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第十三の運命:ずぶ濡れの女王

デラ視点


すべてはあの火事から始まったのじゃ。わらわらの喜びをすべて飲み込み、祝宴を惨劇へと変え、そして二度と消えることのないあの火事から。あの事故から一ヶ月が過ぎた。皆がそれぞれの道へと去ってから一ヶ月、我は今も己の愚かさを悔いておる。いつだったかは覚えておらぬが、我は水やあらゆる液体を操る能力を授かったのじゃ。しかし、いざ火事が起きた時、愚かにも我は何一つ助けようとはしなかった。ただ近くに水場が見当たらぬという理由だけで、己の力を使おうともせなんだのじゃ。


精神を集中させていれば、水脈を感じ取ることなど容易かったはず。しかしパニックに陥った我には何一つできず、その結果、友を救うために一人が犠牲になってしもうた。他のみんなと同じように、あの火事は我にとっても深く根ざしたトラウマとなり、ゆえに我は平穏を求めてここを去る決意をしたのじゃ。海が大好きゆえ、心を静めるために浜辺へ向かうことにした。岩に砕ける波の音と爽やかな海風は、安らぎを求める者にとって最高の組み合わせじゃからの。


数週間が過ぎ、我は現在、浜辺からほど近い「カフェ・アグア」でアルバイトをしておる。この浜辺は我の心を静めるにはまさに最高の場所ゆえ、しばらくこの付近に留まり、たとえ短時間の仕事であっても職に就こうと考えたのじゃ。浜辺の客に注文を届けておった時、ヤシの木の下で横たわるドウィヤンによう似た男を見かけた。近づいてみると、やはりドウィヤンであった。しかし彼は眠っておったゆえ、邪魔をしたくなくて仕事に戻ることにしたのじゃ。


それに、彼が目を覚ましてから話せばよい。最初はそう考えておった。しかし、何度注文を届けに浜辺を往復しても、日が沈みかけてもなお、ドウィヤンはヤシの木の下でぐっすりと眠り続けておった。生きておるか確かめるために何度か様子を見にいったほどじゃ。

デラ:「まったく、この男はいつまで眠り続けるつもりなのじゃ」

無事であると確信した後、我はカフェでの仕事を続けた。ようやくドウィヤンが目を覚ましたのは、わらわが店の片付けをして閉店の準備をしておる頃じゃった。


テーブルや椅子を整えておる最中、浜辺の方から騒ぎが聞こえ、何事かとすぐさま駆けつけた。見れば、一人の子供が波にさらわれ、沖へと流されておるではないか。ほどなくして、ドウィヤンが躊躇することなく水に飛び込み、子供を救おうとするのが見えた。我も海の水を操り、精一杯の助けを試みた。海水を意のままに操り子供を岸へ戻すほどの力はまだなかったが、少なくとも子供が沈まぬよう水の流れを操作することはできたのじゃ。


あいにく、それだけでは足りなんだ。子供が沈み始め、ドウィヤンは渾身の力で潜っていった。さほど時を置かずして、子供を抱えたドウィヤンが岸へと戻ってきたが、子供を救ったのはアクアマンであったのか? 我は事の次第を見守っておった他の数人と共に、子供の様子を確認するために駆け寄った。子供の無事が確認できたゆえ、我は仕事に戻ろうとした。彼らの傍らを通り過ぎる際、ドウィヤンとアクアマンの会話が耳に入ったが、ドウィヤンは我の存在に気づいておらぬようじゃった。


耳にした会話によれば、アクアマンはドウィヤンがアトランティス人である可能性を口にし、彼をアトランティスへと連れて行こうとしておるようじゃった。一週間後、いつものようにカフェで働いておると、ドウィヤンが浜辺に戻り、この一週間なぜか頻繁に姿を見せておったアクアマンと合流するのを見た。二人はしばらく話した後、海へと飛び込んでいった。おそらくアトランティスへと向かったのであろう。ドウィヤンが本当にアトランティス人ならば水中で息ができるはずじゃし、そうでなくともアクアマンが助けるはずゆえ、さほど心配はしておらなんだ。


それから一ヶ月ほどが経ち、彼が浜辺と海を何度か往復する姿を見かけた。ある時には母親まで海に連れてきておったが、おそらく彼女もアトランティス人なのであろう。残念ながら、ドウィヤンが浜辺に来るたびにわらわの存在に気づくことはなく、我も仕事が忙しくて声をかける機会を逃しておった。しかしある日、厨房の方で突然爆発が起き、我の働いておるカフェが瞬く間に火に包まれたのじゃ。


あの事故のトラウマが蘇り、我は一瞬立ちすくんでしもうた。しかしすぐさま我に返り、己の力を使って消火を試みたのじゃ。同時に、赤髪の女性が同じように水を操って火を消しておるのが見えた。最初は互いに驚いておったが、すぐに消火に集中した。無事に火を消し止めた後、我はその女性に歩み寄った。

デラ:「感謝する、助かったぞ」

???:「どういたしまして。まさかこんな場所で別のアトランティス人に出会うとは思わなかったわ」


その女性はメラと名乗った。わらわはアトランティス人ではないと説明しようとしたが、彼女は信じず、我をアトランティスへと誘ったのじゃ。最初は断るつもりじゃったが、伝説の王国アトランティスへの好奇心に勝てず、誘いを受けて二人で海へと向かった。アトランティスに到着すると、アーサーと名乗るアクアマンに出会い、そして我を見て驚愕しておるドウィヤンとも再会した。彼の反応に、我は思わずクスリと笑うてしもうたわ。


その後、メラに連れられてDNA鑑定を受けたところ、わずか25%ではあるが、確かにアトランティスの血が流れておることが判明したのじゃ。

デラ:『道理で……』

結果を見たアーサーとメラは、アトランティスに留まるよう勧めてくれ、我も快諾した。アトランティスでの日々、アーサーはことあるごとに我とドウィヤンをくっつけようとしてきた。最初はからかわれるたびに二人で顔を赤らめておったが、次第にそれが煩わしくなってしもうた。アーサーはドウィヤンに王位を譲ろうとしつこく迫っておったが、ドウィヤンは常ににべもなく断っておった。


アトランティスでの暮らしは、実に穏やかで心地よいものであった。アーサーの絶え間ない冷やかしを除けば、我はこの生活を心から楽しんでおったのじゃ。しかしある日、一人の男が血相を変えてアトランティスに現れた。メラから聞いたことがある。確か名はオーム、アーサーの異母弟じゃったな。

アーサー:「どうした、オーム。なぜそれほど慌てておる?」

オーム:「兄上、大変です。地上でとてつもなく恐ろしいことが起きようとしています」

アーサー:「どれほどの事態だ」

アーサーがそう尋ねた瞬間、凄まじい震動が走り、同時に恐ろしいオーラが放たれるのを我ら全員が感じたのじゃ。


震動が収まると、アーサーとメラは即座にオームと共に地上へ向かう準備を始めた。我らも両親のことが心配ゆえ同行を求めたが、彼らに制止された。

アーサー:「ドウィヤン、デラ。汝らはここに残れ」

アーサー:「我らが戻るまで、一時的にアトランティスの王と王妃としてこの地を守ってくれ」

メラ:「心配しないで。あなたたちの両親の安全は私たちが必ず守るから、案ずることはないわ」

ドウィヤンとわらわは食い下がろうとしたが、アトランナ女王を一人にするわけにもいかず、彼らの言葉に従った。翌日、アーサー、メラ、オームは出発していった。


あいにく、それきり三人が戻ることはなかった。連絡も取れず、地上の誰とも繋がらぬ。アトランティスの皆が不安と警戒を強める中、アーサーの代わりに暫定的な王となったドウィヤンは何をすべきか分からずにいる。暫定的な王妃となった我もまた困惑しておる。我は「ずぶ濡れの女王」に過ぎぬのじゃから。

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