表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/11

***

 シンジの目の前には、一人の少女の姿があった。

 肌の色は黒く、左目に眼帯。

 両の手は紅く染まり、足元には無残に腹を切り裂かれた妊婦の死体が転がる。


「……カミガカリ、か」

「アヤメ、何故、またしても……」


 二人を隔てる、高い垣根。


 シンジは神刀を右手に構え、じっと少女を睨みつけていた。

 左腕はない。とうの昔に、己の心に宿った鬼と共に斬り落してしまったからだ。


 そんなシンジの後方に立つ、もう一人の少女。

 アヤメと呼ばれた少女とは違い、透き通るような白い肌。

 今にも散ってしまいそうな佇まいの通り、名をコノハという。

 彼女はカミガカリの巫女に選定された存在だった。


 コノハは信じられないといったふうに口元に手をやる。

「なんで、どうして? 確かに、あなたの鬼は祓ったはずなのに……!」


 その言葉に、アヤメは薄く笑った。

「ふふ、残念。あたしの心に鬼なんてはじめから宿っていなかったのよ。だって、アタシ自身が神の戒律を犯す鬼なんだから、さ」


 アヤメの手には、まだ人の形になりきっていない胎児の頭が握られていた。

 臍の緒は乱暴に引きちぎられ、だらりと風に揺れる。


「――違う! お前は鬼などではない! 鬼に心を喰われるな!」

「違わないさ。だからほら、こんなことだってできちゃう」


 アヤメは鎌を握りなおし、胎児の頭をその形が変わるほど強く握る。


「や、やめて――!」


 コノハの叫び声にアヤメは不敵な笑みを浮かべながら、胎児の体を腹から二つに斬り裂いた。


ぼとりと落ちる下半身。上半身から、だらだらと赤い血が滴る。


「いやああぁぁ――あぁ!」


 泣き叫ぶコノハの声はしかし、ただアヤメを悦ばせるだけにすぎなかった。


「あっははははははは! さぁ、どうよ。これでもアタシがまだ人だって言える? アタシは人じゃない、鬼なのよ! 生まれた時から、アタシは鬼以外の何者でもなかった! さぁ、殺しなさいよ! それがあんたの役目なんでしょ!? シンジ!」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ