表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔女狩り少年と光の魔女  作者: 揚げパン
第5章 陰謀
107/202

第106話 暗闇の先 その1


 瑞葉の魔術のおかげで隠し階段を見つけた亮司たちは、その階段を下りて、先に続く通路へと足を踏み入れた。

 通路は思いのほか長く、月音が灯す火でも先まで照らすことができない。

 すると、亮司が突然足を止めた。それにつられて他の4人も立ち止まる。


「どうした?」


 何かあったのかと月音が少し不安そうに尋ねる。


「…いや。何もない」


「何もないなら立ち止まらないでよ!」


 理由なく立ち止まったことに瑞葉が不服そうに文句を言う。彼女は怖がりなので、亮司が立ち止まった瞬間、心臓がびっくりしたのだ。


「瑞葉しっ…!」

「あっ…」


 しかし、狭い通路内で瑞葉の声が響き渡ったので、暁美が人差し指を口に当てて注意する。瑞葉は慌てて手で口を隠した。

 一方、亮司は立ち止まったまま、注意深く辺りを見回していた。


「何もなさすぎる…。階段を下りてからここまで何もなかった。階段を隠すくらいだから、仕掛けの1つや2つあっても良さそうなもんだが…」


「逆に、階段は絶対見つからないって自信があったんじゃないかしら?」


 美雨が考えを述べる。確かにそれも考えられる。青塚は自分の能力に絶対的な自信があるのだろう。地下への階段は絶対に見つからないと思っているから、その先が手薄になっているのだろう。


「そうよ…!そうに違いないわ…!逆にチャンスよ!青塚は今油断してるってことでしょ?」


 瑞葉が声量を小さくしつつも力説する。仕掛けはあるより無い方がマシだと思っているし、何よりさっさとこの薄気味悪い空間から抜け出したいのだ。


「おいおい銀髪、それこそ油断ってもんだぜ。あいつら相手なら警戒するに越したことはないんだからな」


 亮司は警戒心を緩めようとはしない。もしかしたら、仕掛けがないのは油断を誘うための罠かも知れない。今は敵のアジトの中。用心深いのは決して悪いことではない。


 ピシッ…!


「…?なんだ?」


 その時、何かひびが入ったような不吉な音がした。5人はなんだと思って辺りをキョロキョロと見回す――――次の瞬間


 ピシピシピシ…!!


 足元の地面にひびが走ったのだ。5人が驚愕するのも束の間、地面が大きく砕け、飲み込まれるようにその下へと落下してしまった。




 亮司はゆっくりとまぶたを開いた。そして、上半身を起こして辺りを見回すが、真っ暗でなにも見えない…。亮司はスマホをポケットから取り出してライトを照らした。

 他の4人の姿がない…。いるのは自分だけだ。どうやら4人とは別のところに落ちたらしい。

 上部を照らすが、光が届かず闇が見えるだけだ。なかなか深いところに落ちたようだ。単なる落とし穴にしては深すぎると思いながら、辺りを照らすと、先に通路が続いているのが見えた。亮司は立ち上がり、足をその通路の方へ向けた。


「油断すんなって言ったそばからこれだもんな…。まいるぜ…」


 自分の発言が呪われているのかと思ってしまうくらい、絶妙なタイミングでことが起きてしまった。後で瑞葉から文句を言われるかもしれない……と、亮司はささいな心配を抱きつつ、足元のおぼつかない通路を進んでいく。


「…ん?」


 少し進むと、光の先に何かが落ちているのが見えた。まだ一部分しか見えず、なんなのかわからない…。亮司は確認しようと近づいて行く―――。


「なっ!?」


 その全貌を見た瞬間、亮司は衝撃で思わずのけぞってしまった。それは――明日莉の死体だったのだ。悶え苦しんでいる表情に、亮司は直視できずに吐き気を覚えてしまう。

 明日莉とは以前に出くわしているので顔を知っている。彼女が魔女同盟を裏切って青塚と内通していることも、月音たちから聞いて知っていた。推測しかできないが、彼女が青塚に助けを求めた時に殺害されたのだろう。


「くそ…!あの野郎……容赦ねぇな…!」


 亮司は青塚に対して怒りを覚えつつ、強い焦りと不安が込み上がってきた。




 月音は暁美と同じところに落下し、2人は目を覚ました後、先に続いている通路を進んでいた。

 暁美が糸を通路の壁に向かって発現させた。糸は壁伝いに奥へと伸びていく。続いて、月音が掌をかざして炎を放った。炎が素早く糸を伝っていく。暁美の糸はただの糸ではないので炎で焼けることはない。炎が奥まで届くと、連続的な灯りができあがった。これで抜群の視認性が確保された。


「みんな無事かな…」


 暁美が顔を俯かせ、不安の声を漏らす。


「心配いらないよ。みんな強いから…。今は出口を探そう。もしかしたら、志乃達がいるところに繋がっているかもしれない」


 月音は暁美を元気づけつつ、前を向いて足を進めた。




 美雨と瑞葉も2人で通路を歩いていた。瑞葉がスマホのライトで先を照らしていたが、彼女を絶望させる事象が発生してしまう。…突然ライトが消えて真っ暗になったのだ。


「なっ…!?電池切れ!?」


 瑞葉は驚愕の声を上げた。光磨のスマホと電話を繋げたままだったのが原因なのか、電池が切れてしまったのだ。これでは通路を照らせない。

 しかし、すぐに美雨がスマホを取り出してライトを照らした。


「大丈夫よ。まだ私のは電池あるから」


「よかった~。もし1人だったら…」


 想像するとゾッとする。美雨がいたから良かったものの、運悪く1人だったら…身動きが取れなくなっていたところだった。落下したときは偉そうに言っていた亮司を強く恨んだが、今は神様に幸運を感謝する気持ちでいっぱいだ。

 その後、美雨のスマホのライトを頼りに、2人は先に進んでいった。


 ピチャ…


「ひゃっ!?」


 突然、瑞葉の頭に水滴が落ちてきて、彼女はびっくりして思わず頼りない声を上げてしまった。ただ単に天井に滴っていた水が落ちてきただけなのだが、お化け屋敷にいる感覚の瑞葉にとっては驚くのに十分だった。

 瑞葉の驚く声を聞いた美雨は、すぐにライトを天井に向けた。


「びっくりした…。ただの水滴か…」


 顔を上げて、天井に水が滴っているのを確認すると、瑞葉はホッと安堵の息をついた。

 ここは地下深いので、どこからか地下水が浸みだしているのかもしれない。足元をよく見ると、小さな水たまりができていた。

 天井の水の表面張力が限界に達し、再び水滴となって落下した。美雨がふとその水滴に目を向けると、水滴の形状がいきなり針のようになったのだ。


「瑞葉!!危ない!!」

「えっ…?」


 突然美雨が鬼気迫る表情で叫び、瑞葉を押し倒した。針となった水滴は瑞葉の頭には当たらなかったが、美雨の腕に突き刺さってしまう。


「うぐっ…!」

「み、美雨!?」


 押し倒されたかと思うと、次の瞬間、美雨の腕が出血していた。瑞葉は突然のことに頭が追い付かず、混乱していた。

 美雨はすぐさま蝶を一匹発現させ、腕に刺さった水の針を取り除いた。針は小さいとはいえ、傷をつけるには十分だった。


「瑞葉離れて!能力者よ…!水滴の形を針にして攻撃してきた…!」


 美雨の言葉を聞いて、瑞葉はようやくことを理解した。能力者が攻撃をしかけてきたのだ。

 瑞葉はすぐに美雨の手を引いてその場から離れる。


「美雨!大丈夫!?」

「えぇ…。ちょっと切っただけよ」


 瑞葉が心配そうに声をかけるが、美雨は大丈夫だと告げ、数匹の蝶を傷口に集結させ、絆創膏のようにして止血させる。

 瑞葉はホッと安堵するが――――次の瞬間


 ピシッ!


「うっ…!」


 瑞葉の頭に鋭い痛みが走った。彼女はハッとする。さっき頭に落ちた水滴が針になって頭を刺したのだ。

 瑞葉はすぐに手で頭に付いた水滴を払い落とすが、既に出血していた。


「待って。今蝶で止血するわ」


 美雨はすぐに数匹の蝶を瑞葉の頭に向かわせる。―――その時


 ビシャアアァァ!!


 突然、そばの水たまりから水が生き物のように飛び出してきて、蝶を粉砕してしまったのだ。


「なっ…!?」


 美雨は驚愕する。一瞬だった…。一瞬ですべての蝶が破られてしまったのだ。

 飛び出した水は地面に落下して、別のところに水たまりを作った。


「美雨!!ここから離れるわよ!!」


 瑞葉は美雨の手を取って素早く通路の奥へと走り出す。それに呼応するように、水たまりが2人を追いかけだした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ