本当の事を言われて怒っているのですか?
近々お義理兄様になる人に喧嘩売っちゃいました☆
えへっ☆
……なんて、星印までつけて、心の中でおどけてみてもこのピリピリとした空気が緩和されるわけでもない。
まあ、売ってしまったものはしょうがないわ。
どうせこの先長い付き合いになるのだからきっといつかは彼とぶつかる運命だったのよ。
それなら、『タンタル国のセレン王妃』より『アルゴン国のセレン姫』の方が相手が手を出し 辛い分こちらが有利なはずよ。
まあ、彼の場合ありえないと思うけれど、もし暴力でも振るわれた場合……『アルゴン国のセ レン姫』を傷つけた場合、国際問題にしてあげるわ。
王妃になってからは簡単に実家が口出しを出来なくなるでしょうけれど、今なら介入し放題。
ただでさえタンタル国は今回の婚姻の事で非難される立場にあるのだからちょっとでも問題が 起きれば難癖つけて追い込みを掛けてあげる。
不穏分子の芽は潰しておく……いえいえ、少々牽制してもなんら問題はないはずよね。
私は凍りついた空気の中、口を開く。
「本当の事を言われて怒っているのですか?」
さらに喧嘩を売ってみた。
さて、どう出るかしら。
それまで、真剣な表情で私を見ていたゼノン王子がフッと表情を崩したかと思うと、にこりと ……いや、にやりと笑った。
どす黒いオーラが全身からあふれ出ているのが見えるような気がする。
気のせいか背筋がゾクゾクとして、手のひらに嫌な汗がじんわりとにじみ出てきた。
私の今まで培ってきた勘が危険を告げている。
あなたはどこの大魔王よ!
しかし、ここで負けてなるものか!
ふふふ、この程度の事では私はひるまないわよ。
気を抜けば今にも逃げ出したくなる両足にぐっと力を入れ私はその場に踏みとどまった。
これでも生まれたときから伏魔殿の後宮で過ごしてきたんだから。
こんな簡単に人を威圧できるなんてさすがだけれど、私は威圧されただけで引っ込むような柔 なお姫様じゃないんだからね!
正面から受けてたつわよ!
そうして、見つめあうこと数秒。
「君、なかなか面白いね~」
「はい?」
このゼノン王子の言葉で周りの空気は一瞬にして和らいだ。
ピリピリした空気はまだ少し残っているものの、あのどす黒い雰囲気は一気にひっこめられた 。
何?何なの??
「クロムとはもう話した?」
なんだかゼノン王子の口調が軽くなっている。
「いいえ、まだ……」
彼の切り替えについていけず、少ししどろもどろで答える私。
こんなんじゃいけないわ。
もっとシャキッとしなくちゃ。
「明日、あいつに時間を作らせるから部屋で待ってて」
「え、あ、はい」
あの、わけが分からないのですが?
ゼノン王子、さっきまで怒ってたわよね?
その後、何事もなかったかのように私は無事部屋まで送り届けてもらった。
なんだか、相手のペースに乗せられた感があるのは気のせいかしら?




