第五の運命:脆い小石
アグス視点
すべてはあの火事から始まったんや。ワイらをバラバラにした火事、そしてワイ自身の弱さを思い知らされた火事。あの事故から一ヶ月が経ったけど、今でもあの日の後悔に苛まれとる。もしワイらがあの時、アズイマがおらんことにすぐ気づいて、一緒にもっと早く助けに行っとったら、運命は変わっとったかもしれん。ファドリも彼女のために命を捨てる必要はなかったし、ワイらも今頃まだ一緒にいられたはずや。けど、もう遅すぎる。アンタらも、それぞれの道へ行ってしもた。
他のみんなが前を向いて自分の人生を歩んどる間、ワイは自分の進むべき道が分からんくて、この一ヶ月間あてもなく彷徨い歩いとった。ある日、ミネライスにおった時、岩石博物館を訪ねたんや。最初は岩石だけの博物館なんてあるんかて驚いたけど、展示を見とるうちにどんどんその魅力に引き込まれてしもた。展示されとる岩の歴史をガイドさんに詳しく聞いたりしてな。特に天然石や鉱石への興味が深まっていったんや。
博物館を訪れてから一ヶ月、天然石への情熱はさらに高まって、ワイは岩石を自然の状態で学ぶためにミネライスにある洞窟のほとんどを巡った。探索の最中、ワイと同じように岩を研究しとる人らにも何人か会うたわ。最初は仲間に入れてもろて岩について語り合おうかとも思うたんやけど、自分の知識がまだ足りひんことに気づいて、今はやめとくことにしたんや。
今はミネライスの外にある洞窟を訪れとる。景色を眺めとったら、目の前におる少年が踏んどる岩にひびが入り始めとるのに気づいた。ワイは咄嗟にその子を安全な場所へ突き飛ばたんやけど、代わりにワイが岩の崩落に巻き込まれてしもた。洞窟のかなり深いとこまで落ちたけど、不思議と怪我はなかったわ。幸い、上からワイの状態を心配して叫んどる人らの声も聞こえた。
住民:「少年、下で大丈夫か?」
アグス:「ワイは平気や! けど、自力で登れる道が見つからへん!」
住民:「ちょっと待っとれ、今助けを呼んでくるさかい!」
アグス:「わかった!」
助けを待つ間、ワイは自分が落ちた穴の周りを見渡した。かなりの深さやったけど、そこは暗くなかったんや。色とりどりの光を放つ無数の鉱石がはっきりと見えた。その中に一つだけ、他とは比べもんにならんくらい眩しく輝いとる岩があったんや。どういうわけか、その岩がワイを呼んどるような気がした。
アグス:「わあ、あんな岩見たことないわ」
ワイはその岩に近づいて触れようとしたんやけど、そいつが突然ワイに向かって飛んできて、体の中に入り込みよった。その直後、ワイの手から大量の岩がせり出してきて、両手を完全に覆う岩の鎧が出来上がったんや。
ワイは必死に手を覆う岩を剥ぎ取ろうとしたけど、まるで肌と完全に一体化しとるみたいやった。上から救助隊が到着した音が聞こえてきて、ワイはさらにパニックになって岩を外そうともがいたわ。幸いなことに、救助隊がワイのところに辿り着いた瞬間、手の岩は何の跡形もなく消え去った。何が起きたんかさっぱり分からんかったけど、無事に穴から出られたことに安堵したわ。さっき助けた少年の両親が、ワイに感謝と謝罪をしてくれたけど、ワイはただ微笑むことしかできんかった。
その岩の事件の後、ワイの体はえらい不安定になってもた。時々手が岩に変わったり、足や体、頭までもが岩の鎧で覆われるようになった。全身が岩の塊に包まれてまうこともあったわ。幸い、数日が経つと体はようやく安定した状態に戻って、岩の鎧が出ても元に戻す方法を覚えることができたんや。
体が安定してから、ワイはミネライスで岩を研究しとる学者たちのところへ行って、自分の状態を打ち明けた。彼らは最初、腰抜かすほど驚いとったけど、ワイの体を色々調べてくれたわ。科学的な細かいことはよう分からんかったけど、あの洞窟で見つけた奇妙な岩が本当に体の中に入って、細胞と融合して変異しとるみたいやった。
アグス:「この岩を体から取り出せへんか?」
研究者:「残念ながら、ワイらには無理や。そんなことできる道具を持っとらん」
研究者:「けど、力になれるかもしれん奴を知っとる」
研究者:「クワトロに科学者がおるんや。そいつに起きたことを話せば、きっと助けてくれるはずや」
アグス:「わかった、会いに行ってみるわ。その科学者の名前は?」
研究者:「リチャードっていう名前や」
アグス:「わかった、ありがとうな」
ワイはリチャードという科学者を捜しにクワトロへ直行した。幸いクワトロはミネライスから近かったから、すぐに着いたわ。到着して、ミネライスとは全然違う近未来的な街並みに度肝を抜かれた。リチャードを捜しとる途中で、墓地で悲しみに暮れとるアルタにそっくりの奴を見つけたんや。
アグス:「アルタ」
ワイは呼びかけて近づいた。そいつが振り向くと、やっぱりアルタやった。
アグス:「アルタ、久しぶりやな」
アルタ:「アグス? やあ、元気だったか?」
アグス:「ワイは元気やで。アンタ、こんなとこで何してんの?」
アルタが墓をちらっと見てから、ワイに微笑むのが見えた。
アルタ:「友達に会いに来たんだ」
ワイも後ろの墓石に目をやると、そこにはリチャードの名前が刻まれとった。ワイは彼を抱きしめた。
アグス:「お悔やみ申し上げるわ、友よ」
アルタ:「ありがとう」
アルタはワイを「セカワン・タワー」っていう、これまたユニークな建物に招いてくれた。ワイはアルタに何が起きたか、なんでクワトロに来たんかを話したわ。予感通り、ワイが捜しとったリチャードは、アルタがさっきお参りしとった墓の主やった。アルタも自分の話をしてくれて、事故で体がゴムみたいに伸びる能力を手に入れたことを明かしてくれたわ。
しばらく語り合った後、アルタがタワーに泊まらんかと誘ってくれて、ワイは喜んで受け入れた。ワイの体を治せる唯一の人が亡くなってしもた以上、ワイはこの能力を自分の一部として受け入れることにしたんや。ワイらはチームを組んで、能力を使いこなすために一緒に特訓を始めた。住民を手伝うことも増えたわ。今は、突然止まってしもた観覧車に閉じ込められた人らを避難させるために警察を手伝っとる。アルタが観覧車のエンジンを直しとる間、ワイは能力を使って折れた支柱の一つを支えとる。けど突然、凄まじい地震が起きて、観覧車が激しく揺れ、大きなボルトが何本も外れて落ちていったんや。
ボルトが、閉じ込められた友達を心配そうに見守っとる子供らの群れに向かって真っ逆さまに落ちていくのが見えた。すると突然、どこからともなくイナが現れて、目に見えない障壁でボルトを防いで子供たちを救ったんや。その間、地震のせいで別の支柱が折れて、観覧車はさらに傾きよった。ワイは全力を振り絞って支えようとしたけど、さすがに限界が近かった。そこへアンジャスが別の折れた支柱に向かって走り寄ってきて、ワイに叫んだ。
アンジャス:「アグス、もうちょっとだけ堪えろ!」
ワイは頷いて、全身を岩の鎧で覆って観覧車を必死に支えた。その隙にアンジャスが炎の能力で折れた支柱を溶接してくれた。アンジャスが溶接を終えた頃、アルタもようやくエンジンを直し終えて、観覧車が再び動き出した。ワイらは閉じ込められた全員をすぐに救出したわ。救助が終わった後、アルタがイナとアンジャスをタワーに誘って少し話そうとしたんやけど、何もしゃべらんうちにテレビでザルゴの放送が流れた。外を見ると、もうソウル・デバウラーたちが住民を襲って取り憑いとるのが見えたんや。
アルタが住民を助けに行こうとしたけど、ワイはすぐにそれを止めて首を振った。
アグス:「もう遅いわ、アルタ」
アルタはワイの手を振り払って、悔しさのあまり壁を殴った。アンジャスとイナも、悲しそうに俯くだけやった。
アルタ:「クソッ!」
自分勝手やと思われるかもしれんけど、ワイはアンタらを外に行かせるわけにはいかんかった。もう二度と友達を失いたくないんや。それに、ワイはまだアンタらを守れるほど強くない。ワイはただの、「脆い小石」やからな。




