表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔女狩り少年と光の魔女  作者: 揚げパン
第3章 動き出す影
51/202

第50話 遭遇 その3


 夜になり、魔女同盟の館では、いつも通り夕食の時間を迎えていた。この日の食事当番は瑞葉。テーブルには色彩鮮やかな洋風料理が並んでいた。月音は器に盛り付けされた料理をじーっと見てボソッと言った。


「瑞葉の料理の腕が上がってる…」


「なによ。前からうまかったでしょ」


 瑞葉が不満そうに反論する。しかし、暁美も盛り付けを見て、月音と同意見だった。


「でも、盛り付けかなりきれいだよ」


 素直に褒められたと思った瑞葉は恥ずかしそうに照れる。


「そりゃ、綺麗に見せるのが料理の基本でしょ!」


「誰かに食べさせるために練習したとか」


 月音の鋭い一言にドキッとする瑞葉。図星だったのか、額から冷や汗が垂れてきた。


「そ、そりゃあれよ!静歌様のためよ!静歌様に下手な料理食べさせられないでしょ!」


「なるほど」


 何とかごまかそうとする瑞葉。月音もその場は納得したように見せたが、もちろんそうじゃないとわかっていた。


「…でも、静歌様…」


 暁美が心配そうな表情で空いている静歌の席を見つめる。二人も同様に静歌の席を見つめる。


「…今日は館にも戻ってないようだし、何もなければいいけど…」


 瑞葉がボソッと不安そうに言うと、暁美が不安を払拭しようと言った。


「静歌様は最強の魔術師!魔女狩りなんかにやられるわけないし、何もないよ!」


「そうよね!魔女狩りなんかバーンと一撃よね!」


 瑞葉もとりあえず、深く考えないことにした。




 暗闇で静まり返った街の中、赤渕はボスに言われたB-12地区のアジト前に到着した。アジトと言っても、周りは雑然とした中低層ビルが並んでおり、知らなければどこがアジトなのかわからない。

 赤渕はキョロキョロと見回すこともなく、何かを待っているかのようにじっとその場に佇んだ。…その背後に追ってきた静歌の蝶も飛んでいる。結局ばれずにここまで追跡してこれた。


 ピリリリリ…!


 突如、携帯の着信音が鳴った。赤渕はポケットから携帯を取り出して応答した。


「もしもし、赤渕です」


 今までと打って変わって、淡々とした口調で応答する。


【ついたか。私はおまえのすぐ近くにいるが、落ち合う前に次の指令をこの電話で言おう】


「はい」


 二人のやり取りは、蝶を通して静歌にすべて伝わっている。静歌はじっと耳を研ぎ澄ませ、電話の内容を窺う。


 ヒラヒラヒラ…


 蝶が舞っている―――と


 ボゥ!


 突然、下からライターで炙られて火がついたのだ。


「おやおやいけねぇなぁ…盗み聞きはよぉ」


 火をつけたのはスキンヘッドにサングラスの男…青塚だった。火は瞬く間に蝶を覆いつくし、すぐに燃え尽きてしまった。


 ―――静歌への情報は、ここで途切れてしまった。


 ドォーン!!


 苛立った静歌は、光弾を放って近くの壁を破壊した。


「何よ余計なことしやがって!!むかつくわ!……でも、場所はわかったことだし、今から会いに行ってあげるわ~。ふふふ」


 怒ったかと思えば、今度は不気味に笑みを浮かべる静歌。彼女の頭は今、魔女狩りのボスを殺害することで満たされていた。




 ガバッ!


 志乃がベッドから勢い良く起き上がった。額には汗が滲んでいる。彼女は手を額に当ててうつむく。


「まただ…。また嫌な夢を…」


 ふと、傍に置いてある目覚まし時計を見る。時計の針は午前1時を指していた。志乃は何か決意したように顔を引き締めると、立ち上がって身支度を始めた。




「こんな時間にどうしたのよ…」


 瑞葉が眠い目をこすりながら、館の門の前に立っていた。対面するのは浮かない表情をする志乃。彼女は夜も更けた中、一人で魔女同盟の館までやって来たのだ。

 志乃は頭を勢いよく下げて詫びを入れた。


「ごめん!本当にごめん!迷惑なことしちゃって!」


「別にいいわよ…。それより、なんかあったの?」


 こんな時間にこんなところに一人で来るとは、余程のことがあるはずだ。それに志乃の浮かない表情が気になる。


「その…、お姉ちゃんに会わせてほしいの!」

「はぁ?志乃正気!?」


 瑞葉はひどく驚いた。静歌とはあの件で溝ができているはずだ。迂闊に会えば命の危険すらある。それなのに、会いたいと言って来たのだ。だが、志乃は真剣な顔で頷いた。


「下らないって思うかもしれないけど…。私、お姉ちゃんが魔女狩りのボスに殺される夢を見た。それも一回だけじゃない…。何か嫌な予感がするの…。正直、お姉ちゃんは魔女狩りのボスを狙うと思う。だから、お姉ちゃんに会って話がしたい!」


 志乃は真剣だ。だから瑞葉も真剣に話を聞いた。


「あんたの気持ちは分かった。…でも、静歌様はいない。どこかに出かけて以来、今日は一度も帰ってないわ」

「…!」


 志乃はハッとする。まさか…もう既に…。


「落ち着いて志乃。あんたが慌てちゃだめよ」


 心を乱す志乃を落ち着かせる。


「どうした」


 すると、後方から月音がやってきた。


「月音ちゃん!」


 志乃は月音の姿を見ると、表情を少し明るくして声をかけた。


「…志乃、何故ここに?」


 月音は怪訝そうな表情を向ける。と、瑞葉が代わりに説明した。


「静歌様に会わせてほしいって。ちょっと物騒な夢を見て、嫌な予感がするみたい。月音は静歌様がどこに行ってるか知らないわよね?」


「知らない。志乃、他の二人は?」


 月音は志乃が一人だけで来たことが気になるようだ。特に、いつも一緒にいる亮司がいない。すると、志乃は視線を下に向けて表情を曇らせる。


「お姉ちゃんの問題に渡良瀬と美雨ちゃんを巻き込みたくない…。まだ、お姉ちゃんが二人を攻撃しないとも限らないし…。瑞葉ちゃんと月音ちゃんもごめんね!お姉ちゃん居ないし、もういいよ」


 志乃は二人を思って一人で来たのだ。二人の安全もあるし、姉との問題は自分で解決すべきだと思ったのだ。もちろん、瑞葉と月音を巻き込むわけにもいかない。しかし、瑞葉も月音もその思いに反対した。


「志乃、あんた今から一人で静歌様を探す気?どうやって探すつもりよ?」


「それは…」


 志乃は口籠ってしまう。確かに自分は今から静歌を探そうとしていた。しかし、冷静に考えてそれが無謀であるのは明らかだ。


「美雨の魔術なら見つかるのが早い。やっぱりあの二人はいた方がいい。瑞葉、美雨を連れてきて」


「わかったわ。バカ男は私じゃ無理だから、月音と志乃でよろしく」


 瑞葉は月音の指示に頷き、美雨の家に向かっていった。


「志乃、私達も行こう」

「う、うん…」


 瑞葉を見届けると、志乃と月音も亮司のところに向かい始めた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ