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魔女狩り少年と光の魔女  作者: 揚げパン
第3章 動き出す影
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第52話 遭遇 その5


 亮司たち3人は魔女同盟の館へと向かっていた。館の前で美雨、瑞葉と落ち合う。美雨の蝶で捜索すれば、人力で探すよりも断然早く見つかるだろう。しかし、亮司には気になることがあった。一つは静歌がどうやってボスの居場所を突き止めるのか。情報源は極めて乏しいはずだ。もう一つは先程の電話だ。仮に月音の言うように自分を引き離すことが目的なら、奴らは静歌がボスを狙っていることを知っているはずだ。


「おい……えーと…おまえ、なんつったっけ」


 亮司は歩きながら月音の顔を見て尋ねようとするが、名前が出てこない。この前会ったものの、名前を教えてもらっていなかった。月音は無愛想な顔で亮司を見て答えた。


「緋崎月音」


「緋崎ね。気が向いたら憶えてやるよ」


 亮司の上から目線の言葉に、月音は不機嫌そうに顔をしかめる。


「もし忘れたら焼いてやる…」


「おいおい。焼くとかよ~、俺はパンじゃないんだぜ~。如月といい、こうも乱暴な魔術を使う奴が多いな~」


「なに?魔術に対して文句言うの?」


 志乃も顔をしかめて亮司を見る。


「魔術に文句を言ってるわけじゃない。乱暴な魔術だって言ってるだけだ」


 亮司は別に魔術を軽蔑しているわけではない。志乃と月音の扱う魔術に対して文句を言ってるのだ。だが、当事者二人はもちろん不愉快だ。


「月音ちゃん。後でコテンパンにしようね」


 志乃がひそひそと月音に耳打ちし、月音も頷いて同意する。それを亮司は目を向けずに受け流した。


「ところで緋崎、俺がさっき電話で言われた場所と、如月の姉貴が向かってる場所が違う場合、お前が言ったように罠の可能性がある。だが裏を返せば、奴らは既にボスが狙われてるのを知ってることになるよな?」


「…確かに」


 月音は目線を下げて考え込む。亮司の言う通りだ。可能性の一つでしかないが、ボスが狙われていると知れば、その部下たちは全力で阻止するはずだ。それに対し、静歌は単身で向かっている。いくら静歌が強いとはいえ、危険ではないか。

 亮司はさらに続けた。


「もう一つ。如月の姉貴はどうやってボスの居場所を突き止めるんだ?元メンバーの俺だって知らない。むしろ誰が知ってるのかすらわからないほどだ」


「………」


 月音は黙って亮司の言うことに耳を傾けている。


「ただ、幹部の奴らは知っているかもしれない…。最もボスと連絡を取る可能性が高いからな。だが、それも幹部に遭遇できればの話だ。…ま、あの姉貴何でもできそうだから、なんかしらの手段で突き止めるんだろうけどな」


「…どのみち、ボス以外の奴に知られる可能性は高い…と」


「そうなるな。あの姉貴の魔術がとんでもなく凄くて、誰にもバレずにボスと遭遇できれば御の字だが、そううまくいくとも思えない」


 謎に包まれたままのボス。情報が無いに等しいということは、それだけ情報の漏えい防止を徹底しているのだ。ボスに遭遇できるまでには、いくつものバリケードが張られているに違いない。



 3人が館の前に到着すると、既に美雨と瑞葉が待機していた。


「おうガキんちょ。こんな時間に出歩いてたら警察に補導されんぞ」


 亮司が瑞葉の前に行き、見下ろすように注意する。瑞葉はこの中で一番年下なのだ。


「なによ!あんただって同じでしょ!っていうかガキ言うな!」


 どっちにしろ未成年なので扱いは同じだと反論する。そしてガキ扱いする亮司を狼のように睨み付ける。その傍らで、志乃が美雨のところへ行き、申し訳なさそうに詫びを入れた。


「ごめん美雨ちゃんこんな時間に」


「気にしないで志乃。困ったときはみんなで助けるのが鉄則でしょ?それより、もう蝶を飛ばして捜索を始めてるわ」

「ありがとう!助かるよ」


 志乃は美雨に感謝の笑顔を振りまける。それにつられて美雨も笑みを浮かべた。


「…そうだ」


 ふと、亮司は思い出したようにポケットから小さく折りたたまれた紙を取り出した。


「何それ?」


 瑞葉が視線を紙に移して尋ねると、亮司は紙を広げて地面に置いた。紙の大きさはA1サイズほどの大きなものだ。紙には道路や地名、建物名称、記号などがびっしり載っていた。


「この街の地図だ」


 亮司は屈んだ状態で地図をじっと見る。その後ろから志乃達が覗き込む。


「…なんか普通の地図と違うね」


「どこが?」


 志乃が地図を見ながらボソッと呟くと、隣で瑞葉が不思議そうに尋ねた。志乃は指差して瑞葉に教える。


「ほら、地図のところどころにアルファベットの文字が載ってるよ。AとかBとか」


「あぁ。この地図は普通の地図じゃないぜ。なんせ魔女狩りしか持ってないからな」


 亮司がそう告げると、少女たち4人は緊張した面持ちになる。何か見てはいけないものを見てしまった感じだ。


「あ~あ。こんなものお前らに見せたことがバレたら、俺は地獄行きだな」


 亮司がため息交じりにそう言うが


「あんたはどうせ地獄行きよ」


 瑞葉が真顔でズバッと一言言い放った。亮司はイラッとして動作を止めるが、目を向けずに受け流すことにした。


「俺は如月たちが来る前に、魔女狩りの誰かから電話で命令を受けた。向かう場所はA-4にあるアジト…。これは魔女狩り達が使うブロックの通称だ。地図に載ってるアルファベットと区切りがその場所と範囲を示す。アルファベットだけじゃ範囲が広いんで、さらに数字で分けている。つまり、A-4ってのはここだ」


 亮司はそう言って、人差し指を地図のある一点に向ける。そこには、地図の上から"4"という数字が刻まれていた。亮司が向かうよう言われたアジトは、このエリア内に存在するというわけだ。


「黒薙、蝶を一匹、このエリアに飛ばしてくれないか。ちなみにアジトの場所はここだ」


 亮司が地図上の細かい箇所を指し示す。美雨は屈んでその箇所をじっと見て、場所のイメージを掴む。


「わかったわ」


 美雨は場所を把握すると、飛ばしている蝶のうち、一匹をA-4地区に向かわせた。


「今現在怪しい場所はここだけだ。これでブロックA-4に何もなけりゃ、俺への命令は如月の姉貴から引き離す罠の可能性が高くなる」


「…つまり、静歌様の行動は既に奴らにバレている」


 月音がボソッと言った。その言葉に、志乃は不安感を増大させた。


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