第十一の運命:石化した蛇
デシ視点
すべてはあの火事から始まったんだ。あたしにとってすごく大切なものを飲み込み、必死の思いで手に入れたものを壊し、そして友達全員を失わせたあの火事。やっとの思いで見つけた友達が、あの忌々しい火事のせいでみんな居なくなっちまった。もし時間を戻せるなら、すべてが始まる前にこれを防げたんじゃないかって、そんなことばっかり考えちまう。
デシ:「はぁ……今さらこんなこと考えても意味ないわよね」
デシ:「あたし一人じゃ何もできないって分かってるし」
あたしはもう一度溜息をついて、一人ぼっちになっちまったけど、また前みたいな生活に戻ろうと頑張り始めたんだ。
あの事故から一ヶ月が経って、あたしは気分転換に動物園へ行ってみたの。爬虫類コーナーを歩いていたら、ガラスケースが一つ開いているのに気づいたんだけど、その下には「中にいるのはかなり危険なヘビです」っていう標識があったの。あたしはすぐに飼育員さんを探して報告したわ。職員の人たちは、入園者がパニックにならないように、できるだけ静かに逃げたヘビの捜索を始めたの。
運がいいのか悪いのか、園内を歩き続けていたら、一人の子供に向かって這っていくヘビを見つけちゃった。あたしはすぐにその子の前に立ちはだかって、ヘビを遮ったの。不思議なことに、あたしが前に立ったら、そのヘビは襲ってこないで、じっとあたしを見つめたまま動かなくなったわ。どうしていいか分からなくて、あたしもただヘビを見つめ返した。動いたら噛まれるんじゃないかって怖かったし。幸い、すぐに職員の人が駆けつけて、あたしをじっと見ていたヘビを捕まえてくれたわ。すべてが片付いたと分かった時、あたしはホッと胸を撫で下ろしたの。
動物園の事件から数週間が経ったわ。今、あたしはギリシャのラミアっていう街にいるの。この街の名前をまた見て、あたしは溜息をついたわ。あの動物園の事件以来、あたしはよくヘビやヘビに関連するものに遭遇するようになったんだけど、出会うヘビはみんな、あたしを見ると石になったみたいに固まったり、中にはあたしにお辞儀をする奴までいたの。そして今、あたしはこのラミアの街にいる。ラミアっていうのは、メデューサの末裔である「半人半蛇の女」の別名でもあるの。その目は、見た者すべてを石に変える力があるって言われてるわ。
街の近くの道でヘビを見かけて、あたしはまた溜息をついた。この街に着いたばかりなのに。
デシ:「もう、勘弁してよ! なんでどこへ行ってもヘビに出くわすわけ?」
そのヘビも、他の奴らと同じようにあたしにお辞儀をしたわ。理由はさっぱり分かんないけど。あたしはそのヘビを追い払おうとしたの。
デシ:「何であんたがそんなことするのか知らないけど、ありがとね」
デシ:「もう行っていいわよ」
ヘビはチロチロと舌を数回出した後、どこかへ這っていったわ。あたしはまた溜息をついた。
どうしてだか、あんまりヘビに会いすぎるから、もう全然怖くなくなっちゃった。それに、会うたびに絶対襲ってこないっていうのも、怖くなくなった理由の一つかもしれないわね。街で休んでいたら、また一匹のヘビが近づいてきたの。でも今度は、そのヘビがあたしについてくるように頼んでいるみたいに感じたわ。あたしが頷くまで離れようとしないから、誰かに見つかって騒ぎになる前に、仕方なくついていくことにしたの。ヘビの後を追っていくと、ラミアの城に辿り着いたわ。
お城に着くと、そこは不気味なほど静まり返っていたわ。いつもは賑わっているはずなのに、人っ子一人いないの。それだけじゃない。正門をくぐると、お城のあちこちをヘビたちが這い回っていたわ。そして、そのヘビたちに囲まれて座っている一人の女性を見つけたの。でも、その女性は全然怖がっている様子もなくて、むしろヘビたちと遊んでいるみたいに見えたわ。彼女はあたしに気づくとすぐに微笑んで近づいてきた。その時、彼女の目がヘビと全く同じだってことがはっきりと分かったの。
その女性はあたしに近づきながら、すごく嬉しそうにしていたわ。
???:「やっと戻ってきたのね、お姉様。会いたかったわ。新しい家族まで連れてきてくれるなんて」
あたしはこの人のことなんて全然知らないのに「お姉様」なんて呼ばれて、頭の中がはてなマークでいっぱいになったわ。彼女があたしに触れようとしたその時、突然あたしの体から一匹の大きなヘビが現れて、一瞬で一人の女性に姿を変えたの。あたしと、近づいてきた女性の間に立ちはだかって。どういうわけか、あたしはその姿を変えた女性の名前が「メデューサ」だって直感したわ。
メデューサ:「やめなさい、エウリュアレ! この子を困らせないで」
メデューサ:「この子は私たちのことなんて何も知らないの。彼女の望むように生きさせてあげなさい」
エウリュアレ:「お姉様、この子には私たちの血が流れているのよ。私たちの力を受け継いでいるの。普通の生活なんて、もう二度と送れやしないわ」
エウリュアレが光る目であたしを見た瞬間、あたしの目が激しく燃えるように痛みだして、開けていられなくなったわ。その間、メデューサが急いで振り返って、あたしのことをすごく心配そうに見ていた。メデューサの目も、エウリュアレと同じヘビの目だった。
メデューサ:「くっ! こんなに早く始まってしまうなんて」
メデューサ:「ごめんなさい、我が子よ。あんたの人生は、これからとても困難なものになるかもしれない」
メデューサ:「私はもう、あんたを守ってあげられない」
メデューサ:「申し訳ないわ……でも信じて、すべてはうまくいくから」
メデューサは、燃えるように痛むあたしの目に、一組の真っ黒なサングラスをかけさせてくれたわ。
メデューサ:「これをかけなさい、我が子よ。誰にもあんたの目を直接覗かせてはだめよ、いいわね!」
その直後、あたしは意識を失ったわ。
意識が戻った時、あたしはまだお城の中にいたけれど、メデューサとエウリュアレの姿はもうどこにもなかったわ。さっきまで辺りを取り囲んでいたヘビの群れも、すっかり消えていた。何もかもが消え去っていたの。あたしは自分の顔に触れて、メデューサにもらったサングラスをまだかけていることに気づいたわ。つまり、今起きたことは夢じゃなかったのね。
あの事件から一ヶ月が経って、あたしは誰にも自分の目を直接見せないようにっていうメデューサの忠告を守ってきたわ。サングラスを外すことは、ほとんどなかった。それには理由があったの。まず、鏡の前でサングラスを外してみたら、あたしの目がメデューサやエウリュアレと同じヘビの目に変わっていたから。二つ目の理由は、ある時うっかりサングラスを外して鳥を見ちゃったんだけど、その鳥が瞬時に固まって、石になっちゃったからよ。
あたしの目を見たのが人間じゃなくて本当によかったわ。じゃなきゃ、あの鳥みたいに石になっていたはずだもの。いつもサングラスをかけているあたしを見て、たくさんの人が不思議がったわ。なんでいつもかけてるのか聞かれても、あたしは答えなかった。中には好奇心に勝てなくて、力ずくでサングラスを外そうとする奴までいたけど、あたしはいつもパニックになって、そいつらを突き飛ばしたわ。あいにくそのせいで、周りの人たちはあたしが狂ったんだと思い始めて、あたしはすぐに精神病院に送られちゃった。
狂ってると思われた時はすごく悲しかったけど、病院の中でアルガとアユに会えた時は、ちょっとだけ嬉しかったわ。なんで二人がこんな場所にいるのかは分からなかったけど。三人は精神病院で穏やかな日々を過ごしたわ。アルガとアユが、自分たちの能力や起きたことを話してくれた。みんなが二人を怪物だと思っているって聞いて、あたしはすごく驚いたし、悲しくなった。でもそのおかげで、職員たちはあたしたちをひどく怖がって、好きなようにさせてくれたわ。けれど、そんな穏やかな日々は、ソウル・デバウラーが襲撃してきた時に突然打ち砕かれた。三人は能力を使って戦うしかなかった。好むと好まざるとにかかわらず、あたしはもう、「石化した蛇」のままでいることはできなかったのよ。




