表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ポンコツAIスイと動物たちと往く、未来都市破壊日記。  作者: 猫の勇者
《1章:果実都市とレモンの魔王 》
2/7

ポンコツAI、出会う Ⅱ

 

(……誰かの声は、ワタシには届きませんでした)


  ガシャッ……。


  音がしました。(なんだろう?)

  首を横に向けます。ジャンクの中には、メカニカルなジェムットさんが横たわっていました。

 瞳は真っ暗で。完全に、壊れているんです。


 ボディにはヒビが入り、手足はおかしな方向に曲がり、

 お腹のクリスタルは抜き取られています。


 ワタシには価値がないから、クリスタルが盗られなかったのでしょう。

 だからこそ、生き延びてしまったんです。


 こんなことなら、盗ってくれればよかったのに……。

 そうすれば、ワタシも世界の役に立てたのに。


 オービタの水色の死神(デビルレモン)

 未来都市(シトラスレイン)家電撃墜王。それが私——

 ジェムット、スイの通り名でした。

 見た目はアンドロイド。カワイイ(自称)女の子です。


 能力値は小学生以下。犬より役に立たない。




【後悔は――ありません。】ワタシには、この世界はまだ、早すぎました。


【後悔は、ありません。】輪廻転生は、信じていません。


【後悔は……】



 ……独身の、レモネスピンク(29)が心配です。



 ワタシは、目の前のジェムットさんと手をつなぎました。

 きっと、このジェムットさんは、世界の役に立ったんだろうなぁ。


 ふと、記憶の中のレモンが香りました。


 だめだ――、思い出すな!!スイ!! 私はもう、終わりなんだ!!!

 あの世(ジゴク)には、レモンの木はないんだ!!



(お~~い、スイ! ワシじゃ、ワシ!

 落ち着いて、システム音に、耳を澄ませるんじゃ~~)


 その時ワタシは……

 搾りたてのレモンジュース。

 一気に飲み干した時の、その「エクスタシー」を思い出してました。


 博士はパーツが酸化すると、見え見えな嘘をついてました。

 きっと、博士もレモンジュースを狙っていたんでしょう。


 ―—なぜだか急に、博士のことを、思い出しました。



 でもやっぱり、

 ワタシはレモンパイが一番です。

 ワタシは、レモンパイの為に生まれてきたんだって、魂がそっとコアに囁くのです。


「うっ……」


 チガウ。泣いてなんかいない。これは、海水だ。

 ワタシはもう、ダメなんだ。


 煤で穢れた手で目をこすり、そっと目を瞑りました。

 この目ももう、必要ありません。


 ワタシはレモンパイが食べたいだけなのに――

 どうして、邪魔をする? だんだんと、怒りがこみ上げてきました。


 その時でした。


「あの男」が、現れたのは――


 運命の相手。

 なんて言ったら、照れちゃいます。

 当時の私の、命綱。復活した、パイの供給源(ライフライン)でした。



 けれどそれは、

 後に後世に名を残すことになる――

「名マスター」と、「名ジェムット」の出会い。


(今でも信じられないけれど……)


 笑って泣いて。


 これは、ポンコツAIが、「〇〇」になるまでの奇跡の記録。


(唐突かもしれません)


 でもこれが、私——

 スイとマスターの、あの日々の、懐かしき成長譚なのです。


 もう少しだけ……、私の、昔話にお付き合いください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ