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魔女狩り少年と光の魔女  作者: 揚げパン
第3章 動き出す影
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第42話 魔女の仕返し その1


 志乃が目を開けると、真っ白な空間が広がっていた。彼女は無機質な灰色の地面に仰向けになっている。


「ん…?ここどこ?」


 志乃はゆっくりと上半身を起こし、辺りをキョロキョロと見回す。見渡す限りの"無"の空間。灰色の地面と真っ白な空が不気味なほどに延々と広がっている。

 だが、志乃は不審に思わず、ただボーっと空を見上げた。


「…やっと逢えたわね。魔女狩りのボス」

「!?」


 その平穏な時間もすぐに幕を閉じる。志乃の耳に姉である静歌の声が届いたのだ。志乃は反射的に体を動かして声の主を探す。


「お姉ちゃん!」


 見つけた。静歌は誰かと対峙していた。険しい表情で相手を睨んでいる。その相手は――――

 志乃が目を向けようとしたその時、静歌の体がズタズタに引き裂かれたのだ。


「えっ!?お姉ちゃんっ!?」


 志乃は姉を助けようと立ち上がろうとする―――が、足が何かに縛り付けられて動かない。その間にも、静歌は為す術も無く傷つけられていく。

 志乃が自分の足を見ると、ツルのようなものが巻き付いていた。彼女は光を放って巻き付いているものを焼き切ろうとしたが、驚くべきことが起きた。


「魔術が…使えない!?」


 魔術が発動しないのだ。原因を考える余裕など無い。志乃は焦りの色を強め、静歌を見つめて大声を発した。


「お姉ちゃん!!」


「………」


 志乃の声に反応しない。静歌はただただ苦しそうに痛めつけられているだけだ。聞こえない距離ではない。まるで間に透明な壁でもあるかのようだ。


「お姉ちゃん!!お姉ちゃん!!」


「ガハッ…」


 志乃の叫びもむなしく、静歌は血を吐いて倒れ込んでしまった。


「そんな…!お姉ちゃ…ん…!」


 志乃の目から涙が溢れる。魔術が使えない非力な自分が助けられなかった。悲しみから背けたい一心で彼女は目を瞑った。



 次に目を開けると、志乃は自分のベッドの上にいた。


「…良かった。夢か…」




「嫌な夢を見た?」


 志乃は公園で亮司と美雨に今朝の夢のことを話していた。美雨が不思議そうに顔を向ける。


「…うん。その、言いづらいんだけど…お姉ちゃんが、魔女狩りのボスにやられる夢を見た」


 ボスというワードに亮司と美雨が反応した。だが、志乃にとってはボスということよりも、姉が倒されることの方が気になっていた。


「落ち込むなよ。ただの夢だろ?」


「そうだけど…、気になるじゃん」


 亮司の慰めは嬉しかったが、それでも気になるものは気になる。夢は自分の頭にあることが再現されると言うが、姉が倒されることなど考えてもいないし、今まで見てきた夢とは何かが違った。


「おまえの姉貴は俺が冷や汗掻くほどの強さだぜ?ボスにやられるわけないだろ」


「それってつまり、渡良瀬が魔女狩りのボスより強いってことでしょ?」


「そうだ。…いや、ちょっと言い過ぎたな」


 志乃はクスクスと笑う。渡良瀬らしい元気づけだ。暗い気分もだいぶ払拭ふっしょくされた。やっぱり話して正解だったと志乃は思った。


「志乃。一つ気になることがあるんだけど」


 美雨から不意に尋ねられた。


「夢の中でボスの姿を見たの?」


 志乃は首を横に振る。自分が確認できたのは、姉がボスという言葉を口にしたのと、ボスの姿を見る前に姉がやられてしまったことだ。自分は魔女狩りのボスに出逢ったことがない。だから夢の中で再現されるはずがない―――志乃はそう理解していた。


「俺が見たことないんだから、如月が見れるわけないだろ」


 亮司がシレッと酷いことを言ったので、志乃はジト目で亮司を見る。


「あー!酷いこと言うもんなー渡良瀬はー。今度仕返ししてやる」


「俺に仕返しなんて10年早いわ」


 亮司は余裕の構えを見せる。だが、志乃も負けてはいられない。彼女は何か企んでいるような悪い笑みを浮かべ、亮司に忠告する。


「魔女をあなどっちゃいかんよー。くっくっくっ!」


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