第23話 これって、やっぱりデートっぽくないですか!?
私たちは手を繋いで花屋、果物屋、魚屋、肉屋まで、いろんな店を覗いて回った。
わかったことは、レイって顔見知りが多くて、気さくに喋る十代の男の子ってこと。
私が数日見ていた仏頂面のレイは、何だったのだろう……
「おや!?レイじゃないか!」
威勢のいいオバサンの声がして、見るとパン屋の恰幅のよい女性がこちらに向かって、手をブンブン振っていた。
「ああ、マーガレット」
ん?あの大きな声で恰幅のよい、白いエプロン姿のオバサマは、マーガレットというお名前なのですか?
私の持つ、白い花に似た可憐な名前のマーガレット像と、豪快そうなパン屋のオバサマとのギャップを感じてしまったけど、私も自分の名前の“花園美月”のキラキラしたイメージに、いつもギャップを感じていた。
花の園に美しい月……学生時代、どちらかと言えば陰キャ組だった私には、本当に眩しくて、名前負けしちゃってて自分の名前を言うのが恥ずかしかった。
ということを思い出し、心の中でマーガレットさんに謝罪し反省した。
私たちは、パン屋の店先に立ち寄る。
「レイー!久しぶりじゃないか、どうしてたんだい?」
「あ…」
「元気だったかい?ま、あんたは元気だね!」
「う」
「あんたの取り柄っちゃあ、顔と丈夫なことくらいだもんね」
「おぉ…」
「で、今日は恋人連れてなのかい。ようやく可愛い恋人さんが出来て良かったじゃないか!」
「いや…」
「レイはやんちゃで口下手だけど、根は優しくて、いい奴だから!あたしが保証するよっ!」
マーガレットさんは、私に向かって、バチンって音が聞こえそうなウインクをしてくれた。
「ちょっとは喋らせろよ!…ったく。相変わらずなんだからっ」
レイが呆れて苦笑する。
「大体、彼女は恋人じゃない。客人だ」
「なんだい、恋人じゃないのかい。そりゃお嬢さん、悪かったねえ」
「あ、いえ」
笑って、大丈夫と手を振る。
「そして、やんちゃは余計だろ」
レイがふてくされた顔をして言う。
「なに言ってんだい。やんちゃだよ。なんなら子供の頃のあんたはさ、」
「あああ、わかったって」
慌ててレイは彼女の話を遮った。
彼がやんちゃって、想像つかないんだけど……
それから私たちは少しマーガレットさんと話を楽しんで離れた。
別れ際、マーガレットさんが「また二人で来なよ」と言ってくれたのだけど、この世界には長く居れないし、何て答えたらいいのか分からないでいると、レイが「ああ、そうしたいな」って答えてくれた。
彼が否定しないでくれたのが、なぜか嬉しかった。
少し歩いていくと、甘い美味しそうな匂いが漂ってきた。
某テーマパークを思わせる、美味しいお菓子の匂い。
目をさ迷わせて、屋台に並ぶチュロスかドーナツのような揚げたお菓子を見つける。
「ああ、あれ」
私の視線の先に気がついたレイが教えてくれた。
見た目はチュロスのように長いのに、ドーナツって
言うらしい。一応、丸いのも売っている。
「食べてみる?」
「え?いいの?」
「コロケのお礼」
コロケ……
覚えててくれたんだ!
正しくはコロッケなんですけど……
訂正する前に、彼はチュロスっぽいドーナツを買いに行ってしまった。
レイは手に二本持って戻ってきた。
「俺も好きなんだ。子供の頃、時々買ってもらって食べてた」
そう言ってパクっとかぶり付いた彼は、なんだか嬉しそう。
紺青色の瞳がキラキラして可愛い!なんて反則です。
ちょっとドキドキしてしまった自分を誤魔化すように、彼からお菓子に視線をそらす。
私もカプッと食べてみる。
うん!ずいぶん砂糖たっぷりめのチュロスだ!
レイと私は木陰のベンチに座りながら、チュロスにかじりついていた。
アクセサリーや玩具、いろんなお店を見て回ったのだけど、今まで仕事っぽい感じがなくて、すっかり忘れていた。私は全然楽しませて貰ってるのだけど、良かったのかな?
「あの、今日のお仕事って、街の様子を見て回るって、こんな感じでいいの?私は思いっきり楽しませて貰ってるのだけど……」
「は?」
レイがちょっと呆れた顔を見せる。私は思わず焦って、背筋を伸ばした。
「え?あ、このあとに仕事でしょうかっ」
「……あんたって、めちゃくちゃ仕事したい人?」
「いえ、めちゃくちゃ仕事好きじゃないです、どちらかと言えば、家でゴロゴロと小説読んでるか、ゲームしたりアニメ見てるほうが好きです」
「………………」
二人見合ったまま、沈黙が流れた。
あ、つい!本性出してしまった!?
私がマズイと思って、何か言って取り繕わなくちゃと焦ってると、彼がプッと吹き出した。
「ごめん、聞いてなかった?今日、俺非番になって、あんたを街案内することにしたんだ」
「え?じゃあ……」
「仕事じゃない」
「あ、そうだったんだあ。よかったぁ~」
私は一気に休日モードになって笑った。
「私、ふつーに楽しんじゃってたから!」
そう言って、レイを見た。
彼のまっすぐな視線とぶつかる。
ん?
私たち……。
いま、見つめ合ってる?
レイはふっと目を反らして、クスっと笑った。
「そっか、楽しめてるようで良かった」
なな、なんか、これ、デートっぽくないですか!?




