プロローグ「ブレインボックス」
昔から砂漠でコンピュータを頭に付けたダチョウがに人を乗せて走るイメージがあったので作ってみました。
ChatGPTとも相談しながら設定を作っています。
昇る陽が、赤錆びた岩肌に長い影を落としていた。オーストラリア東部の荒野。
その大地を、二羽のダチョウが風のように駆けていく。小さな四角いヘルメットのような装置を頭に付け、背にはそれぞれ一人の若者を乗せていた。
前を行くのはミュナ・カジマ。まだ少年の面影を残す十七の青年でありながら、バイロン集落で数少ない「技師見習い」として一目置かれていた。
そのすぐ後ろ、体をしならせるようにしてダチョウを操るのはアスタ・ミンスク。通信士の役割を担う十八歳の青年であり、ミュナの幼なじみであり、家族のような存在でもある。
二人は、部族長が暮らす“コースト”――かつてのゴールドコースト――を発ち、故郷バイロンへの帰路についていた。部族長から正式に婚姻を認められ、ミュナとパチャ・ウズの名は、部族の記録帳に並んだばかりだった。
そんな穏やかな旅路を破ったのは、アスタのトークフォンが受信した一本の信号だった。
「救難信号だ。……けど、部族識別コードがない」
ブレインボックスを通してダチョウの速度を緩めながら、アスタはすぐさま通信を整え、長老の判断を仰いだ。
結果、命じられたのは「回避」。発信源が敵か味方か判別できぬ以上、むやみに近づくな――それが部族社会の鉄則だった。
その夜は警戒のうちに過ぎ、朝。ミュナが光学眼を取り出し、斜面の向こうに目を凝らすと、異様な光景がそこにあった。
「……あれ、人がいないぞ」
斜面を登ってくるのは、一羽のダチョウ。だが鞍は空。ブレインボックスの赤い動作ランプだけが規則正しく点滅している。
「まさか、自律で……? 嘘だろ……」
二人は互いに視線を交わし、そっとダチョウの進路に水と餌を置いた。敵意がないことを確認すると、そのまま係留してバイロンへの道を急ぐことにした。
数日後。ミュナは、集落の猟師とともに再びその場所を訪れた。岩陰にとどまっていたダチョウは、すでに餌を食べきっていたが、落ち着いた様子だった。ミュナは慎重にブレインボックスの蓋を開け、中の基板に目を落とす。
「これは……ほとんど俺たちのと変わらない」
配線は手作業で組まれていた。リード部品も使われている。太陽電池、制御マイコン、行動パターン切り替えスイッチ……
だが、ミュナの目を釘づけにしたのは、銀色に光るチップの刻印だった。
M-220 / ECHO
見たことのない識別名。いや、聞き覚えがある。かつて祖父が、指先の震えとともに語っていた古い話のなかに、断片的にその名はあったような気がした。
「これは、誰が……どこで作った……?」
この続きは考えていないので、読みたかったらメッセージ下さい。