第34話 安らぐ友
公園で3人とばったり出逢ってしまった瑞葉。名前だけ聞いていた亮司とも初対面し、せっかくだからともう少し話をしていくことにした。
瑞葉は志乃の隣に腰かけ、缶ジュースを飲んで一息ついた。
「っていうか、志乃の気になってる人でしょ?」
瑞葉は亮司を見てそう尋ねる。志乃は瞬間、恥ずかしそうに顔を赤らめ、手をわたわたと振って否定した。
「ち、違う違う!!そういう意味じゃないから!!」
「じゃあどういう意味よ?」
慌てふためく志乃に、瑞葉はジト目で尋ねる。"気になる"の意味に違いがあったようだが果たして…。
「あ…えっと…その…」
案の定、志乃は言葉を詰まらせてしまった。すると、美雨が口を挟んできた。
「志乃の気になってる人で間違いないわ」
「えっ!?ちょっと美雨ちゃん!ミスリードしないでよ!誤解だから!ね!?」
美雨が余計なことを言ってきたので志乃は慌てて訂正しようとする。予想通りの反応をする志乃に、瑞葉はいじわるそうににやける。
「志乃ったらーまだまだ初々しいわねー。まぁ、私からしたら、あんなぶっきら棒でしかも平気で嘘つく男のどこが良いのかと」
「おい、聞こえてんぞ」
亮司は瑞葉を睨み付ける。女子同士で何の話をしているかと思えば、聞こえてくるのは自分の悪口だ。亮司はそんなことよりも、魔女同盟の彼女に訊くべきことがあるだろうと、瑞葉に近付いて尋ねる。
「ところで、姉貴の様子はどうなんだ?」
亮司の問いかけに、瑞葉は表情を一変させ、真面目な目つきになる。
「静歌様のこと?それなら、想像にお任せするわ」
「荒れてんのか」
「えぇ。平常ではないわね。随分と心をやられたみたいで」
瑞葉は何か重いものでものしかかっているかのように背中を丸めて、遠くを見つめながらそう話す。静歌の考えていることが良くわからなくなっていた。自分には見向きもせず、頭の中は志乃の事と魔女狩りの殲滅の事ばかり。かと言って、目の前の志乃に妬みなどの感情は芽生えない。
「お姉ちゃん…」
瑞葉の話を聴いて、志乃は表情を曇らせる。袂を分けたとはいえ、家族である姉のことは気になるのだ。だが、そんな志乃の反応が気に障ったのか、瑞葉は食い掛かるように顔を志乃に近付ける。
「あんたは魔女同盟から脱退したんでしょ!呑気に静歌様の心配している場合!?」
瑞葉としては、自分の身の心配を優先してほしかった。
「脱退したけど……対立もしたけど……お姉ちゃんはお姉ちゃんだもん!」
志乃も負けじと自分の強い思いを見せる。優しすぎる――――瑞葉は彼女を見てそう思った。自分よりも対立している姉の心配。だが、それもそれで志乃らしい。瑞葉は別に嫌いじゃなかった。
「やれやれ…、どが付く能天気ねー。また静歌様に付け込まれても知らないぞー」
瑞葉はそう言いながらにやける。志乃はいじりがいがあって楽しかった。
「おまえこそ、俺達とくっちゃべってるの見られたらまずいんじゃないのか?」
亮司が横から指摘する。瑞葉は魔女同盟に身を置いている。静歌の味方である彼女が亮司たちといるのは、見られたらまずい光景だろう。しかし、瑞葉はあまり気にしていない様子だった。
「いいのよ。散歩してたらたまたま出くわしただけなんだから。っていうか、私の散歩コースにいないでよね」
自分の散歩コース上にいた亮司たちが悪いという理論のようだ。当然、亮司は不服そうに眉をしかめ
「あぁ?超人じゃねぇんだからおまえの散歩コースなんか知らねぇよ」
未来予知でもしない限り不可能だ。だが、亮司のがんを飛ばす言い方に瑞葉も食い掛かる。
「散歩コースなんだからだいたいそれっぽいところよ!ちょっとは察しなさいよ!」
「おまえのために察するほど暇じゃねぇよ!」
「ちょっと!レディに向かってそんな言い方ないでしょ!」
亮司と瑞葉は互いにいがみ合って火花を散らす。傍らで志乃と美雨は苦笑いしながら眺めていた。
瑞葉は空き缶をゴミ箱に捨て、三人の方に体を向ける。
「じゃあ帰るわ。次は、敵として会うことになるかもね」
「そんな…!瑞葉ちゃんと戦うなんてできないよ!」
志乃は瑞葉を大事な友達だと思っている。ちょっといじわるなところもあるけど、本当は人思いで親身に相談にも乗ってくれるいい子だと、志乃は理解していた。そんな大事な友達と戦うなんてできないと、志乃は悲しい目で訴える。だが、瑞葉は敢えて突き放した。
「甘ったれちゃだめよ。これは先輩としての忠告。三人と戦うことになったら、私は真っ先に志乃と戦うから。じゃあね」
瑞葉は踵を返し、背を向けて歩き出す。志乃は瑞葉の忠告に感謝の意を示し、離れていく彼女に声をかける。
「瑞葉ちゃん!戦うことになるなら、私も全力で戦う!でも、その前にもう一回おしゃべりしようね!」
「…ったく、よくばりね」
瑞葉はそうボソッと口に出しながら、志乃らしい返事に口元を緩めるのだった。




