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魔女狩り少年と光の魔女  作者: 揚げパン
第3章 動き出す影
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第45話 魔女の掟 その1

 会いたくないと思っている人間ほど出会ってしまう。出会った瞬間、"なんてついてないんだろう"と自分の運の無さを恨むのだ。

 瑞葉もまた、自分の運の無さを恨んでいた。公園で亮司とばったり出会ってしまったのだ。


「なんであんたがいんのよ」


 ゴミを見るような目で亮司を見る。だが、亮司は冷たい視線をシレッと受け流した。


「俺のテリトリーに許可なく入ったおまえの方が問題だろ。領土侵犯だ」


「はん!いつからここはあんたの領土になったのよ?頭にウジでも湧いちゃったのかしら」


 瑞葉はやれやれとお手上げの仕草を見せる。この公園は瑞葉のお気に入りの場所なので、勝手に嫌な奴の領土にされてはたまったものではない。

 それよりも、亮司には早くどっか行ってもらいたいのだ。


『9時45分…。あと15分…。まずいわね』


 瑞葉はチラッと腕時計を見て冷や汗を垂らす。どっか行けと言って素直に従うような奴ではないだろう。かと言ってこの男がいるのはイレギュラーな事態なので、なんとか退けなければいけないのだ。

 亮司の方は、瑞葉が時間を気にしていることに気付き、この後ここで何かあるのだろうと予想を立てた。別に彼女をいじめる気は無いので、おとなしく離れることにした。


「喉乾いたからコーヒー飲みに行くか…」


 瞬間、瑞葉の表情が明るくなる。なんともわかりやすい人間だ。少し呆れながらも踵を返すと、一人の少年の姿が見えた。


「瑞葉ー!」


 その少年…矢櫃光磨は瑞葉の名前を大きな声で言いながら手を振ってきた。それを見るや、瑞葉は顔を赤面させた。


「ちょ、ちょっと!恥ずかしいから名前叫ばないで!」


「んじゃ、俺はこれで」


 亮司は赤の他人のようにそそくさと離れようとした――が


「待ちなさい」


 逆に瑞葉が鋭い口調で止めに来た。


「なんだよ」


「今のこと、誰にも言うんじゃないわよ。特に志乃には。言ったらぶっ殺すから」


 瑞葉は顔に影を落とし、ドスの利いた声で脅迫してきた。


「おいおい…。ボーイフレンドの前で言うことじゃないだろ」

「なんか言った?」


 瑞葉は青筋を浮かべて威圧をかける。すると、ちょうど光磨が二人のところに辿り着いた。


「どうしたの?怖い顔してるけど…」

「あっ!いやいや!何でもないの!」


 瑞葉は慌てて表情を一変させて笑顔を光磨に向ける。態度が180度変わったが、亮司はそこを突っ込むことはせず、この隙に素早く公園を後にした。

 公園を出たところで、一人の少女にばったりと対面した。真紅の髪をポニーテールにしており、どこかで見覚えがあるが、いまいち思い出せない。


「あっ…」


 少女は亮司を見るや、少し驚いた表情を見せる。相手は亮司を知っているようだ。


「渡良瀬亮司…」


「俺の名前知ってるってことはどっかで会ったことあるのか。すまないが思い出せねぇな」


 あまり思い出す気もないが、とりあえず詫びを入れて去ろうとするが


「…なら、これを見れば思い出すはず」


 少女が無愛想な表情でそう告げてきた。すると、


 ボッ!


 亮司の右腕に炎のリングが突如現れた。瞬間、亮司の頭に苦い記憶がよみがえる。喫茶店でコーヒーを嗜んでいたら、この少女が現れて、いきなりこの炎のリングで縛り付けてきたのだ。


「思い出した思い出した。確か…抵抗すればするほど熱くなっていくっていう意地汚い魔術だったよな。なんだ?また俺を連行するのか?」


「いいえ。出会ったのもたまたまだし、別に連れ去るつもりもない」


 少女…緋崎月音はそう言って炎のリングを消した。どうやら今回は違うようだ。あの炎のリングは厄介だったので正直ホッとした。


「出会ったついでに、おまえらのお頭は元気か?」


「敵なのになぜ気にする?」


 亮司は志乃の姉…静歌の様子について尋ねるが、それが月音には不思議だったようで、彼女は首をひねる。彼女の反応はもっともだろう。しかし、志乃の肉親だということもあるし、志乃が見た夢の事もあるので、亮司としては気になるところがあるのだ。


「敵とはいえ、如月の姉だからな。姉になんかあったらあいつが悲しむだろ」


 じーーーーっと月音が亮司の顔を見る。


「…なんだよ」


「志乃のことが好きなんだ」

「なんでそうなる」


 亮司は即座に言い返す。あまりにも短絡的ではないかと。


「好きな人の悲しむ姿を見たくないのは自然なことだし」


「だからって無理矢理すぎだろ。悲しむのを見たくないイコール好きだってのは。おまえ見た目によらず強引な思考だな」


 最後の一言が気に入らなかったのか、月音はムッとした表情になる。


「私はおまえのことが気に入らないから、今ここで焼き殺すのも自然なこと…」


 月音は脅迫をかけて、掌に炎を発現させる。


「おいおい…なんだよ今日は。さっきは銀髪女にぶっ殺すって言われて、今度は焼き殺すかよ」


 すると、月音が亮司の言葉に反応して炎を消した。


「銀髪女…?瑞葉に会ったのか?」


「瑞葉?あぁ…あいつ、そんな名前だっけか…。なんだ?探してんのか?」


 亮司が尋ねると、月音はコクリと頷いた。


「どこにいるのか知っているなら、教えてほしい」


 亮司は両手を頭の後ろで組んで、目線を上にあげる。


「さぁーて…どーっすかなー。敵だしなぁー。不自然だよなー」


 ボゥ!


 瞬間、月音は顔に影を落とし、掌に先程より大きな炎を発現させた。


「さっさと教えろ」


 ドスの利いた声は、亮司でも少しビビってしまうほどだった。


「教えてもいいけどよ…、あいつ今、ボーイフレンドといちゃついてるぜ」


 亮司がそう言うと、月音はびっくりした表情になる。この女は彼氏がいなさそうだし、友人に先を越されたのが衝撃だったんだろうと亮司は思ったのだが、彼女は不可解なことを訊いてきた。


「…その男は普通の人間か?」


「…どういう意味だ?」


 亮司は目つきを鋭くさせて訊き返す。


「その男がもし能力者だったら、瑞葉は魔女同盟の掟を破ったことになる」


「そうか。あいにくそこまでは知らねぇな。直接本人に訊くしかないな」


「それで場所は?」


 月音が瑞葉の居場所を尋ねると、亮司は公園を指差した。


「この中にいるぜ」


「ありがとう」


 無愛想な表情のまま礼を言うと、月音は亮司を横切って公園の中に入ろうとした。


「待てよ」


 亮司が顔を向けずに呼び止める。と、月音は足を止めて振り向いた。


「もし能力者だったらどうすんだ?銀髪女もその男も殺すのか?」


 亮司の問いかけに、月音はすぐ答えることができなかった。


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