次の話を振った。


「志乃と美雨はここに住み込むの?」


「いえ、住み込みはしないです。でも、今日はお泊まり会やるので…」

「なーるほど。ありがとう!」


 志乃と美雨が今日だけ泊まることを知ると、明日莉は一人納得したように頷き、暁美に軽く礼を言って部屋を出ていってしまった。一人残った暁美はキョトンとした表情で佇んでいた。



 月音は明日莉と出会った後、表情を曇らせてその場でうなだれていた。


「月音…、ちょっといい?」


 そこに、美雨が声をかけてきた。月音はハッとして顔を上げる。


「…美雨。そこにいたのか」


「明日莉がここに来るなんて珍しいわね。最近はよく来てるの?」


 美雨が魔女同盟に所属していた頃は、明日莉がこの館に来ることは珍しかった。美雨にとってはそういうイメージがまだあるので、今日たまたま目にしたのが少し気になったようだ。脱退してからブランクがあるので、最近は明日莉も変わって頻繁に顔を出しているのかもしれないが。


「…ううん。前回来たのは新しいリーダーを決めた日だし、その前はだいぶ来てない」


 月音の返答を聴き、美雨は顎に手を当てて考える素振りを見せる。月音はそんな美雨を不思議そうに見た。


「…何か気になる?」


「……いえ、考え過ぎかも」


 美雨は顎から手を放し、気を楽にして微笑みを向けた。



 明日莉は静歌が使っていた部屋に入り、絨毯じゅうたんの上に座り込んでくつろいでいた。部屋の広さは一人で使うには十分すぎるくらいで、幅広のベッドに大きなデスクもあって快適に過ごせそうだ。もちろん、静歌がいたころは入ることなどできなかった。現状、リーダーこそ月音だが、自分は最年長。誰も文句を言う奴はいない。


「…ったく、静歌ったらこんないい部屋に住んでたんだ。羨ましいねぇ~~。…ここはやっぱり、あたしが使うのがふさわしいでしょ」


 明日莉は部屋を眺めながら企みの笑みを浮かべる。…しかし、すぐに表情から笑みを消した。


『あの美雨が戻ってきたのは痛いな…。あの子の魔術は誰よりも厄介…。無いだろうけど、あたしを怪しんで蝶を監視に回されたら、あたしが魔女狩りの奴と繋がってることがバレちゃう…。それだけは何としても避けないと…!お金が稼げなくなっちゃう…!』


 明日莉が心配する一番の理由は結局お金の話だった…。



 志乃は花壇の水やりと手入れが終わり、もう一つの人格だった時に使っていた部屋に瑞葉と入った。


「…なんだか懐かしいなぁー」


 志乃は部屋を見回して過去の記憶を脳裏に巡らせる。――瑞葉との出会い、瑞葉のちょっとしたいじわる、亮司との戦いの後に生まれた迷いに葛藤した自分、そんな自分を心配してアドバイスをくれた瑞葉、…そして、人格の狭間を打ち破り、大切な人を護るために飛び出した自分―――

 この部屋にはいろいろなドラマがあった。志乃は瑞葉を見てニコッと笑みを浮かべる。瑞葉もつられるように微笑んだ。…今、こうして瑞葉と笑顔でいられるのも、あの時があったからなのだ。

 しかし、瑞葉は何か思うことがあったのか、笑みを無くして表情を曇らせる。


「…志乃。志乃はもう、あの時の人格にはならないよね?」


 瑞葉は何か願望のようなものを抱いて尋ねた。だが、志乃は首を横に振る。


「…わかんない。いつ、どういうきっかけで人格が変わるのか……自分でもわかんない。でもね、例え人格が変わっても、私は私。瑞葉ちゃんが大切な友達なのは変わらないよ」


「…志乃」


 瑞葉はじっと志乃の顔を見つめる。…すると、志乃は慌てて


「あっ…!瑞葉ちゃんだめだよ!瑞葉ちゃんには素敵な彼氏がいるじゃん!」


「なっ…!志乃ぉーー!!別に彼氏じゃないから!!」


 瑞葉は途端に顔を真っ赤にさせ、志乃に勢いよく食って掛かる。しかし、瑞葉の態度を見て志乃はおかしくて仕方がない。


「今度男の子と会って話したいなー」

「ぜっっったい会わせないから!」


 瑞葉はプイとそっぽを向いてしまう。しかし、何か企みが思い浮かんだのか、いじわるそうな笑みを浮かべて志乃を見た。


「見てなさいよー。からかい返してやるから」


「あっ!瑞葉ちゃんいじわるー」


 そして、二人はまたお互いにクスクスと笑い合った。



 その後、志乃は部屋のベッドに座って本を読んでいた。


 コンコン


 そこに、ノックの音が聞こえ、志乃は視線を本からドアの方へ移す。


「はい」


 志乃が声をかけると、ドアが開いて明日莉が中に入ってきた。


「志乃、ちょっと訊きたいことがあるんだけど、いい?」


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