第4話 最初の試練 その2
銃口を向けられる志乃。力を振り絞って魔術で攻撃するか……いや、札内の能力が判明していない以上、あまりにも博打が過ぎている。腹部の痛みも治まらない…。自分は非力なのか…。志乃はその事実を認めたくなかった。
パァン…
瞬間、銃声とは思えない静かな音と共に弾丸が放たれた。…志乃は無意識のうちに目を瞑っていた。
…何秒経っただろうか。1秒…いやもう3秒は経っている。自分はもうとっくに撃たれたはず……。
「はっ…!」
志乃は目を見開いた。弾が空中で止まっているのだ。これは夢か?実はもう死んでいて、幻想でも魅せられているんじゃないかとも思った。…だが、あの男の声がこれが現実であることを知らしめた。
「そう簡単にいくかよ。札内!」
志乃の前に亮司が立ち、力強く宣言する。札内は歯を噛みしめ
「君のことは昔から知っているが、君の"能力"は知らなかったな…。びっくりだよ」
志乃は驚愕した。銃弾が止まっているのは、亮司の能力なのか?亮司もあの男と同じ、能力者なのか?
「魔女狩りは仲間であって仲間じゃない。あんたも俺にとって同じ組織の人間ってだけだ。だが、この女は違う!俺と目的が合致した仲間だ!」
仲間―――。亮司の言う"仲間"という言葉に不思議と温かみを感じた。
「その魔女と仲間だと!?きさま!!その虫ケラの仲間だというのか!!」
札内は激昂して大声を張り上げる。今までの冷静な態度は崩れ去り、感情むき出しの荒々しい表情を見せる。
「きさまの能力はモノを固定する能力ってとこか?ハハッ!だからなんだ?銃弾を止めたところで何になる!?笑わせんな!」
札内は無理矢理な笑いを見せながら一歩一歩と近づいていく……と
「迂闊に近づくと危険だぜ」
瞬間
ブスッ…!
札内は目を見開いた。止まっていたはずの銃弾が突然自分の体を貫いたのだ。銃弾は札内の体を貫き、少し後方のところで止まり、そのまま垂直落下した。
「ひっ…!」
志乃は腹に穴の開いた札内を見て手で目を塞いだ。そこに彼女を遮るように亮司が立つ。
「女には血生臭いものを見せちまったな。…だが、これが魔女狩りだ。薄汚れた世界でしか生きられない人間だ」
「何を…かっこつけたこと言ってやがる…。てめぇぇ!!よくも俺の体に穴をあけやがったなぁぁ!!許さねぇ!!虫ケラより先にてめぇをなぶり殺してやるからなぁぁぁ!!」
札内は怒りで顔を歪ませ、狂気じみた目でナイフを取り出して――――なんと、やつはそれを亮司とは逆の方向へ投げた。
「…!?」
亮司は札内の謎の行動に目を疑った。―――次の瞬間
ヒュン!!
突如、亮司の目の前にナイフが現れた。狙いは喉――!あまりに突然のことに亮司は反応が遅れた。間に合わない…!!
バチッ!!
その時だった。亮司の目の前でナイフが何かに弾かれたのだ。さらに、上空から光の矢が降ってきて、ナイフを粉々に砕いてしまった。
「あ、危なかった…!」
さすがの亮司も冷や汗を垂らしていた。あと1秒もしないうちに自分は喉を刺されて死んでいただろう。…だが、今のは――
「わかった…。あいつの能力が」
亮司の後ろで、志乃が顔に影を落として静かにそう告げた。……亮司は耳を疑った。自分も知らない札内の能力に気付いたというのか?
「あの魔女め……!」
札内は歯を食いしばり、苦い表情を浮かべる。
志乃は顔を上げ、凛とした目つきで告げた。
「あいつの能力は線対称! ある場所を基準にして人やモノを対称にする能力!」




