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魔女狩り少年と光の魔女  作者: 揚げパン
第5章 陰謀
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第108話 暗闇の先 その3


 壁に縫わされた一筋の炎によって明るく照らされた通路。そこを月音と暁美の2人が進んでいく。

 電波が通じないため、他の3人と連絡を取ることができない。敵と遭遇していなければいいというのは希望的観測かもしれない。遅かれ早かれ青塚達と遭遇することになるのだから。

 月音は暁美に目を向ける。彼女はまだ不安そうな面持ちをしていた。…無理もない。仲間の無事を祈るしかない状況で、平気でいれる方が難しい。仲間だけじゃない。自分たちの心配だってある。いつなんどき敵が攻撃してくるかわからないこの状況、月音だって緊張していた。


「暁美は怖いものとか苦手?」


「怖いもの?瑞葉に比べればマシだよ」


 暁美は怖がりの代表格の瑞葉と比べることで、自分がそれほど怖がりではないことを強調するが、次の瞬間――


 ピチャッ


「ひゃあぁ!?」


 頭に水滴が落ちてきて、思わずびっくりしてしまった。前言撤回。瑞葉と同じくらい怖がりである。


「暁美も瑞葉と同じくらい怖がり…と」


 月音はメモ用紙を取り出して、忘れないようにとメモを取り出した。


「メモしなくていいから!」


 暁美は慌ててツッコミを入れる。今後何か悪巧みされるのではと不安になってしまう。

 …そうこうしているうちに、灯りの先端が見えてきた。通路はそこで右に90度折れている。それにしても長い通路だ。どこに繋がっているのか見当もつかない。…他の3人と合流できればいいが。

 ――月音が不安を抱いていると、前方に人影が現れた。


「敵だ…!」


 月音はすぐに暁美に知らせ、警戒態勢に入る。周りを見ても隠れる場所は無い。このまま迎撃するしかないようだ。

 人影がだんだん大きくなっていく。2人は緊迫した表情でじっと注視していた。

 ―――ピタリと影の動きが止まった。


「あれぇ~~?なんでこんなとこで火が燃えてんだ~~?」


 聞こえてきたのは拍子抜けするような呑気な声だった。…しかし、月音はこの声に聞き覚えがあった。拍子抜けするどころか、額に汗を滲ませる。


「まさか…!いや…なんで…」


 2人の視界に映ったのは、不思議そうに炎を見つめる赤渕の姿だった。


「…どうしてあいつが」


 月音は動揺を隠せなかった。このアジトにいるのは青塚一派。魔女狩りと関係を絶っているはずだ。赤渕は青塚一派に属していないはず…だと思っていた。


「お?」


 すると、赤渕がようやく2人に気付いて体を向ける。


「この火~~、つけたのおまえら~?」


 相変わらず呑気な声で尋ねてくる赤渕。これが本来の態度ではないことはわかっている。いつ豹変するかわからないから、月音も暁美も慎重に構えている。


「そうだ。私もおまえに質問したい。どうしてここにいる?」


「え~~おれぇ~~?なんでいんだっけかぁ~~」


 とぼけた態度を取り、まともに答えようとしない。しかし、彼女らには脅しの手段がある。


 ボオゥゥゥ!!


「おわっ!?」


 突然、赤渕のそばの炎が激しく燃え上がった。突然だったので赤渕は驚いてのけ反ってしまう。


「真面目に答えろ」


 月音はジッと睨み付け、容赦のない威圧を放つ。しかし、赤渕の呑気さはそうそう崩れない。


「いやぁ~~、なんでだっけぇ~~?思い出せないなぁ~~」


 赤渕は首を傾げてうーんと考え込む仕草を見せる。本気で言っているようにも見えるし、嘘を言っているようにも見える。…掴みどころがない。フワフワと宙に浮いているような不思議な男だ。


「ん…?」


 ふと、赤渕が炎に目を向けると、炎から糸がヒュルヒュルと伸びてきた。糸は独りでに赤渕を取り囲む円を描いて伸びていく。そして――


 ボオォォォ!


 糸に炎が燃え移り、瞬く間に炎が糸を伝って燃え広がった。


「あ、あ、あちあちあちっ!!」


 赤渕は慌てふためくが、既に遅い。赤渕の周りを取り囲む炎のリングができていた。


「さぁ…答えろ。さもなくば、炎の勢いをもっと強くする」


 月音は定型的な脅し文句を口にしながら赤渕に近付いていく。身の危険を感じれば、この呑気な態度に何か変化が生じるかも知れない。


「ほんとなんだってぇ~~!思い出せないんだってぇ~~!」


 ボオォォォ!!


 炎の勢いが容赦なく強まる。


「あちあちあちっ!!勘弁してくれぇ~~!」


 ここまでしても、赤渕は泣き言を吐くだけで、ここにいる理由を答えようとしない。…これは、本当に知らないのかと思ってしまいそうだ。

 だがそんなはずがない。操られでもしない限り、自分がここにいるのがわからないなんてあり得ない話だ。もっと、もっとこの男が恐怖を感じれば……


 ピリリリリ…!


「!?」


 突如、携帯の着信音が鳴り響いた。途端、赤渕は無表情になって懐から携帯を取り出した。月音は怪訝な表情を浮かべる。ここは圏外のはず。だから自分たちは連絡が取れないのだ。


「もしも~し」


【私だ】


「ボスゥゥゥゥ!!さっきお会いしたばかりなのに、また連絡をくださるなんてぇーー!!」


 赤渕が一変して大声で声を張り上げる。月音と暁美はビクッとし、緊迫感が一気に上昇する。…ついにきた。例の電話だ。


「……畏まりました。死なない程度ですね」


 会話を終えた赤渕は携帯をしまい、据わった目つきで2人に目を向けた。


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