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第二話 早速攻略キャラその二?と出会いました


 もちろん両親はこのことを喜んでくれた。

 王立魔法学園は魔力適性をもつ子供が十五歳から通うことになる学校である。

 この世界で魔法の資質を持っているということは、素晴らしい才能を持っているということであり、それだけで誉高きことなのだ。

 メリットとしては高位の職につけたり、場合によっては平民出であっても爵位をもらえる可能性もあったりする。


「マリア!おめでとう」

「でも、そんな兆候あったかしら?」


 父は手放しに喜んでくれた。

 でも母の方は少し不思議に思っているらしい。


 それはそう。

 そもそも魔法が使える、なんてこと誰にも言ったことない。

 むしろなんで学園が知っているのだろう。


「クロードとだけの秘密だし、クロードが言うわけないし」

「……当たり前だろ」


 顔を俯かせ、ぼそりとつぶやくクロード。

 本当にどこからばれたのだろうか。

 え、てか、クロードの頭の上の数字がまた上振れてる!百を超えてるのはいつものことだけど。

 やっぱりこれって好感度の数値化したやつ?

 いやいや、そうだとしたらさっきので上がる理由がわからない。


「クロードも来たんだよね……」

 そういえば忘れてた。

 クロードはそもそもこの物語の攻略キャラの一人でもある。


 乙女ゲーの物語があと少しで始まるのかな。

 私が知っているのはなんとなくの攻略キャラの顔と友達の最推しである双子王子こと、この国の第一、第二王位継承者である殿下のことまで。

 内容までは知らないし、ここからどんな展開になるかもわからない。

 そもそもヒロインってどんな子だったんだっけ。

 友達は自分の名前をつけて遊んでいたし、あくまで乙女ゲー主人公は自分!っていう気分で遊んでた子だったから、ヒロインの性格とかは聞いてないんだよ。


 まあともかく、どうせモブな私には関係ないし、なんか舞台が揃いつつあるような気もするけど、気楽に行こう。


 そう思っていた。


──────


 入学まであと一週間。

 準備も整い、あとは入学式を待つのみとなっていた。

 その日は天気も良く、温かな日差しが春らしくて気持ちのいい日だった。


 母に頼まれたお使いからの帰り。

 私は不意に街路樹の方から子猫の声を聞く。

 「ミィミィ」とか細い声だったが、猫好きの私にははっきりと聞こえた。


 私はためらいもなく、その鳴き声のする方に駆け寄った。

 街路樹の植え込みに捨てられているのかと思ったが、わけが違うらしい。

 なんと声は上から──街路樹の三メートル上の枝から聞こえた。

 見上げると黒い子猫の姿があった。


 間違って自力で登ってしまったのはいいが、降りられなくなったのだろう。

 私は周囲を観察し、親猫がいるかどうかを見た。

 どうやら親の姿はなく、はぐれたらしい。


 このままというわけにもいかない。

 私は抱えていた紙袋を街路樹のわきに置き、その子を救出せんと、腕まくりをした。


 私は動きづらいエプロンドレスの裾をたくし上げると、そのまま気に足をかけ登りは始めた。

 なんとかいい感じに気には枝が配置されており、そこに足をかけていく。

 そしてみるみるうちに、子猫のもとへとたどり着いた。


 子猫はいきなり木を登ってきた私におびえている。

「もう大丈夫だよ。こっちおいで」

 なるべく優しい声音でささやくように伝えるとまるで言葉が通じたかのように、子猫は威嚇をやめ、肩にしがみついた。


 ここからが問題である。

 どうやって降りたものか。

 私は慎重に足場に使った枝に再び足をかけ、降りようとする。

 だがはっきり足元がみえないため、恐る恐るだ。


 そのときだった。足をかけた枝がぽきりといい音をたてて、枝分かれしたところから折れた。

 そのまま掴まるところもなかった私は来る衝撃に耐えるために、子猫をかばい、目を瞑った。

 多分ここから落ちれば、思いっきり骨折する未来は見えていた。


 だが、次の瞬間、やさしい花の香りが私を包み込んだ。

 だれかが私を受け止めてくれたのだ。


「大丈夫、か?」

「あ、ありがとうございます……」

 私は閉ざしていた瞼を開いた。

 すると、抱き留めた腕の中にいる私をのぞき込む、青い瞳と目が合った。


「あ、あの、もうおろしてくれてかまわないです、はい」

「ああ、そう……そうだな」

 私はその場に降ろされたので、子猫を放す。


「今度はあんな高いとこ登っちゃだめだよ!」

 私がそう言って、手を振ると、子猫は逃げるようにその場を去っていた。

 その一部始終を見ていた私を助けてくれた男性はくすくすと笑った。


「君はやさしいな」

「え、いやそんな。困っている猫を見たらつい」

「いや、いい心がけだ。さて俺は急いでいる。またどこかで会おう」

「えっと、本当にありがとうございました」

 急いでいるところを引き留めては悪いかと思い、顔まで隠れる外套を翻し去っていくその人に名前も聞けず、私は一礼した。


 いやあ、それにしてもイケメンだった。あと見たことあるような顔してた気がする。

 でもあんなきれいな人、ここらで見かけないから、どこで会ったか全然思い出せないけど。


 私は街路樹脇に置いた日用品の入った紙袋を抱え上げると、その場を後にした。


 そして後から思い出すことになる。

 それは見覚えがあったのは前世友達が好きだった乙女ゲーの攻略キャラだったから。

 

 彼は双子王子のうちのどちらかだったのである。



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