第七話 私の魔力が聖女級でした!?
魔法基礎学教授による講義が一通り終わり、入門編を履修した。四大属性と、光属性と闇属性の関係性を一通り理解できた。
とくに私が使える光属性はめずらしく、他の四大属性魔法を増幅することや、すべての魔法を吸収してしまう闇属性に唯一対抗できる手段だということも理解した。
光魔法の使い手もとても希少だということも、だ。
今日はそんな中で、選定の儀を行うことになっていた。
そもそもアルカディア王立魔法学園は魔法士やそれに類する職業になるための高等教育機関であり、選定の杖と魔鏡が認めた生徒しか通えないらしい。
私とクロードは選抜組と呼ばれ、選定の杖と魔鏡によって選ばれた生徒である。
もう一方は一般組と呼ばれ、魔力を持っているものの入試によって選抜された生徒である。
今日の選定の儀は、正式にどの魔法士として勉学に励むか決めるための、重要な魔力の属性と量と質を測る儀式だ。
私やクロードだけではない。ほかの新入生も参加している。
さらには生徒会メンバーである先輩たち、顧問のヴィンセント教授や他学科の教授も参加者に並んでいた。
様々な人が見守り、静寂に包まれる聖堂。
「それでは選定の儀を始める!」
アルカディア王立という名は伊達ではなく、本来であれば学園長は現アルカディア国王陛下なのであり、儀式についても執り行うのは国王陛下自身となっている。
しかし、本日は異例中の異例。国王陛下がとある理由にて欠席されるとのことで、登壇していたのは国王代理で継承権第一のアウレリアス先輩、いやアウレリアス殿下であった。
ひとりずつ名前が呼ばれていき、選定の杖を受け取り、魔鏡の前で掲げる。そうすることで属性や魔力量がわかるらしい。
属性は大体の生徒が炎、水、土、風に分けられていく。
魔力量はSが一番上、その次がA、次にBCDEFという風に魔力量が少なくなっていく。大体の生徒はD程度。良くてBといったところだろうか。
Fランクで炎属性だと焚火程度の火を起こせるくらいだそうだ。
次はクロードの出番だ。
「クロード・ヘンリック」
「はい」
クロードは名を呼ばれて、魔鏡の前に立ち、杖を掲げる。すると、アウレリアス殿下が感嘆の声を上げた。
「ほう、土属性に適性あり。魔力量Aランクとな」
するとあたりが騒がしくなる。
「平民生まれなんだろ?」
「ヘンリック君すごいわ」
「これで秀才とか完璧かよ」
すごいとは魔法基礎学の先生も言っていたが、さすがだ。私から見ても、ほかの人と比べるとそのすごさは一目瞭然だった。
私の出番はまだだろうか。バッドエンドルートは避けたくても、さすがにこのシチュエーションにはファンタジー好きな私としてはワクワクせざるを得ない。
この前の魔法基礎学でのやらかしが脳裏によみがえる。まあ、さすがにあんなことにはならないと思うけど。
「マリア・テレジア」
「は、はい!」
私はぎこちない足取りで登壇する。
ひそひそとささやく冷やかしの声が聞こえてきた。
私は杖を受け取り、鏡の前に立った。するとどうだろうか。
目の前にステータス画面が出てきた。
属性:光属性。
魔力量:C――――
ほう、なかなか、と思った瞬間、文字の挙動がおかしくなっていく。ざざっとノイズが走ったと思いきや、それはだんだんと上昇していった。
私は戸惑い立ち尽くしていると、目の前の魔鏡に亀裂が走った。
「あぶない!」
誰かが駆け出した。
魔鏡に走った亀裂はやがて大きくなり、大きな音を立てて砕け散り、破片が飛び散った。
その光景がスローモーションのように流れていく。
あ、やばい。
そう思った矢先、誰かが私を庇ってくれた。
すごい音をたてて、床に落ちていく鏡。
私は無事だった。そう、ヴィンセント教授のおかげで。
私は彼の背に手を回す。その手に濡れた感触を覚え、私はとっさに手のひらを見た。手は血に濡れていた。
「ヴィンセント教授、だ、大丈夫ですか!?」
「これくらい平気です」
私を落ち着かせるために笑顔を見せてくれるけれど、額ににじんだ脂汗から、多少の無理をしていることがわかった。
あたりが騒がしくなる。
クロードも一目散に駆けてくる。
私は迷わず、魔法を使った。
かつてクロードにやったように。ヴィンセント教授のケガが治るように祈った。
すると私の祈りに呼応するように光があふれだす。そして傷はまばゆい光に包まれ、次の瞬間には治っていた。
「聖女の奇跡だ」
だれがその言葉を口にしたかわからないが、瞬く間にその歓声は広がっていく。
「聖女万歳!」
私が起こした奇跡じみた光景を見て、多くのものが沸き立った。
ただ一人、鏡越しに覗いたヴィンセント教授の苦々しい表情を除いて。
────
後ほど認定書がもらえた。
私はその内容に目を疑った。
そこには――
魔力量:聖女級
と書かれていた。




