第十九の運命:ちっぽけな蟻
リスキ視点
すべてはあの火事から始まったんだ。幸せに終わるはずだった結末を焼き尽くし、俺の親友を奪い去り、災害を前した自分がどれだけちっぽけな存在かを思い知らせたあの火事から。ちっぽけで、弱くて、役立たず。あの事故が起きた時、俺はそう感じた。自分の兄弟だと思ってた親友を助ける勇気すら出せなかったんだ。あの事故から一ヶ月が経って、俺は恐怖に向き合う代わりに、遠い場所へ逃げることを選んだ。自分を苦しめるあらゆる雑念から、心の平穏を探すために。
あの日以来、俺はいつも自分の中にある後悔と恥を背負って、うつむいて歩いてた。ある時、公園を歩いてたら、蟻の行列を踏みそうになったんだ。あいつらは完璧な隊列を組んで、落ちてた食べカスを運んでた。それまで蟻なんて気にしたこともなかった。ちっぽけだし、正直、ただの邪魔な虫としか思ってなかったんだ。でも本当は、あいつらは最高にすごい生き物の一つなんだよ。あんな小さな体なのに、自分の体重の10倍から20倍もの重さのものを運べるんだ。もう一つ驚いたのは、どれだけ数が多くても、あいつらは仲間を一人も置いていかないってことだ。俺みたいな卑怯者とは大違いだよな。
一週間くらい経って、俺は今、アルバニアのある街にいる。正直、アルバニアの文字がまだ読めなくて、ここがどこなのか正確には分からねぇんだけど、会った人に聞いてみたら、ドゥラスって街らしい。言葉にはまだ苦労してるけど、俺はこの街が気に入ったよ。一番の理由は天気がすごく心地いいこと、もう一つは、海に近いからシーフードがめちゃくちゃ美味いことだ。
街の郊外をのんびり散歩してたら、うっかり蟻を一匹踏んじまった。俺は慌てて足を上げて、様子を見ようとその蟻を拾い上げたんだ。そしたら、その蟻はまだ生きてて、いきなり俺の指を噛みやがった。不思議なことに、噛まれた瞬間に俺の体がどんどん縮んでいって、その蟻と同じくらいの大きさ……いや、それよりも小さくなっちまったんだ。
リスキ:「えっ? なんで俺、急に小さくなってんだ?」
あいにく、服は俺と一緒に縮んでくれなかった。さっき俺を噛んだ蟻をよく見てみたら、今まで見たこともないような姿をしてた。青色なんだよ。そんな蟻、見たことねぇ。
その蟻の背中に、綺麗に畳まれたスーツ?みたいなのが乗ってるのに気づいた。他に選択肢もなかったし、このまま全裸でいるわけにもいかねぇから、俺はそのスーツを取って身に纏ったんだ。幸い、俺の体にぴったりだった。蟻の頭みたいなデザインで、かなりユニークだったけどな。着た直後、全身を蟻の群れに噛まれてるような感覚がしたけど、その感覚が消えると、俺の体はすぐに元の大きさに戻ったんだ。不思議なことに、スーツも俺と一緒に大きくなった。何が起きたのか混乱してたけど、とりあえずこの変なスーツのまま街を歩くわけにはいかねぇから、急いで上から普通の服を着たよ。
蟻に噛まれる事件から数週間が経って、あることに気づき始めた。俺は蟻のサイズに縮めるだけじゃなく、巨人みたいに大きくなることもできるんだ。急に体が巨大化した時は騒ぎになりかけたけど、運良く周りに誰もいない場所だったから助かったよ。それだけじゃねぇ、蟻のサイズに縮んでる時は、パワーとスピードが何倍にも跳ね上がるんだ。でも困ったことに、普通の服は俺の体と一緒に伸び縮みしてくれねぇ。あの青い蟻の背中にあったスーツだけがサイズを合わせてくれるから、能力を使う時のために、いつも普通の服の下にそれを着るようにしてるんだ。
あと、今はアルバニアの首都ティラナに来てる。この街に興味があったからな。でも、街を探索する暇もなく、俺は目の前で誘拐事件を目撃しちまった。それだけじゃねぇ。誘拐された被害者が、中学の同級生で俺が片思いしてた女の子、ファラだったんだ。だから、めちゃくちゃ怖かったけど、俺は彼女を助けようって決めた。前みたいな卑怯者のままでいたくなかったんだ。俺は誘拐犯のバンの前に走り込んで巨大化した。バンは俺の足に衝突して止まったよ。体がデカくなると耐久力も上がるから、フルスピードでぶつかられても、小さな石が当たったくらいにしか感じなかった。
俺は元のサイズに戻って、ファラを救うためにバンのドアをこじ開けた。でも開けてみたら、誘拐犯どもはすでに気絶してて、中から白い何かが飛び出してきたんだ。その白い物体が大きくなると、それは俺のと同じようなスーツを着たファラだった。ただ、彼女のスーツは蜂のデザインで、白色で、羽まで生えてた。
リスキ:「んー……助けに来た意味なかったみたいだな。あんた、一人でこいつら倒せたんじゃん」
ファラは小さく笑った。
ファラ:「そんなことないよ。あんたがバンを止めて、あいつらの気を引いてくれたから反撃できたんだもん。感謝してるよ」
ファラは俺をきつく抱きしめた。俺も彼女の背中を優しく撫でながら、抱きしめ返した。
リスキ:「また会えて嬉しいよ、ファラ」
ファラ:「あたしもまた会えて嬉しいよ、リスキ」
その後すぐに、話し込む間もなく遠くから警察のサイレンが聞こえてきた。俺たちは急いで普通の服に着替えて、その場を離れた。ファラをカフェか公園に誘って、積もる話をしようって言ったら、幸い彼女も頷いてくれた。それで俺たちは、近くのカフェを探したんだ。
誘拐事件から一ヶ月くらい経って、今はアルバニアの山にある街に向かってるところだ。ファラと話して分かったんだけど、彼女も能力を手に入れた時に俺とほぼ同じ経験をしたらしい。違いは、彼女は白い蜂に刺されて、その蜂の背中にスーツがあったこと。能力も俺とは少し違ってた。彼女は俺みたいに巨大化はできないけど、縮んだ時に蜂の羽で飛べるし、拳にエネルギーを溜めて、何千匹もの蜂に刺されたような衝撃を与えるパンチが打てるんだ。
ファラの能力を知って、俺は彼女をパートナーに誘った。彼女が二つ返事でオッケーしてくれた時は本当に嬉しかったよ。それ以来、どこへ行くにも俺たちは一緒だ。能力を使って人を助けたり、誘拐犯や強盗をぶちのめして犯罪を根絶やしにしたり、時にはただ楽しむために力を使ったり。さっき言った街へ向かうトンネルの中にいた時、突然凄まじい地震が起きて、同時に恐ろしいオーラが爆発した。俺とファラはトンネルが崩れるのが怖くて、すぐに小さくなった。幸い、何も起きなかったけどな。
でもトンネルを出たら、街の上空を悍ましいクリーチャーが飛び回って、住民を襲ってるのが見えた。襲われた住民がみんな凶暴化して、他の人に襲いかかってるのも見えた。それを見た俺とファラは頷き合って、すぐに人々を助けに飛び出した。助けられるかどうかは分からねぇ。でも、せめてできる限りのことはしようと思った。たとえそれがどれほど小さな助けだったとしても。結局のところ、この「ちっぽけな蟻」を絶対に甘く見ないことだな。




