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第八話 逃げ場がなくなりました

 放課後、生徒会長室に呼ばれてかと思えば、そこにはアウレリアス先輩とシルヴァリアス先輩が待っていた。

 その息を飲むような緊張感から、ただ生徒会の一員として呼び出されたのではなく、別件で呼び出されたのだと感じ取った。


 用件はアウレリアス先輩が伝えるらしい。

「楽にしろ。別に取って食おうという話ではない」

「よかった」

 「いろいろと口に出てるぞ」とシルヴァリアス先輩が頭を抱える。剣呑な雰囲気におびえていたのだから、息をつくことぐらい許してほしい。


「本題に入る。お前の魔力量が聖女級と認められたことだが、国王陛下がお前に会いたいと言っている」

「え、私なんかに?ただの一平民ですよ。そんな謁見だなんて」

「たしかにお前のその様子では、なにか粗相をしかねんな」

 がははと笑うアウレリアス先輩はいつもの調子に見えたが、それは一瞬のこと。すぐにまじめな調子に戻る。


「これは国王陛下直々の王命である。従わねば──最悪、家族もろとも死刑だ」

「わ、わかりました!う、受けます!」

 さすがに死刑にはなりたくないし、何の罪もない家族を巻き込むのも申し訳なさすぎる。てかこのことお父さんやお母さんにも話せていないのだ。そこに国王陛下への謁見など賜ったと聞けば卒倒するだろう。どう伝えたものか。


「その様子、まだ家族にも話しておらんようだな」

「それはそうだろう。この短期間に様々なことがあったからな」

 アウレリアス先輩もシルヴァリアス先輩も意外にこちらのことに配慮してくれている。そこは大変ありがたい。


「ともかくだ。明日、用意しておけ」 

「はい……」


 用意しておけと言われても何をすればいいのだろう。

「あの、服装は制服でいいんでしょうか?」

「ああ、それでいい」

「馬子にもしようと言うではないか。見繕ってやろうか」

「へっ、」

「アウレリアス。あまりからかうな」

「いいではないか。ちょっとした余興だ」 

 余興に使われるこっちの身にもなったほしい。アウレリアス先輩にとって私はちょっとした暇つぶしのおもちゃなのかもしれない。


 生徒会室を出て、待っていたのはクロードとリアム先輩だ。クロードは特に心配そうにして、何かあったのか尋ねてくる。驚くだろうなあと思い、口にした。

 すると、「やはりか」と意外や意外、一言で済まされた。首を傾げているとクロードは咳ばらいをし、弁解した。

「予想はできていたよ。聖女と同じ程度の魔力量を持ち、光魔法を使う。まさに求めていた人材が現れたわけだ」

「求めていた?」

 

 私が頭に疑問符を浮かべていると、リアム先輩が間に割って入ってくる。

「聖女はそもそもこの国の建国にかかわっているから、求心力をさらに強めるのにいいってわけ」

 私には政治的要素はよくわからないけれど、とりあえず、私が望んでもいないろくでもないことに巻き込まれかねないことはなんとなく悟った。


 謁見の日は明日と聞いて、私はお父さんとお母さんにこのことをどう話そうか考えつつ、クロードと家に帰ると家前には大きく豪華な馬車があった。その馬車に飾られている紋を見る限り、国王陛下からの使いであることは明白だった。

 周囲には多くの人が集まっており、遠巻きに私の家を眺めていた。

 

「マリアちゃん、クロードくん、なんかあったね?」

「ああ、サリアおばさん」

 近所のおばさんが私に話しかけてきた。様子を見るにとても驚いている。こんな平民街に国王陛下の使者が訪れるなんてありえないことだから当然のことなのだろうけど。

 

 私がどう説明したものやらと考えていると、使者の方を見送るために両親が家から出てきた。

 私とおばさん、クロードだけではなく、あつまっていた人たちも膝をついた。

 見るに使者はお偉いさんと近衛兵の方だった。

 

 民衆の中に私を見つけたお偉いさんは私に駆け寄って顔を見せるように言った。

「おおこれはマリア殿。ちょうど帰ってきておったか。われは国王陛下の使者である、ウィンストン公爵家のウィリアム・ウィンストンである。今しがた、そなたの父上と母上に国王陛下にご拝謁する機会を賜った旨を報告しておったところだ」

 

 その言葉を聞いた民衆は口々に、「マリアちゃんが?!」、「なんてことだ!?」なんて驚嘆している。そりゃそうだ。私はただの町娘で通っている。

「ともかくだ。明日朝、迎えの場所を寄こすので準備しておくように」

「はい……承りました」

 

 用件を伝え終えたお偉いさんの乗った馬車が遠くに去っていく。そこでようやく民衆も私もクロードもお父さんとお母さんも肩の荷を下ろした。

 その後は町のみんなによる問い詰めタイムが始まった。

 何があったのか。なぜ私が国王陛下に謁見することになったのか。

 

 ようやくみんなの質問攻めから解放されるころには日は暮れていた。


──────


 国王陛下への謁見の件については私が話す手間は省けたのだが、両親からも先の件で何が起こっていたのか尋ねられた。

 私自身もまさか光魔法が使えてそれが特殊で、その魔力量がかつての聖女に匹敵するだなんて、今日初めて知ったのだ。本当には説明には困った。

 

「ともかく、お前が大変なことに巻き込まれていることはわかった。だが、これからも父さんと母さんはお前の一番の味方だからな」

「そうよ。なにかあったときは頼るのよ」

 そういうお父さんとお母さんはきっとこの世界でもできた大人なんだと思う。


 ともかくその日は落ち着かずに眠ることができずに次の日を迎えた。


 

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