表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

今日から学校と仕事、始まります。①莞

人によりけり

作者: 孤独

与えられた能力を選べるならしっかりと考えたいものだ。

生きている者達は個性という差別を浴びている。



「努力を無駄にする魔術が得意です」


まだ魔法少女と呼ばれる頃の、シィエラ・レイストルが得ていた魔術は”無駄名努力”と呼ばれる代物。

その名の通りの能力と変わりない。

彼女はこの魔術が圧倒的に秀でており、彼女もまたこの能力で得られる快楽を望む傾向もあった。

他者の努力を無碍にする、心が歪んでいるとしか思えない能力が才能によって与えられたらシィエラに罪はあるだろうか?



サイテーだ。

努力を踏み弄る奴は死んでしまえ!



世界がそうなっていったのは実はまだ先のことだった。

魔術の効果がなんであれ、シィエラが自分のために使ったのは間違いない。



「私に暴力を振るうからでしょ!多人数で、武器を手にとる奴等がいて、身を護らない女がいると思うの?」


身を守るためや、


「あなた達男子達のやっている事の方が、よっぽど歪んでいるわね!覗きを続けるなら死ぬ?」


自分が認めた悪という存在を滅するためだ。

滅ぼす手段がサイテーであるが、そもそもの原因はシィエラが認識してしまった悪側にある。

やがて、シィエラが世界屈指の魔法使いになる頃。

シィエラは”無駄名努力”を鍛え上げ続けた。人間だけに限らず、動植物にまで能力の実験を続けた。彼女は人を陥れる快楽に強く目覚めた。とてつもない快感であったのは、何よりもシィエラが努力してきたことによる成功であったから。なによりも分かりやすく面白い光景になるからだ。



シィエラもまた性根から腐ってしまった。当たり前なのかもしれなかったが……。

人を陥れてまで強くなりたいか、などと世界から批難されるばかりだった。



だが、この時にシィエラは世界にこそ問いかけた。



「私の努力を超える人はいないの!?私はただ、人の努力を無駄にするだけ!あなた達の努力が足りないから私は不満なのよ!私より努力してればそれほど努力は削られないんだから!あなた達こそ、間違っているんじゃない!?」



シィエラの魔術は危険だった。

歴戦の戦士や、100年も生きてきた魔術師達、血に飢えていた魔物、国そのものまで。

世界中がシィエラの命を狙ったのだ。



「私が危険人物!?嘘言わないでよ!あんた達の方がよっぽど危険で馬鹿な奴!」


無論、狙われたシィエラは降伏せずに真向から迎え撃った。それは自分の力量に自信があるからであり、敗れればそれまでの努力であったと受け入れられる。


「自分の弱さを人のせいや環境のせいにして生きていく連中に、私の努力が敗れるわけないでしょ!」



人によるものだろう。

なによりも恐ろしいのは双方の感情。世界はシィエラを恐れて、シィエラは世界の回答に憤怒して起こった戦争。

どちらも悪いとしか言えない。根本で悪いのはお互いだけであった。



「大勢で囲んだ程度、ちょっと努力した程度、工夫した程度の生き甲斐で私が満足するとでも?沢山努力した面が崩れ落ちるのを眺めたいわ」



シィエラはこの世界が嫌いだ。



「そもそも、あんた達!!もっと自分で努力をしなさい!!」


シィエラは怪物であるからだ。努力を怠らなかった怪物。世界に不釣合いな怪物。

世界はシィエラに敗れ去り、シィエラもまた自分の努力と足を揃えられる存在を完全に失ってしまった。

それでもなお、彼女は”無駄名努力”を鍛え上げていた。まだ見ぬ怪物に会えることを信じながら努力を続けた。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ