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魔女狩り少年と光の魔女  作者: 揚げパン
第4章 新しい風
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第76話 飢える魔女 その3


 亮司たちは無人だったアジトの中で身を隠していたが、ここが魔女狩りのアジトである以上、長居は危険だ。それに、幹部だった青塚もこの場所を怪しむはずだ。しかし、外に出たら出たで見つかるリスクが高まる。

 そこで、美雨が先手を打って蝶を飛ばしていた。蝶を別の場所に多く飛ばし、おとりにして静歌たちを誘導する。


「何匹かあの人の蝶が飛んでいるわね。でも、こっちの方には来てない」


 美雨が外の状況を伝える。それを聞いて、亮司は今のうちに逃げるべきだと考えるが、月音は違った。


「静歌様の魔力はまだ回復しきれていない。私は…静歌様を倒すチャンスだと思う」


 月音の発言に、亮司も美雨も一瞬動きが止まる。月音の口から思いもしなかった言葉が発せられた。


「…本気か?」


 亮司は疑いの目で月音を見る。しかし、彼女の目は決心したように強い眼差しをしていた。先程とは違う。それは亮司にも伝わってくる。


「本気だ。あの人はもう、魔女を助けようとか思っていない。ただ、自分の欲求を満たそうとしているだけだ。…私はそれが嫌だ。あの人を野放しにしていれば、みんなに危害が及んでしまう。…だから、あの人を今ここで倒すべきだ」


 月音は思いの丈を伝えきった。自分の心に問いかけ、返ってきた答えなのだ。しかし、静歌を瀕死の重傷に追い込むわけではない。これ以上彼女が身勝手な行動をしないように戒めるだけだ。

 月音は亮司に負けず劣らず冷静だ。感情を優先して判断を早まるような奴ではないと、亮司も彼女のことを理解していた。


「…黒薙はどうだ?」


 亮司は美雨に話を振る。ここは皆の考えを統一しておくべきだろう。


「正直、あの人と戦うのは気が引けるわ。…でも、それはあの人への恐怖心が理由。今ここで逃げたとしても、近いうちにあの人は志乃を狙うはず。最悪の事態になり兼ねないわ。それなら、魔力が弱い今、あの人を倒すのはもっともだと思うわ」


 美雨も恐怖心を押しのけ、冷静になって自分の考えを述べる。二人の魔女は戦う決心がついていた。


「わかった。それなら話が早いな。あのシスコン姉貴を黙らす方法を考えるぞ」


 亮司は窓の外を眺めながらそう告げた。




 静歌の飛ばした蝶が、美雨の蝶が多く飛んでいる場所を発見する。蝶たちは監視役で、この近くに身を潜めているのだろう。そして、静歌は怪しい廃墟ビルに目を付けた。


「…ここね。行くわよ、青塚」


 静歌は廃墟ビルに向かおうと、青塚を呼ぶ――が、青塚はその場に佇んだまま、足を動かそうとしない。


「俺の"手伝い"はもう済んだだろ?あとはあんた一人で何とかしてくれよ」


 急にやる気がなくなったかのように否む青塚。静歌は不服そうな表情を浮かべる。


「なによ?良くわからない奴ね。わたしに協力的だったりそうじゃなかったり」


 青塚は死にそうになっていた自分を助けてくれた。敵のはずなのにどうして助けてくれたのか、まだよくわからないが、とにかく助けてくれたことに変わりはない。先程も能力で自分をサポートしてくれた。協力的な姿勢をしてきたのに、一体何を考えているのか。

 静歌が青塚を見ながらそう思っていると、彼は面白そうににやけて見せた。


「勘違いしているようだが、俺があんたに協力しているんじゃなくて、あんたが俺に協力するんだぜ?」


 青塚がそう告げると、静歌も対抗するように不敵な笑みを浮かべた。


「あら…、そんなこと言ってていいのかしら?その気になれば、わたしはいつだってあなたを殺せるのよ?」


「自信を持つのは大いに結構だが、その下らねぇ自信で魔女狩りのボスを狙おうと思ってんならやめた方が良いぜ。あんたじゃ間違いなくボスは殺せねぇ。それどころか、会うことすらできないだろうよ」


 青塚は上から見下すように冷たい視線を浴びせかける。それが静歌の癇に障ったのか、彼女は睨み付けながら青塚に歩み寄った。


「減らず口ね。そんな大層なボスなら、どうして姿を見せようとしないのかしら?強い能力を持っているなら、隠れる必要なんてないはずでしょ?」


 静歌は心の中で、姿を見せないボスを臆病者だと決めつけていた。姿を見せないということは、魔女に狙われるのが恐いということだ。それはつまり、自分が弱いことを意味している。

 しかし、青塚の口から告げられたのは意外な事だった。


「ボスは一種の精神障害持ちで、極度の心配性なんだ。それは自分の強さ弱さには一切関係ない。わかるだろ?精神は人間の最も重要な要素だ。能力や魔力なんてのは、あくまでその下にあるだけだ。だから、ひたすら身を隠すボスが弱いと決めつけるのは、極めて愚かな思考だ」


 青塚が語ったボスの素性。一歩大きく近づいたような気がしたが、得体の知れなさは増大していくのだった。


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