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魔女狩り少年と光の魔女  作者: 揚げパン
第3章 動き出す影
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第51話 遭遇 その4


 静まり返った街の中、志乃と月音は亮司の家に向かっていた。道端に立つ街灯だけが二人を照らす。志乃の心には不安が残るが、瑞葉と月音の協力的姿勢は心強かった。そう思っていると、月音が志乃の方を向いて尋ねてきた。


「志乃…。唐突に訊くけど、渡良瀬亮司のことが好きなのか?」


「と、唐突過ぎるよ月音ちゃん!!どしたの!?いきなり」


 突然予想だにしていなかったことを訊かれ、わたわたと慌てふためく志乃。準備も何もできていない。しかもなぜこのタイミングでそんなことを訊くのだろうか。


「いや…、二人共気が合っているように見えたから」


「気が合ってる!?と、とんでもないっ!あっ…、こんな大声出しちゃだめだ…」


 思わず大声を出してしまったが、ここは深夜の住宅街。迷惑以外のなにものでもない。志乃は慌てて声を小さくする。


「その慌てよう…怪しい」


 月音は志乃の動揺を見て、彼女の言っていることが嘘じゃないかと疑念の目を向ける。


「もー月音ちゃんやめてよー。あんな口悪い奴好きになれるわけないよ」


 志乃は好きになれない理由を答えるが、月音の疑念の目は継続中だ。


「確かに口は悪いが、志乃のことを気にかけている。この前出会った時も、敵であるはずの静歌様の様子を訊いてきた。それは志乃を心配させたくないと思ってる証拠」


「月音ちゃん深読みしすぎー。あいついっつも私のこと馬鹿にして…そのうち見返してやるんだから」


 そう言って意気込む志乃。志乃は自分の気持ちに素直になれないのだろうか…と月音は思った。


「そうだ…。行く前に一応電話入れておこう…。怒るかな…」


 志乃は歩きながらスマホを取り出して、気後れしつつも亮司に電話をかけることにした。




 亮司は家で眠りについていた。――が


 ピリリリリ…!


 突然スマホの着信音が鳴りだしたのだ。亮司の脳が聴覚に刺激され、睡眠状態が解除されてしまった。


「…んだよ、こんな時間によぉ…くそ」


 起こされた亮司は当然不機嫌だ。寝起きのぼやけた感覚の中、腕を布団からのそのそと出して、スマホのボタンを押して着信音を消した。そして電話には出ずに再び目を瞑る。

 応答がない着信は、そのうち留守番対応へと移行した。自動音声の案内が流れていく。それは、まるで子守唄のように亮司を眠りへといざなう。

 ―――だが、次の瞬間、機械的な男の声が流れ、亮司の眠気が吹っ飛んだ。


【渡良瀬亮司。呑気に寝ているだろうが、君に命令をしよう。今から速やかにブロックA-4にあるアジトへ来い。後のことはその場で指示する。命令に従わない場合は、君や君の友人が一分一秒とて恐怖から逃れられない生活が待っているだろう】


 プツッ…


 電話はそこで切れた。暗闇の中で流れる機械的な声はひどく不気味だった。亮司は再び眠りにつく気がなくなってしまった。



 プーッ…プーッ…プーッ


 志乃は亮司に電話をかけたものの繋がらなかった。最初は電源を切っているのかと思ったが、画面を見ると通話中という文字が。


「え…?通話中…?他に誰かが電話してる?」


 志乃は首をひねる。他の誰かが亮司に電話をかけていて、それがバッティングしてしまったのだ。しかし、こんな時間に誰が電話するのか。普通の電話ではないことは予想できる。


「早く行った方がいいかもしれない。急ごう」

「うん」


 二人は走り出して亮司の家へ急いだ。



 亮司は二階建ての少し古めのアパートに住んでいた。志乃と月音がそこに辿り着くと、亮司は既に外に出ていた。亮司の姿を見るや、志乃は驚いた表情を見せる。


「渡良瀬!?」


 志乃が声をかけると、亮司が二人に気付いて振り向き、彼も同様に驚いた表情になった。


「おいおい、こんな時間にそんな奇妙なコンビで何の用だ?」


 志乃と月音の組み合わせは奇妙と言える珍しさだった。すると、月音が志乃の前に出て言い放った。


「いいから私達と一緒に来い」


「なんだその暴力的な言い方は」


 亮司は眉を寄せて月音を見る。先程亮司の口が悪いと言った月音の口が悪い。


「おまえにはこれくらいがちょうどいい。静歌様が行方不明だが、魔女狩りのボスと衝突するかもしれない。急いで静歌様を止めに行く」


「渡良瀬、こんな時間にほんとごめん。でも、私すごく嫌な予感がするんだ…。今のお姉ちゃんはたぶん盲目になってる…。やっぱり、お姉ちゃんには戦ってほしくない。妹としてお姉ちゃんを止めに行きたい」


 志乃も前に出て、申し訳なさそうに詫びつつも、力強く自分の想いを伝える。その想いを、亮司は静かに聴いていた。志乃の気持ちは十分わかっている。だが、亮司も亮司で、意味深な命令を出されたばかりだ。


「…場所が同じならいいが、俺も俺で、真夜中に意味わかんねぇ命令出されてな」


「命令…?誰から?」


 志乃が驚きながら尋ねる。先程バッティングした電話がそうだったのか。しかし、亮司は首を横に振る。


「わからん。まぁ、魔女狩りのやつってのは確かだが」


 それを聞いた月音は、素早く自分の考えを言った。


「奴らの作戦かも知れない。場所は恐らく違うだろう。おまえを遠ざけようとしてる可能性がある。それに、静歌様が向かっているのは魔女狩りのボスのところだ。命令に背いても、ボスがいる方に行けば問題ない」


「月音ちゃん鋭い…!」


 月音の素早い判断に志乃は感心する。亮司も少しは感心したが、素直に褒める気にはなれない。


「口はすこぶる悪いが、頭の回転は良いようだな」


 褒めつつも見下している言葉に月音はムッとする。


「誰に対しても分け隔てなく口が悪いおまえほどではない」

「おーおーおー。人をイラつかせることにも長けているようで」


 亮司も青筋を浮かべて月音に近付き、互いに睨み合う。志乃は慌てて二人の仲裁に入る。


「二人ともっ!いがみ合ってる場合じゃないよ!」


 すると、亮司が物珍しそうに志乃を見る。


「…おまえが仲裁に入るのも珍しいな」


「あのね…」


 志乃は呆れながら亮司を睨んだ。確かにいつも亮司と言い合う側で、美雨が仲裁に入っているので、珍しがるのも致し方ない。


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