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魔女狩り少年と光の魔女  作者: 揚げパン
第4章 新しい風
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第81話 魔女の決断


 志乃はベンチに座って缶コーヒーをゴクゴクと調子よく飲む。


「ぷはー!泣いた後のコーヒーはおいしーね!」


 志乃は缶から口を離すと、気持ち良さそうに笑顔を向ける。対して、隣に座っている亮司は無愛想な表情でくつろいでいた。


「泣いた後にコーヒー飲んだことねぇからわかんねぇよ」


 志乃の感想に亮司が淡白な口調で指摘する。すると、志乃はいじわるそうににやけて見せた。


「渡良瀬はどういう時に泣くの?私と勝負して負けたときとか?」


「あーー、そりゃ泣くだろうな。大泣きだ。如月に負けるなんて屈辱的だからな」


 亮司は困り顔になって、わざとらしく抑揚のある口調でそう言う。ベンチの前に立って聞いていた月音は、亮司の言い方に呆れ顔を浮かべた。


「ひどい言いようだな…」


「ひどいよねー。ちょっとか弱い女の子だったら、今の一言で泣いちゃうもん」


 志乃も乗っかるように口をだし、やれやれと肩をすくめる。しかし、亮司はそんなことを言われてもお構いなしだ。


「お、如月は泣いてねぇな。おまえはか弱くないってことだ」


「私も元々はか弱かったんだけど、デリカシーの無い渡良瀬といるうちに、いやがおうにもメンタルを鍛えられちゃったからねー」


 亮司が皮肉そうに指摘すると、志乃も対抗するように皮肉を込める。皮肉を言われて感情的になったら、もう後は亮司の思う壺である。皮肉を言われたら皮肉返しだ。これが何かにつけて皮肉を入れる亮司との話し方なのである。


「毒をもって毒を制すね」


「アハハ!美雨ちゃんそれいいー!」


 月音の隣に立つ美雨の一言に、志乃はおかしそうに膝を叩いて笑う。口数は少ないものの、なかなかクリティカルなことを言う美雨。3人のやり取りに、月音は一人呆気に取られていた。


「いつもこんな感じなのか…?」


「ええ」


 月音は美雨に尋ねる。美雨は困り笑いを浮かべて頷いた。


「緋崎も毒に侵される前に帰った方が良いぞ。…あ、あっちはあっちで別の毒がいるか」


 亮司は月音を見てそう告げるが、月音は最後の言葉の意味がわからず、首を傾げた。

 ――同時刻の魔女同盟の館にて。


「ハックション!!……誰か私の噂してるわね」


 瑞葉が盛大にくしゃみをした―――


 罵り合う亮司と志乃だが、月音はそんな二人を見てなんだか羨ましく思えた。そして、頬を緩めて柔らかい表情になる。


「私も…本当は、こういう気楽な感じの方が好きなのかもしれない」


「月音ちゃん…」


 志乃は月音の顔をじっと見る。そして、何か決心したような表情になった。


「私、月音ちゃんがリーダーなら、魔女同盟に入ってもいいかな」


「えっ!?」


 志乃の思い切った発言に、月音は驚いて目を丸くする。思ってもいなかったことだ。志乃が自ら魔女同盟に入ってもいいと言うなんて。


「いいでしょ?渡良瀬」


「あ?俺は保護者じゃねぇんだぞ。…まぁ、自分の本心でそう思ったなら、俺は別に良いと思うがな」


 いいかどうか尋ねる志乃に、亮司はツッコミを入れつつも、志乃の決断を悪いとは思っていない。自分に正直になって決めたことは、誰が何と言おうと自分にとって最善の決断なのだ。


「じゃあ入る!よろしくねー月音ちゃん!」


 志乃はベンチからピョンと飛び上がり、月音の前に立って笑顔を向ける。


「あ…!うん!」


 月音は戸惑いを見せていたが、志乃の柔らかな笑顔を見て、こちらも笑顔を返さずにはいられなかった。


「この際、私も戻っちゃおうかしら。いい?」


 美雨も顎に人差し指を当てて考える素振りを見せ、月音に尋ねてみる。


「もちろん!美雨が居てくれたら心強い!」


 月音は嬉しそうに受け入れた。そして、チラッと一人ベンチに座ったままの亮司を見る。


「渡良瀬も……入る?」


 試しに訊いてみるが、途端、亮司は顔をしかめた。


「あぁ?俺は魔女じゃねーんだぞ。入るか」


 当然亮司は突っぱねるが、志乃が何か思いついたのか、月音に尋ねる。


「外部顧問みたいな感じにするのはどう?参謀役で入れるとか」


「確かに…」


 志乃の提案に月音は納得したような表情になる。


「おい、納得すんなよ…」


 亮司は呆れ顔でツッコミを入れた。




 こうして、魔女同盟に入ることになった志乃と美雨は、早速月音と共に魔女同盟の館へと向かった。

 中に入って通路を歩いていると、向こうから瑞葉が歩いてくるのが見えた。


「あ!瑞葉ちゃーん!」


 志乃は瑞葉を見るや、一人駆けだして瑞葉の前に立った。一方、瑞葉は意外な来客にびっくりした表情を向けている。


「志乃!それに美雨まで…。どしたの?」


 何故ここに来たのかわからない瑞葉に、志乃は企みの笑みを浮かべる。


「フッフッフ…。なんで来たと思う?」


「何よ?なんか変なこと企んでないでしょうね…?」


 にやける志乃に瑞葉は警戒心を抱くが、志乃が笑顔になって告げた。


「私と美雨ちゃんね、今日から魔女同盟に入ることにしたんだー」

「えぇっ!?」


 瑞葉は驚いてのけ反る。瑞葉も月音同様、志乃と美雨が魔女同盟に戻ってくるなど思ってもいなかったのだ。

 2人とも、かつては魔女同盟に入っていたが、美雨は志乃の強制連行の件で脱退したし、志乃ももう一つの人格の時に入っていたに過ぎない。2人とも魔女同盟に対する印象は良くないと思っていた。


「な、なんで入ろうと思ったの!?」


 瑞葉は驚きつつも理由を尋ねてみる。…と、志乃は満面の笑みを浮かべた。


「それはね、月音ちゃんと瑞葉ちゃんがいるからだよ」


 志乃の言葉と笑顔に、瑞葉は思わず頬を赤らめてしまうのだった。


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