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第二十九の運命:のろまな走者

ラマダン視点


すべてはあの火事から始まったがよ……。信じられん速さで燃え広がり、激しく燃え盛ったあの火事。幸せなんて一瞬で惨事に変わっちまうんだって、わしに思い知らせたあの火事から。あの火事が起きてから一ヶ月が経って、わしらはみんな、あの出来事にすっかり打ちのめされちまった。他のみんなは、自分たちの心を癒やすために、別々の道を選んで去っていったがよ。わしとしては、みんなで一緒にいて支え合えたらええなと思っちょったけど、去ることを選んだみんなを責めることなんてできん。


もし一緒にいたとしても、わしらは絶えず火事のことを思い出して、あの時何もできなかったっていう罪悪感に何度も何度も苛まれることになったろうし。でも、バラバラになれば、たとえほんの少しでも心を癒やせるかもしれん……。あの日の記憶や悪夢が、わしらから消えることは決してないとは思うけどな。だから、どの道を選んだとしても、何かが変わるとは思えんがよ。あの火事のことを本当に忘れられん限り、わしらは誰一人として、昔のように幸せに暮らすことなんてできんのじゃ。


一週間が過ぎて、わしは今、中東の港町におる。確か、この街の名前はウルジワニやったかな。わしは昔から海岸沿いの場所が好きやったき、ここに来ることに決めたがよ。波の音や爽やかな海風は、ほんの一瞬だけでも、わしにすべての悩みを忘れさせてくれる。でも、やっぱり思った通り、ここは心を落ち着かせてくれる場所ではあったけど、わしは今でも罪悪感に苛まれちょるし、火事の悪夢に何度もうなされちょる……。特に、あの火事で犠牲になったのが、わしにとって最も大切な親友の一人やったから。


浜辺をのんびり散歩しちょった時、遠くの海の方から赤と黄色のぼやけた光が並んで猛スピードで走ってくるのが見えた。その光が急速にわしに近づいてきゆうことに気づいて、わしはすぐに進路から外れようとした。でも、間に合わんかった。何が起きたのか分からんかったけど、突然、自分の体に何千台もの巨大なトラックが衝突したような衝撃を感じて、同時に何百万本もの雷の針に突き刺されたような、耐えがたい激痛に襲われて……わしはそのまま意識を失っちまった。


目が覚めた時、わしはベッドの上に寝かされちょって、全身が頭からつま先まで包帯でぐるぐる巻きにされちょった。周りを見渡すと、建物の構造は海岸近くの倉庫みたいに見えるのに、そこには見たこともないような高度な装置がたくさん並んじょった。別の方向に頭を向けると、突然、ベッドの横に一人の男が笑顔で現れたがよ。

???:「よかった、ようやく目が覚めたね。気分はどうだい?」

ラマダン:「何が起きたん……? あんた、誰なが……?」

バリー:「僕の名前はバリー。……ごめん。君がこんな目にあってしまったのは、全部僕のせいなんだ」

バリー:「本当に申し訳ない」


ラマダン:「あんたのせいって……どういうことなが?」

バリーはわしに、自分は実は「ザ・フラッシュ」っていう超スピードを持つヒーローの一人ながやと説明してくれた。意識を失う前に見たあのぼやけた光は、実はバリーが宿敵のリバース・フラッシュとスピードフォースの中で戦いよった姿やったらしい。わしが彼らの通り道におったき、二人が放出しちょったスピードフォースのエネルギーに巻き込まれちまったがよ。だから、何千台ものトラックに撥ねられながら、何百万本の雷に打たれたような衝撃を感じたわけやな。バリーは何が起きたか気づいた時、すぐにわしを海岸近くの空き倉庫に運んで手当てをしてくれた。たとえ、それで敵を逃がすことになったとしても。


数週間が経って、一番驚いたのは、わしが直接スピードフォースを浴びちまったせいで、バリーと同じようにスピードフォースを使って、彼のようなスピードを手に入れられるだろうってバリーが言ったことながよ。体の代謝も信じられんくらい速くなって、どんな怪我もすぐに治るようになった。でも代謝が速い分、お腹もすぐ空いちまうがやけど。この数週間、バリーはわしにスピードフォースの使い方をいろいろ教えてくれた。体を高速で振動させたり、とてつもない速さで走ったり、他にもたくさんな。


彼はスピードフォースや、わしらみたいにスピードフォースにアクセスできる「スピードスター」っていう存在についてもたくさん教えてくれた。それから、リバース・フラッシュみたいな悪いスピードスターもおって、わしらみたいなスピードスターを常に狙っちゅうから、いつも気をつけるようにって忠告してくれたがよ。もう一つ説明しておきたいことがある。スピードフォースを使う時に黄色い雷を纏うバリーとは違って、わしの雷は紫色ながよ。バリーに聞いたら、スピードスターの雷の色は、その人が到達できる速度によってそれぞれ違うんだって説明してくれた。


約一ヶ月の訓練の後、バリーはわしが自分の力を使いこなせるようになったと判断した。彼は、わしがスピードフォースを使った時の摩擦に耐えられるスーツをくれたがよ。フラッシュのスーツに似ちゅうけど、わしの雷の色に合わせて、ダークパープルに鮮やかな紫の稲妻のロゴが入ったスーツやった。彼は去り際に、いつかまた助けが必要になった時のためにって、名刺を置いていってくれた。

フラッシュ:「伝えたいことはこれで全部かな。さよなら、ラマダン。いつかまたどこかで会えることを願ってるよ」

別れを告げると、フラッシュは猛スピードでどこかへ走り去っていった。


一ヶ月が過ぎて、わしはバリーがわしを訓練し、介抱してくれたあの空き倉庫に留まることに決めたがよ。バリーはわしが使えるように、いくつかの高度な装置をわざと置いていってくれたみたいやったから、もちろんそれを使わせてもらった。自分の力をさらに鍛えるために、わしはそのスピードを使って街の人たちを助け始めたがよ。たとえそれが小さなことでも、少なくともわしの助けで誰かを笑顔にすることはできたき。


……少なくとも、あの日が来るまではな。突然、凄まじい揺れが襲ってきて、続いて恐ろしいオーラの爆発が起きた。その後すぐにザルゴからの放送が流れて、「ソウル・ディヴァウラー」っていう存在が目覚めたことが映し出された。それから間もなく、ソウル・ディヴァウラーたちは街に現れて、混乱を撒き散らし、人々に憑りつき始めた。わしはできるだけ多くの人を助けようとしたけど、誰一人救えるほどの速さはなかったがよ。わし自身もソウル・ディヴァウラーの一人に憑りつかれそうになった。幸い、なんとか振り切って、住み着いちょった空き倉庫に逃げ帰ることができた。……結局、力が有ろうが無かろうが、どれだけ速く走れようが、わしは昔のままやったがよ。誰一人救えんほどのろまで、自分の恐怖に立ち向かうことさえできん臆病者。わしは、本当にただの「のろまな走者」やったがよ。

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