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魔女狩り少年と光の魔女  作者: 揚げパン
第3章 動き出す影
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第32話 放課後のブレイクタイム その1


 朝の登校時間、美雨は小川に架かる橋のところで志乃と待ち合わせしていた。さわやかな気持ちのいい朝だった。


「美雨ちゃーん」


 志乃の声が聴こえた。顔を向けると、向こうから志乃が走ってきた。志乃は美雨のところまで来ると、立ち止まって手を膝につき、荒い息を整える。


「ごめんごめん。途中で宿題忘れたの気付いて…」


「志乃らしくないじゃない。いっそ忘れてきたらよかったのに」


 美雨はいじわるそうな笑みを浮かべてそう言う。


「それはできないよー。だって私優等生だもん。あっ、でも優等生は自分のこと優等生って言わないか…」


「志乃ったら…」


 志乃が自分で自分の発言のおかしなところを指摘する。その様子を美雨は汗を垂らして見ていた。

 学校に着いて教室の扉を開けると、早速、由香と小蜜が二人に気付いた。


「おっ!今日は二人で登校だねー」


 由香が二人を見てそう言う。何の気なしの発言だろうが、志乃と美雨は互いに顔を合わせ、互いに笑みを浮かべた。その様子を由香は不思議そうに見て


「二人ともどうしたの?ハッ!まさかっ…!そっち方面にも手を…!」


「ちょっとちょっと!出してないから!」


 由香は脳内でいやらしい二人を浮かべたが、バッサリと志乃がそれを切り裂いた。



 放課後、志乃と美雨は、由香と小蜜と別れるといつもの公園へ向かった。ベンチのところへ行くと、亮司がアイマスクを付けてベンチで仰向けになって寝ていた。そこを2羽のハトが顔をつついている。それもお構いなしに亮司は熟睡していた。そんなおかしな光景に二人は呆れた表情を浮かべる。


「おーい!」


 志乃が亮司に声をかけると、つついていた2羽のハトがバサバサと慌てふためくように飛んでいった……が、亮司は相変わらず起きようとしない。志乃は眉を寄せてズカズカと近づいていき


「おきんかい!」


 ペシペシと亮司の頬を往復ビンタした。見る見る亮司の頬が赤くなっていく。美雨は呆然とその様を眺めていた。すると、亮司はゆっくりとアイマスクを上げ、志乃を睨み付けた。


「あぁ?」


「あぁ?じゃないでしょ!具合見に来てあげたのに」


 志乃は不服そうな顔をしてそっぽを向く。


「具合も何も、おまえが睡眠妨害したら悪くなんだろ。冬眠中のクマが起こされて機嫌が悪いのと同じだ」


 亮司も亮司で、気持ちよく寝ていたのを邪魔されて不満があるようだ。ハトにつつかれても起きないくらいなので、よっぽど寝ていたかったのだろう。


「あぁーもう!そんなに寝たいなら寝てればいいじゃん!この怠け者!」

「そんじゃ」


 亮司は即座にアイマスクを下ろして眠りの体勢に入った。志乃は怠け者という言葉に反応することを期待していたのだが……予想が外れた。


「寝るなぁーー!!」

「ぶっ!」


 瞬間、志乃は思いきり亮司を往復ビンタした。先程の倍以上の力を込めて。これにはさすがの亮司も眠気が吹っ飛んだ。



 亮司は仕方なく起き上がり、3人はベンチに座って缶ジュースや缶コーヒーを飲んで一息ついていた。


「2人は相変わらずコントが好きなのね」


 先程のやり取りを端から楽しんで眺めていた美雨。何とも微笑ましい光景だったのだろう。当事者である亮司はそんなこと微塵も思っていないようで


「コントじゃねぇだろ。一方的な暴力だろ」


 文句を漏らす。志乃はジト目で亮司を見る。


「意地でも寝ようとするからでしょ」

「寝起きのブラックコーヒーはうまいな」


 志乃の言葉を無視して、亮司は缶コーヒーを嗜んでいる。志乃は頭から湯気を出しながら亮司をきつく睨み付ける。それを見て亮司は


「なんだ?飲みたいのか?なら…」


 志乃が持っているオレンジジュースに缶コーヒーを傾けた。


 ジョボジョボジョボ…


「あぁぁぁぁ!!」


 志乃はその光景に仰天して、慌てて缶を逸らした…が、時すでに遅し。ブレンドジュースができあがってしまった。


「…どうすんのこれ」


 缶だから色が確認できないが、ろくな味じゃないのだろうと想像がつく。


「美雨ちゃん…いる?」

「い、いえ…私コーヒー飲めないの…」


 志乃は美雨に振ってみるが、美雨は体を退けて断った。ちなみに、美雨はコーヒーが飲める。

 志乃は体を回転させ、亮司に差し出す。


「渡良瀬飲みなよ」

「あ、俺ブラック以外飲めねぇ」


 亮司は残ったコーヒーを飲みながら軽く断った。志乃は絶対嘘だろうと思い、ムカッとするが、ここは大人の対応をしてやろうということで引き下がった。

 ゴクリとつばを飲み込んで、志乃は缶ジュースを見つめる。


『ここでこれを飲んでやれば、勇気あるなおまえって思われるかも…。よし…!如月志乃にできないことは無い…!』


 志乃は意気込んで缶を口に当てて傾けた。すると―――


「あれ…?意外とアリかも」


 思いのほか飲める味だったようで、志乃はブレンドジュースを飲み干してしまった。


「何…?飲めたってか…」

「ふふ~ん。ざんねーん」


 亮司は志乃が苦も無く飲んでしまって残念そうな顔をする。対して、志乃は勝ち誇ったような笑みを浮かべた。亮司は舌打ちしてそっぽを向いた。


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