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婚約者候補?

 「城下ではゼノン王子とサマリ嬢の噂で持ちきりですか?」

 クゥからもらった飴細工をしまった後、私はリンからの報告を聞いていた。


 飴細工はもう一度箱に入れて保管しておく事にしたの。

 これが今現在の一番良い保存方法だと思うわ。

 できれば、いつでもすぐ見えるように飾りたかったのだけれど、いい方法思いつかなかった。

 何かいい方法が思いつくまでは箱の中で我慢よ。


 と、まあ、飴細工のことはとりあえず置いておいて、私はリンの話に首を傾げた。

 城下では、あちこちでゼノン王子とサマリ嬢の話で一杯だったと言うのだ。


 「はい、どこへ行ってもその話題で一色でしたね。お二人の恋の話から昨日の事までは人々の間で詳細に語られていましたよ」


 リンがいうには、ゼノン王子とサマリ嬢の恋物語が面白おかしく人々の間で語られているらしい。

 なんでも、大国の姫に見初められたゼノン王子(うちはそんなに大きな国じゃないんだけどな。一応タンタル国よりは大きいけれど)とそのゼノン王子の弟の婚約者であるサマリ嬢との間に芽生えた複雑な恋。(いや、複雑って話でもない気がするわよ)お互いに決められた相手がいるために惹かれあいながらもなかなか本心を口に出来なかった二人が王子の結婚直前になってお互いの気持ちに素直になり、何というか、くっついちゃったと言うような話だ。

 それで、愛するサマリ嬢のためにゼノン王子は王位継承権も大国の姫(だから、大国じゃないんだってば)との結婚を棒に振ったと……どこかの三文小説かしらと言う内容だけれど、こういう話題……王宮の恋愛スキャンダルの噂は人々の一種の娯楽みたいなもので、面白おかしく尾ひれをつけて語られるもなのよね。

 それが真実であろうと無かろうと。

 まあ、それで、真実の愛(?)を貫いたゼノン王子とサマリ嬢のロマンスが巷の人々、特に若いお嬢様方に大変受けているらしい。


 それにしても、昨日の事ももう噂になっているの?

 確かに公式な場であんな事をやらかしたのだから、人々の口伝いに昨日の事が広まってもおかしくは無いのだけれど。

 それに、ゼノン王子は見目麗しいので、国民にも人気のある王子らしいから、噂になりやすいというのも分かるわ。

 それでもやっぱり……。


 「それと、さらに、一人ですが吟遊詩人がすでにこの一連の事を唄にしているのも聴きました」

 リンの情報に、私は眉を寄せた。

 「その唄には昨日の事も?」

 「ええ」

 吟遊詩人がもう唄に?

 確かに彼らは世間の流行に敏感で、巧みにそれを唄に取り入れるのだけれど、それでも早すぎる気がする。


 「昨日の事の話はどの程度事実に沿っていましたか?」

 「ほぼ、事実どおりかと。ゼノン王子が姫様との結婚を断り、代わりにクロム王子が姫とご結婚する事になったと……ただし、この話題のメインもあくまでゼノン王子とサマリ様です」

 「その内容はやはりゼノン王子とサマリ嬢にとって好意的ですか?」

 「はい」


 リンの返事を聞いて私は確信した。

 何てあからさま過ぎるの。

 これは、どう考えたって……。


 「誰かが故意に噂をばら撒いてますね」


 私の言葉にリンは小さく頷いた。






 しばらくすると、ルトがひょっこりと帰ってきた。


 「ひたすら混乱しているようです」


 彼女が持ってきた報告はこのような簡潔なものだった。

 彼女が帰ってきたのは夕食も食べ終わってのんびりくつろいでいる時。

 クゥからの贈り物を箱から出して鑑賞しながら幸せに浸っている時だった。

 今まで姿が見えないなーと思っていたけれど、ずっと情報収集していてくれていたのね。

 彼女が言うには、この城の侍女さんと仲良くなって話し込んでいたとか。

 新しい環境に来て、話し込めるほど人と打ち解けられるとは、さすがルトだわ。 

 ルトは小柄な体に柔和な顔だちをしているから初対面の人間でもあまり警戒されず近づく事ができる。

 物腰も柔らかいし、話してみると人懐っこさも兼ね備えているから情報収集にはもってこいなのよね。


 「さすがに一日ではあまり詳しい事は探れませんでしたが、皆、一様に驚いているようです」


 まあ、そりゃあ、皆驚くわよ。

 私も驚いたし。

 もし、こうなる前兆があって人々が今の事態を予測していたら驚かなかったかもしれないけれど、皆、私と同じく寝耳に水だったのねきっと。


 「上の方の方々の事は分かりませんが、下の方の人々は、セレン様とゼノン王子が結婚すると言う事をまったく疑っていなかったようです」

 「……そうですか」


 ふむ、予想通りと言うか何というか、やっぱり一日そこそこじゃたいした情報は入ってこないわね。

 私は心の中でうんうんと頷いた。

 リンが行った城下では異常に噂が出回っていたりして情報がいろいろ飛び交っていたけれど、普通はこんなものよね。


 「ああ、ですが、ちょっと小耳に挟んだ話では、昔サマリ様はゼノン王子の婚約者候補だった事があるとか無いとか」

 「婚約者候補?」

 「ええ、もともとクリプトン家は先代国王の外戚で王家とは縁が深いのですが、幼少のころよりサマリ様は王子二人と交流があったようです。その中で、そのような話が出たとか出無かったとか」

 「へー」


 何でそのときにゼノン王子の婚約者にならなかったのかしら。

 そうしていれば、今こんなことにならなくてすんだのに。

 そりゃあ、王太子の結婚相手ともなると国内の誰かと結婚するよりも、私みたいに他国と婚姻関係結んだ方がいろいろと利益があるからそっちの方がお得な気がするけれどもさ。

 結局結婚するならば、初めから彼女を選んでほしかったわよ。


 ルトの報告を聞きながら、その日のは終わっていった。





 さて、夜が明けて、なんだかんだでこの国に来て三日目に突入よ。

 私としてはそろそろクゥと話をしてみたいんだけどなー。

 でも、今って忙しそうな気もするし、うーん。

 一応、打診だけでもしてみようかな?

 昨日の贈り物のお礼もいいたいし……。


 だめもとでクゥに会いたいむねを伝えてもらうようにした。

 さて、今日はどうしようかな。

 昨日みたいにテルーと時間を潰そうかしら。


 なんてぼけーっと一人で考えていたらテルーが慌てて部屋に入ってきた。


 「セレン様!セレン様!昼食の意お誘いが入りました」


 昼食のお誘い?

 え!もしかして!


 「誰からですか?」


 私は期待に胸を膨らましてテルーに問い返した。

 クゥ?クゥなの?

 会いたいって言う伝言が届いたのかしら?

 やっぱり、結婚するんだからそろそろ会ってもおかしくないものね!

 そうよ、いくら忙しかろうと、このまま結婚まで未来の妻に会わなくて良いなんて分けないわ。

 ああ、クゥに会ったら何を話そうかしら。


 なんて、心の中で盛り上がっているなか、テルーの口から思いもかけない名前が飛び出した。


 「サマリ様からのお誘いです」



 えっ

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