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魔女狩り少年と光の魔女  作者: 揚げパン
第3章 動き出す影
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第55話 遭遇 その8


 姿を現さずに攻撃を仕掛けてくる青塚。静歌にとっては汚い戦法以外のなにものでもない。しかし、戦いにおいて汚いうんぬんを言っていても仕方がないことは、静歌もよくわかっていた。


「姿を隠しながら攻撃できれば、それは最大の防御になるし、安心できるわね……でも」


 静歌はどこにいるかわからない青塚に対して褒めの言葉を言うと、拘束されたままの赤渕のそばまで行く。


「忘れちゃいけないわ~。私には人質がいるのよ」


 静歌は口角を上げる。赤渕という間抜けな人質がいる限り、自分の優勢は変わらない。


「えっ?俺のこと?俺のこと言ってんの?」


 対して、赤渕は自分が人質であることがわからなかったようだ。わかったところで、緊張とは程遠いのだが。


「あんた以外にだれが居んのよ?間抜けに磨きがかかると、こうもうざったいとはね~」


 本音は赤渕も今すぐ殺したい。この間抜けな男が目障りで仕方がない。だから早く青塚からボスの情報を訊き出して、彼を殺害し、この赤渕も殺すのだ。


「人質…ねぇ。止めといた方が良いぜ。そいつを人質にすんのは」

「…!」


 静歌はハッとした。突如、視界に青塚の姿が現れたのだ。彼は余裕そうに腕を組んで壁にもたれかかっている。


「ボスの居場所知りたいんだろ?教えてやるぜ」


「あら、やけに素直なのね」


 唐突にボスの居場所を教えると言い出した青塚。別に青塚に不利な状況でもないのに、なぜいきなり教えようと思ったのか。


「そこの4階建ての細長い雑居ビルの最上階にいるぜ」


 青塚は静歌の斜め後ろにある古びたビルを見る。静歌も青塚が示したビルを見てにやけた。


「あなたの情報信じるわ。どうもありがとう」


 青塚は何かやばい気配を感じ、後ろを振り向く―――と、無数の光の矢が目の前に迫ってきていた。いつの間にか静歌が魔術を発動していたのだ。

 それから一秒と経たず、轟音が闇夜を切り裂き、爆風が吹き荒む。風で髪が流される中、静歌は邪悪な笑みを浮かべていた。




「おい、何だ今の音は」


 轟音は向かっている亮司たちの耳にも届いた。彼らはB-12地区の近くまで来ていた。


「空が一か所明るくなってた。お姉ちゃんが光の魔術を使ったのかもしれない」


 志乃が浮かない表情でそう告げる。自分の魔術だからよくわかる。静歌が使っているとはいえ、自分の魔術を人殺しの手段に使われるのは心が痛い。

 すると、瑞葉が志乃の方を向いて言った。


「志乃、ここまで来てなんだけど、あんたが先頭切って静歌様を説得しに行くのは危険だと思う。様子見で私と月音が先に話しに行くわ」


 そう告げて、月音にアイコンタクトを取る。月音も同意のようで、首を縦に振った。瑞葉は続いて美雨の方を見る。


「美雨も何があるかわからないから隠れてた方がいいわ。…そこのバカ男はどっちでもいいけど」


 最後に捨て台詞のようにシレッと亮司に言う。瑞葉の亮司に対する扱いはすっかり定着しているようだ。


「おまえの幼稚な語彙力で説得できんのかよ」


 言われたままは気に食わないので、すかさず仕返しを繰り出す。瑞葉の良い気分は、すぐに亮司のきつい言い返しによって打ち砕かれてしまい、悔しさを露に歯を食いしばる。


「心が籠ってれば語彙力なんか関係ないわ!」


 その悔しさを紛らわすように持論を投げた。確かに心が籠っていることは大事だが、語彙力が関係ないことは無い。

 そうこうしている間に、5人はB-12地区に入った。


「ここがB-12だ。黒薙が発見した場所はすぐそこだ」


「そこの角を左に曲がれば、いるはずよ」


 美雨が10メートルほど先の十字路を指差す。もう静歌との距離はごくわずかだ。

 志乃は息をゴクリと飲む。姉に会えるというのに、心から嬉しい気持ちになれない自分がいる。何より、説得はうまくいくのだろうか。姉は今の自分を本当の志乃ではないと否定している。姉とのかい離は大きい。そんな状態で飛び込んで、姉は話を聴いてくれるのだろうか…。


「どうした。心配なのか?」


 亮司が志乃の顔をうかがうように尋ねる。姉を前にして、一段と表情が冴えないのが気になったようだ。


「私の言うこと聴いてくれるかな…」


 志乃は自信を無くしていた。


「おまえのやかましさがあれば、あのわからず屋だって聴くだろ」


「もー。ほんとにそう思ってんのー?」


 こんな状況でもいつも通りの亮司に呆れつつも、表情を緩める志乃。これが亮司なりの元気づけなのだ。


「説得する時に一番しちゃいけないことは、自信を無くすことだぜ。姉貴が素直に聴くかどうかは別として、おまえが自信持って話すれば、それが一番効果的だ」


 志乃はじっと聴き入っていた。感情の乏しい淡白とした口調だが、不思議と心にしみていく。そして静かに頷いた。

 一方、瑞葉と月音は前に出て、亮司たちの方へ振り返る。


「じゃあ、先に様子を見に行くわ。大丈夫なようなら、合図出すから」


 瑞葉はそう告げると、気を引き締めて月音と共に十字路の方へと向かった。


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