表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔女狩り少年と光の魔女  作者: 揚げパン
第3章 動き出す影
34/202

第33話 放課後のブレイクタイム その2


 魔女同盟の館では、瑞葉が窓枠に両肘をついて、ボーっと無気力な表情で外を眺めていた。


「…なんか、寂しくなっちゃったなぁー」


 瑞葉はボソッとそう呟く。彼女は志乃とのやり取りを思い起こしていた。可愛らしい笑顔を向ける志乃……それは、瑞葉でさえ頬を赤らめるほどだった。最初からあの人格だったら、友達になっていたかもしれない…と瑞葉は残念そうに思うのだった。


 ガチャ…


 不意にドアが開き、月音が入ってきた。月音は部屋の中を見渡す。以前と明らかに違う。部屋が整然と整っているのだ。


「瑞葉、掃除したんだ」


「したわよー。月音が手伝ってくれないから一人で」


 瑞葉は外を眺めたまま気怠そうな声で答える。


「やるって言えば手伝ったのに」

「嘘言うな!」


 瑞葉は振り向いて弾丸の勢いで噛みついた。実際、月音には一回お願いしているが断られた。しつこく言っても仕方がないということで、瑞葉は一人で掃除したのだ。


「それより、どうかしたの?」


 瑞葉は真顔になって月音に尋ねる。心当たりがあるのだ。


「静歌様の様子がおかしい。志乃を取り戻せなかったことが相当きているようだ」


「そりゃそうでしょ。あんだけ可愛がってたんだもの。お気の毒にねー」


 瑞葉は心配しているそぶりを見せない。病的なまでに志乃にこだわる静歌に違和感を感じたのだ。静歌は志乃の人格が変わったことが本当にショックなようだった。瑞葉としては、人格が変わった志乃の方がむしろ好感を持てたから、静歌の気持ちがあまり理解できなかった。


「ご乱心して、私達に飛び火しなきゃいいけど」


 敢えて言えば、それが心配だった。月音もそれには頷く。姉妹のいざこざに巻き込まれるのはたまったものではない。

 すると、瑞葉は思い立ったように窓から離れ


「ちょっと散歩に行ってくる」


 そう告げて、部屋から出て行った。




 亮司は飲み終えた空き缶をゴミ箱へ捨て、ベンチに座っている志乃の方を見る。


「どうやら二重人格のようだな、おまえは」


「そうみたい…。でも二重人格でしょ?かっこよくない?」


 二重人格というのは、子供心と言うか、好奇心をくすぐるようだ。だが、亮司は呆れたようにため息をつく。彼にとってかっこいいか悪いかなど問題ではない。


「よく言うぜ…。こっちはおまえとやり合ったりもしたんだ」


「…ごめん」


 志乃は一変して申し訳なさそうに俯く。亮司たちと戦ったことは志乃自身も嫌な記憶として憶えている。傷つけたくない人を傷つけてしまった自分に負い目を感じている。


「でも、志乃強かったわよー。もうちょっとで渡良瀬にも勝てたかも」


 俯く志乃を励まそうと、美雨が隣からにこやかな笑みを向ける。志乃は顔を上げて美雨を見る。


「美雨ちゃん…」


 すると、美雨は両手を志乃の肩に強く当てて、期待を込めた目で告げた。


「打倒渡良瀬よ!」

「えっ!?」


 志乃は美雨の勧めに動揺する。


「おい…何言ってんだ?」


 亮司も汗を垂らして、余計なことを吹き込むなと言いたげな顔で美雨に訊くが、彼女はそれを一蹴した。


「いいじゃない。志乃も護身の意味で戦い慣れは必要だわ。渡良瀬も志乃のことを思うんだったら、一回相手になってみればどう?」


 確かに美雨の言うことも一理ある。志乃は3人の中で一番戦いの経験が浅い上、性格的にも不利な面がある。かと言って、魔女狩りから狙われている以上、戦いは避けて通れない。そして、最悪一人で戦わなければならない状況も想定しておく必要がある。そのため、志乃が戦い慣れしておくことには意味があるのだ。亮司もそれはわかっている。…わかっているが、志乃の相手をすることには抵抗がある。


「黒薙がやればいいじゃねぇか。同じ魔女同士だろ?生憎、俺は能力者なんでね。魔女とは相性が悪いんだ」


 亮司は黒薙に任せようとするが、能力者と魔女の相性が悪いという発言に、志乃が不服そうな顔を示し、美雨の両手をガシッと掴んだ。


「美雨ちゃん!私頑張るよ!絶対渡良瀬をコテンパンにするね!」

「その意気よ!」


 亮司を尻目に、二人の間で固い結束のようなものが生まれてしまった。だが、亮司としては自分のプライドを曲げるわけにはいかなかった。


「フン…。ま、俺の圧勝だろうがな。如月の攻撃は性格が良く出てるんだ。単純でがさつで大雑把で…」


「あ…そう…」


 志乃は青筋を立てて顔を引きつらせる。


 その時、三人を見て立ち止まる人物がいた。


「あ」


 その人物は呆然と三人を見る。それに三人も気づいて一斉に顔を向ける。


「あっ!瑞葉ちゃんだ!」


 最初に声をかけたのは志乃だった。相手は魔女同盟の時に一緒だった瑞葉だ。志乃は再会できて嬉しそうな表情を向けるが、瑞葉はこんなところでばったり出会ってしまって呆気に取られている様子だった。


「志乃に美雨に……それに……え~~と…誰?」


 瑞葉は亮司を見て名前がわからず首を傾げる。


「山田太郎だ。忘れんなよ」


 亮司が適当に偽名を言ったので、志乃は慌てて両手を振って違うことを示す。


「違う違う!瑞葉ちゃん信じちゃだめだよ!平気で嘘つくから!この人は渡良瀬!」


 偽名を言われたことに気付き、瑞葉は軽蔑するような冷たい視線を亮司に浴びせる。


「あんたが噂の渡良瀬ってやつね…。初対面なのに平気で嘘つく酷いやつだったなんて…」


 亮司はハァーとため息をつき、諦めたような顔になる。


「俺の第一印象悪くなっちまったな…。これが情報操作ってやつか」

「自業自得でしょ」


 亮司のボヤキに美雨が冷静にツッコミを入れた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ