第三話 生徒会室に呼び出しを食らいました
入学式──アルカディア王立魔法学園という名にふさわしく、この国の国王並びに他国からの貴賓も出席している。
その壮大さたるや。国の魔法士育成にも力が入っていることがわかる。
私は祝辞を何となく聞き、ぼーっとしながら、考え事をする。
あんな城下の端っこの街を出歩いていたともなれば大変なことなのだが、それはお忍びであったということなのだろうか。
ともかく王子のどちらかなのは間違いない。
最初は他人の空似も考えたけど、いま入学式に登壇して演説している生徒会会長──アルカディア王国第一王位継承者アウレリアス・アルカディア殿下の姿を見れば、自明の理であった。
ちなみにやはり頭上には謎の数字が見える。数字は二十とあった。
いやそこはゼロじゃないんかい!
いよいよだがこの数字の意味するところが分からなくなってきた。
「そこ、考え事か?入学式という大事な行事での態度とは思えないな」
いきなり祝辞を中断したのは副会長のアルカディア王国第二王位継承者シルヴァリアス・アルカディア殿下だった。
その指ははっきりと私を指していた。
私には逃げ場はなく、その場で起立した。
「私ですか?」
ざわつく場内。理由は簡単。そのざわつきは、ただでさえ浮き気味な平民育ちの私の態度を疎む声だった。
「君以外にいないが?」
にらみつける視線にすこし足がすくんだが、ここは委縮してもしかたない。私は踏ん張った。
「えっと、大切な話をしている最中に考え事して申し訳ございませんでした」
私は素直に頭を下げる。ここは誠心誠意謝罪するしかない。
「ほう」と、息を漏らし、にやりと笑う。そこでなぜか生徒会副会長のシルヴァリアス殿下の頭上の数字はすこし上昇する。 いやなぜに?
そこで登壇していた生徒会会長のアウレリアス殿下が咳ばらいをし、言いのけた。
「せっかくなら、お前──いや、そうだな。後で生徒会に来い。反省文を書かせてやる」
さらに場内はざわつきを見せる。
隣に座っているクロードに助けを求めるもやれやれと肩を落としている。
こうして一日目から攻略対象二人に目を付けられる始末にいたった。
─────
式の後、私はビビり散らかしながら同伴のクロードとともに生徒会室の扉をノックした。
「問題児ちゃんと地味眼鏡くん。ようこそ生徒会へ」
すらりとした体躯の、人のよさそうでいて、どこか胡散臭い笑みを浮かべた男性が出迎えてくれた。
その人にもなんとなく見覚えがあり、頭上には見覚えのある数字。
今度はゼロではなく、マイナス二十。ゼロ以下の数字があることにもびっくりだが、この人当たりのよさそうな態度を見て、この数字でもし好感度を示しているとするなら、この人が怖い。怖すぎる。
「僕の名前は地味眼鏡ではなく、クロード・ヘンリックです。しかも僕は付き添いなのにどうして把握されているんですか」
「いやー、君にはうちの会長が目をつけていたからね。平民生まれなのにその魔力量、しかも頭も冴えてるってね。そしてそこの問題児ちゃん。君もだよ」
「えっ、私も?なんで」
「そりゃあ──」と、続けようとする彼、おそらく先輩の間を割るように現れたのは、生徒会副会長シルヴァリアス殿下。
「ああ、副会長!ちょうどいいところに! あ、そう言えば俺の自己紹介してなかったね。俺はリアム・ミッドフォード。会計をしているんだ」
「私はマリア・テレジアと言います。よろしくお願いします」
「丁寧な子はきらいじゃないよ。そう言いつつ、数字が下がるのは何事だろうか。やっぱこれ好感度じゃないならなに?
「私の名前は知っているな」
「はい、シルヴァリアス・アルカディア殿下!」
「……この学び舎ではあくまでみな平等だ。呼びやすいように呼ぶと言い」
「じゃ、じゃあシルヴァリア先輩!よろしくお願いします」
「ああ」
そうして少し上がる数字。何故?
まあそんなこときにしても仕方ない。反省文を書かなきゃいけないんだっけ。
「あの、反省文はどこで書けばいいですか?」
私がそう口にすると、笑いが起こった。
シルヴァリアス先輩は口元を押さえ、リアム先輩はおなかを抱えて笑っている。
クロードはあきれているように肩をすくめる。
なぜ私は笑われているのだろうかよくわからない。
「笑わないでください」
「いや本気でそう思っていたのかと思ってな」
「反省文ごときで生徒会に呼び出しを食らうわけないでしょ」
「ともかくだ。生徒会長室でアウレリアスが待っている。案内しよう」
そうして私とクロードはシルヴァリアス先輩に従って、そのあとをついていく。
開いた扉の先、生徒会長室の執務机にゆったりと腰を下ろしまっていたのは──アウレリアス先輩だった。




