表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔女狩り少年と光の魔女  作者: 揚げパン
第4章 新しい風
79/202

第78話 遠く離れた心


 誰も邪魔する者はいなくなった。あとは月音からゆっくりと魔力を吸い取ればいいだけ。足を拘束されたままの月音は、静歌が一歩二歩と歩み寄る度に恐怖心を増大させていく。

 そして、静歌は手の届くところまで来た。


「月音。あなたは最も従順で優秀な部下だったわ。なのに、どうしてあんな薄汚れた能力者なんかに協力しているの?理解に苦しむわ…。でも、ここでわたしに協力してくれたら、今までのことはチャラにしてあげるわ」


 静歌は不敵な笑みを浮かべながらそう告げると、手をゆっくりと月音の頭に近付けていった。


 パシッ!


 その時、月音が静歌の手を払いのけたのだ。静歌は動きをピタリと止めて呆然とする。…今、目の前の魔女はありえないことをした。

 しかし、静歌は怒りを露にせず、ニコッとわざとらしい笑みを浮かべる。


「月音?どうしたの?」


「…嫌です」


 優しく話しかける静歌に対し、月音は顔に影を落とし、心の本音をボソッと告げた。


「ん?…よく聴こえなかったわ?なんて?」


 静歌はまだ優しい態度で問いかける。


「静歌様。私はもう…あなたの考えに共感できません。だから、あなたに協力はできません」


 月音は顔を上げ、真っ直ぐな目つきで静歌を見て告げた。恐怖に屈するよりも、自分に正直になりたいのだ。

 途端、静歌の顔から笑みが消える。――そして


 ガシッ!


 静歌が月音の後ろ髪を引っ張り上げた。静歌は青筋を浮かべ、殺気を込めた目つきで月音を睨み付ける。


「いっぱしの口を利くじゃない。リーダーになって調子乗ってるのかしら?お説教が必要ね」


 静歌はそう言うと、月音が髪を結ぶのに使っているリボンを取り外した。


「これもあなたらしくないわ。おしゃれに気を回す余裕があるなら、ちょっとはわたしのために働きなさいよ!」


 静歌はリボンを乱暴に投げ捨てた。そして、掌を上に向けて炎を発現させる。


「お説教よりもお仕置きの方がいいわね。紅い髪に赤い炎、良い色合いだと思わない?」


 静歌は不気味ににやけながら、メラメラと燃える炎を髪に近付けていく―――


 ジュ…!!


「あつっ!!」


 瞬間、静歌の足元が異常なまでに高温になったのだ。彼女は反射的にその場から飛び退くが、驚いた拍子に月音の足元を縛っていた光のロープを解除してしまった。

 解放された月音はバックステップし、静歌との距離を置いた。


「あつい…!あつい…!」


 静歌は悲痛な声を発し、足をふらつかせる。1秒と経たないうちに飛び退いたが、あまりの高温に靴底はどろどろに溶け、足には大きな火傷を負ってしまった。

 これは月音の魔術だ。月音は自分から至近距離にある任意の箇所に膨大な熱を送り込むことができるのだ。熱は炎と違って目に見えないため、相手に気付かれずに仕掛けることができる。


「なんて…!なんてことすんのよ!!このクズ女!!渡良瀬亮司ね…!あいつに吹き込まれたのね…!全部あいつのせいだわ!!あいつをぶっ殺して…!その次はあんたを殺すわ…!」


 静歌は青筋を浮かべ、血走った目を大きく開いて月音を睨み付ける。しかし、月音はそのもの凄い殺気に怖気おじけずに、凛とした目付きで静歌を見た。


「これ以上渡良瀬を傷つけたら……私が許しません」


 静かな口調だが、分厚い威圧が月音から放たれる。そして、彼女の周りの地面から炎が燃え上がった。地獄の業火のような炎は、圧倒的な熱量を静歌に浴びさせる。しかし、静歌はフンと鼻で笑って見せた。


「何強がってんのよ。それなら…あんたから殺すわ」


 静歌は明確な殺意を月音に向けて近づいていく――――その時


 カッ!!


 静歌の後方がまぶしく光った。瞬間―――


 ドオオォォォン!!


 先程までずっと静止していた光の球から、突如光線が放たれたのだ。光線は静歌に直撃し、凄まじい爆発音と共に彼女を吹っ飛ばした。


「がはっ…!」


 静歌は10メートルほど吹っ飛んで地面に倒れ込んだ。月音は周りの炎を消滅させ、倒れている静歌を呆然と見つめる。――すると、隣に亮司が姿を見せた。


「大丈夫か?」


「渡良瀬!おまえこそ大丈夫か!?」


 月音は心配そうに亮司を見るが、亮司は平気そうに口角を上げる。


「あんくらい平気に決まってんだろ。黒薙も気を失ってるが大丈夫だ。…あと、これ落ちてたぞ」


 亮司はそう言うと、ポケットからピンク色のリボンを取り出した。それを月音に手渡す。


「あ…ありがと…」


 月音は頬を赤らめ、ぎこちないお礼を言う。そして、火照る心を落ち着かせながら髪を結ぶ。


「緋崎、黒薙を頼む」


「あ…うん!」


 月音はコクリと頷き、後方で倒れている美雨のもとへ向かう。亮司は一人、静歌のところへ近づいて行った。

 静歌の前に立ち、彼女を見下ろす。静歌は気を失っていた。

 ――彼女を倒すことはできた。だが、それで本当に良かったのだろうか。目を覚ませば、また同じではないか。静歌の心は簡単には変えられない。志乃であれば、もしかしたら変えられるかもしれない。…いや、それにしたってハイリスクだ。

 亮司は静歌を見ながら複雑な心境を抱いていた―――が


 ドン!!


 突如、亮司の腹部が勢いよく蹴り飛ばされた。亮司は血を吐いて吹っ飛んだ。


「渡良瀬!?」


 突然の出来事に月音は驚愕する。しかも、月音の目には、亮司が勝手に吹っ飛んだように見えた。


「まさか…!」


 月音はハッとした。…青塚の能力だ。青塚は相手に認識させないようにする能力を持つ。この能力を使って亮司を蹴り飛ばしたのだ。

 それに気づき、亮司のもとへ向かうべく月音が立ち上がろうとした――その時


「動くなよ」


 背後から青塚の声が聞こえた。いつの間にか月音の背後に回り込んでいたのだ。

 月音は冷や汗を垂らし、緊迫感を露にする。…しかし、青塚はすぐ後ろにいる。やつの足元に熱を送り込めばダメージを与えられる――そう思った月音は魔術を発動しようとする。


 ピシ…!


 次の瞬間、月音の腕に切り傷が入り、血が噴き出した。


「うぐっ…!」


 鋭い痛みに月音は苦い顔を浮かべ、もう片方の手で傷の部分を押さえつける。


 カランッ!


 すると、月音の前に血の付いたナイフが突如として出現し、地面に落下した。


「ざまぁねぇなぁ~~。ガキ3人にやられるようじゃ、魔女狩りのボスなんて倒せるはずがねぇよ」


 その声と共に、青塚が月音たちの前に姿を現した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ