第二十六の運命:へこんだ金属
サンタ視点
すべてはあの火事から始まったのさぁ〜。わらわたちを引き裂き、幸せをすべて飲み込み、共に過ごした日々を焼き尽くしたあの火事からね。あの事故から一ヶ月が経ったけど、今でもトラウマとしてわらわたちの記憶にしがみついておる。災害を前にしたわらわたちが、どれほど弱くて無力だったかを思い知らされるよ。他のみんなは、より良い生活を求めてか、あるいは心に溜まった悪い記憶を忘れるために、それぞれの道を選んで去っていった。わらわとしては、バラバラになるより、みんなで一緒に支え合えたらもっと良かったのにと思うんじゃがねぇ。
最初はわらわも、ここを離れるべきか迷っておったんじゃ。気分転換に家の近くのモールを歩き回ってみたんじゃが、悲しいかな、もう楽しめなくなっておった。どこへ行っても、誰もが火事のニュースを流したり、その話をしたりしておって……正直、恐怖とトラウマがひどくなる一方じゃった。平和な場所を探しに行ったみんなの判断は正しかったのかもしれぬ。そう思って、ついにわらわもこの場所を離れ、すべての悪い記憶を置いていくことにしたのさ。
一週間後、わらわはシドニーにおった。ずっとオーストラリアに来てみたかったんじゃ。ようやくチャンスが巡ってきたんじゃから、無駄にはできぬ。もちろん、人が多い場所を選んで行動したよ。オーストラリアの野生動物は恐ろしいと聞くし、正直、そんなクリーチャーたちには出くわしたくないからのぉ。
シドニーでの楽しみの一つは、ダイビングをしてこの国の美しい海やサンゴ礁を眺めることじゃった。潜っておる最中、サンゴ礁の間に妙な物体が挟まっておるのに気づいたんじゃ。そこから変な波動が出ておった。ゴミかと思って拾おうとしたんじゃが、手が触れた瞬間に電撃のような衝撃が走って、わらわは慌てて手を引いたよ。何が起きたのか確かめようともう一度見たんじゃが、不思議なことに、その物体は消えておった。
サンタ:『ふーむ……長く潜りすぎたかのぉ。水中におりすぎると幻覚を見ることもあると聞くし……』
タンクの酸素残量をチェックしたら、もう20%しか残っておらなんだ。それでわらわは地上に戻ることにしたのさ。
ダイビングを終えた後、自販機で買った缶ジュースを飲みながら浜辺を散歩しておった。飲み終わって、ゴミ箱に向かって缶を投げたんじゃが、外れてしもうてね。思わず自分でおかしくなって笑ってしもうたよ。それで缶を拾おうとした時、その缶が自分の手に戻ってくる様子を頭の中でイメージしてみたんじゃ。すると驚いたことに、缶が本当にわらわの手に向かって飛んできて……あまりの衝撃に、また落としてしもうた。
サンタ:「はえっ?」
あの奇妙な出来事から数週間。色々と試してみて分かったんじゃが、わらわには磁力、あるいはそれに近い力が備わっておった。鉄やアルミニウムといった金属を遠くから引き寄せたり、念動力のように操ったりできるのさ。じゃが、動かせるのは10kg以下のものだけ。一度、車を持ち上げようとしてみたんじゃが、車が少し震えただけで、わらわの方がすぐ疲れ果ててしもうた。
サンタ:「どうやら、普段自分が持てる程度の重さのものしか動かせぬようじゃな」
サンタ:「普通に持ち上げられぬものは、この力でも操れぬということかぁ」
この力が手に入ってから、毎日の生活は格段に楽になったよ。正直、もっと怠け者になってしもうたね。スマホや身の回りのものを取るような些細なことにこの力を使ったり、ただゴミを捨てるためだけに使ったり。蛇口をひねったり、ドアを開けるのにも使っておるよ。
サンタ:「へへへ、弱点はいろいろあるけれど、使い道はいくらでもあるから超便利じゃのぉ」
怠け癖がついただけでなく、ちょっとした悪戯にも使うようになったよ。狭い場所に落ちたコインを拾ったり、自販機からタダで飲み物を出したり……。そんな小さなトリックをいろいろ楽しんでおったのさ。
ある夜、歩いておると強盗に遭っておる女性を見かけた。強盗はナイフを突きつけて、バッグを渡せと脅しておった。
サンタ:「この力を試す良いチャンスかもしれぬのぉ」
わらわは遠くから力を使い、強盗のナイフをぐにゃりと曲げてやった。それから女性のバッグを操って、強盗の顔面に叩きつけてやったのさ。奴が倒れるのを見て、わらわは人が集まる前に笑いながらその場を去ったよ。
一ヶ月が経ち、わらわはいつものように力を使って自販機から飲み物をくすねておった。飲み物を手にした瞬間、凄まじい地震が襲ってきたんじゃ。目の前の自販機が倒れてきそうになったんじゃが、わらわは力を使ってなんとか元の場所へ押し戻したよ。起きたのは地震だけではなかった。揺れと共に、恐ろしいオーラの爆発が吹き荒れるのを感じたのじゃ。
揺れが収まると、街中のスクリーンが同じ映像を映し出した。悪魔の覚醒じゃ。その悪魔は部下たちを蘇らせ、世界中に混乱を広めるために放った。悪魔の部下たちがシドニーにたどり着くのに、時間はかからなんだ。奴らは目に入る人間を片っ端から襲い、憑りついていった。わらわも力を使って人々を助けながら必死に戦ったんじゃが、いかんせん数が多すぎた。一人でみんなを守りながら戦うのは、わらわには荷が重すぎたのさ。
結局、多くの人間が捕まって悪魔に憑りつかれ、わらわの周りを囲む敵は増える一方じゃった。自由に動くことも難しくなり、何度か攻撃を食らってしもうた。しばらく耐えたんじゃが、わらわはついに諦めて逃げることにした。幸い、近くにかなり大きな博物館があったから、そこへ駆け込んでモニタリング室に隠れ、ドアを固くロックしたのさ。これなら、奴らが博物館に侵入しても、わらわは見つからぬ。防犯カメラで奴らを監視することもできるし、この博物館には金属製のがらくた……もとい、展示品がたくさんある。それを使えば、わらわ自身を守ることもできるじゃろう。たとえわらわが、ただの「へこんだ金属」だったとしてもねぇ。




