第一跳
全ての人類へ
こんなことがありえる筈がない。だって、足もない。手もない。…何もない…のか?一体どうなっている?
目玉…はあるか?どうだろう、暗い事はわかるが、それ以外は確かめようがない。
よくよく感覚を研ぎ澄ませたら、口も、鼻もなかった。この調子だと確かる方法がない聴覚だけが縁だ。
「ずいぶん生苦しい場所に閉じこめられてるね」
そいつはクスリと笑った。少し舌足らずな甘い…毒々しい缶詰のチェリーみたいな。少し不愉快さすら持つような。
まぁ香りは何もしないんだけど。つまり頼みの綱であった鼻もアウトだ。
(なんなんだよ…俺だって好きでここにいる訳じゃ…あ、俺の声聞こえないのか)
その前に自分の一人称が「俺」であることに驚く。
そうか、「俺」か。じゃあ己という自我はちゃんと持ってるんだな!
あのさ!と、彼?は大声で叫ぶ。
「内容は全部聞こえている!あと勝手に独りの世界に入り込まないで」
(あ、それはすみません)
そいつはヤレヤレとため息をわざとらしくついた。
そうか、でもこれはかなりの自分への理解度だぞ!
つーか俺以外の俺のやつら、誰だ。名乗れこのやろう。失礼だぞ、初めて会った人間…人間?に。
「僕はまぁ…天使でいいんじゃない。イメージの問題でしょ」
(ほうほう…なるほど。天使さんが。宜しくお願い致します。)
で、何故自分がここに?このような状態で?と聞いたら、なんか安っぽいSFみたいな内容だった。
人類は皆液体のようになって幸せに暮らしてて、俺はたまたまエラーがおきてしまったらしい事、つまりとくに『何もないこと』自体が俺だった。
なるほど。俺は溶けてしまったのか。五感がないのも納得だ。
全ての人人へ




