ショートショート 夢で泳ぐ〜バブリーガール2〜
皆さん、お久しぶりです!
私は石田良子です。
お元気にしてましたか?
私はお陰様でとっても元気ですよ!
新居に引っ越して数ヶ月経ちました。
新築のマンションで、前のアパートに比べるとちょっと手狭でけどで、設備も整っていて、何よりとてもきれい。
前に私の話を聞いたことがある人だったら、わかるかしら?
そうです!
前回私には喫緊の、ちょっとした困ったことがあったんだけど、何とか無事にその問題を解決することができて、今に至っています。
どうやってその問題を解決したかって?
あはは!
とっても簡単!
すべて回収したの!
お庭から床下収納、押し入れまで、全部!
ちょうどね、お花屋さんで、きれいなお花があったから、苗を買ってきて植えたの。
前にも言ったけど、全然そういうのうまくいかないんだけど、懲りずにまた苗木を買ってきて……。
で、それを植える代わりに、赤ちゃんたちの骨を回収したの。
ちゃんとあったわ。
骨……。
とっても小さくて可愛らしい骨。
お隣さんにバレないか心配だったけど、両隣のおじさんたちは、あっ!おじさんとか言って失礼よね!
私も十分おばさんなのに!
でも、その人たち私よりも年上だから、許して!
両隣のおじさんたちはどちらも夜働いて朝帰ってくるの。
だから昼はカーテン閉め切って寝てるから安全なの。
そもそもおじさんたち、庭なんて興味もないのよ。
だから庭で作業してても、誰に見つかることもなく、余裕で赤ちゃんたちの骨を回収できたの。
持つべきは、情緒も風情も関心もない、無害なおじさん!
それで床下収納に埋めた男たちはどうだったかと言うと……
まどろっこしいから結論から言うと——こちらもちゃんとした骨!
さすがにね、床下収納の開けるのはちょっと勇気がいったんだけど、でも、もう何十年も経ってるから大丈夫よねって、開けてみたの。
そしたら、こちらもまた見事に骨になっていて——うん、問題なし!
押し入れの中の子の骨も回収して……何十年ぶりかに、全員集合!
部屋中に骨並べて、魅入っちゃったわ!
それでね、家族団欒、愛した人たちの骨を眺めながらお茶したの。
アールグレイ……
とっても美味しかった……
それで、改めて私の家族は何人なのかなって数えてみたの。
全部数えたら男が三人、赤ちゃんが四人。
私、男は二人だと思ってたんだけど、見たら頭蓋骨が三つあるのよね。、確か二人だと記憶してたんだけど……。
不思議よねぇ。
まぁ、いっか、別に。
もう昔のことだから、二人も三人も同じよね!
でも赤ちゃんはね、四人だっていうのは覚えてるの、愛しい我が子のだもの。
行きずりの男とは訳が違うわ。
ただ、その愛しい我が子も誰の子なんだか分からないのが残念。
当時の私、毎日のようにいろんな男と寝てたから、ホント、誰の子だかわからないのよね。
ごめんなさいね、我が子よ!
だらしのないお母さんで!
でも後悔はしてないわ。
だって楽しかったんだもん、シリアナトーキョー!
シリアナトーキョーで知り合った男たちとのワンナイトラブは私の青春そのもの、人生そのものだったわ!
思い出すだけで、今でも体がウズウズしちゃう!
えっ? そんなんで、よく子供産んだわねって?
確かにそうよね。
そう思うのも当然よね。
でもこれも答えは簡単。
私ね、昔から子供産みたいな、子供産んでみたいなって思ってたの。
だから産んだの。
だって出産って、なんだかんだ言ったって女性だけにしかできなでしょ。
だから一度は産んでみたかったのよね。
まぁ結論から言うと、四回出産したってことなんだけど。
じゃあ、なんで殺したかって?
それも簡単。
私ね、子供を産みたいとは思ったけど、子供を育てたいと思ったことはなかったの。
だからね、子供達にはお父さんのところに行ってもらったの。
そのほうが子供たちも寂しくないでしょ!
ふふっ、私って、なんて子供思いのいい母親なのかしら!
えっ、なに?
どうして男たちを殺したかって?
あぁ、それ、いまそれ必要?
まぁ、いいわ、教えてあげる!
たいしたことないのよ。
一人目はやってる最中にやたら噛む奴がいて、それが痛くて痛くてね、我慢できないくらい痛かったの。
だからそいつの首に喰らいついて、喉元噛み切ってやったわ。
人が全力で腰振ってるってのに、ところかまわず噛んでさ、痛いって言ってんのにやめないの!
そういうのってどうなのかしら?
やめろって言ったらやめなきゃダメよね。
二人目は、確か、事後にいきなり鞄からカメラを取り出して、私が力尽きて全開で股開いてるところ、撮りだしたのよ!
なんて破廉恥な!
だからそのカメラを奪い取って、そのカメラで殴り殺してやったわ!
あまりにも殴ったもんだから、カメラが壊れちゃって。
カメラには悪いことしたわ。
それで最後の三人目は……。
なんだったかしら?
あはは、ごめんなさいね。
そもそも、ずっと二人だと思っていたから、サッパリ覚えていないわ!
でも、私が嫌だなと思うことをしたんでしょ、そいつ。
えっ? あっ、三人目はもしかして結婚を約束した男じゃないかって?
違う、違う!
それはないわ!
確かにその人とは結婚できなかったけど、後腐れなくに別れたのよ。
それにその人殺したりなんかしたら、私すぐに捕まっちゃうじゃない!
そうでしょう?
私たちが付き合ってるの、周りの人たち知ってたから、そんな人が行方知れずになったら、間違いなく私、第一容疑者になっちゃうじゃない!
ダメダメ!
そんな足がつくような、浅はかなことしちゃダメ!
ふふっ、私が殺した男たちは、あくまでその場限りの関係よ。
あの当時は、今みたいに至る所に監視カメラがあったわけじゃないし、
まして住宅街に監視カメラなんてねぇ……。
だから夜中に男たちが私のアパートに来ても意外と分からないのよ。
それが今は監視カメラもあちこちあるし、スマホでなんでも撮り放題。
ホント、あの時代が懐かしいわ!
踊るのもヤルのも、殺すものいい時代だった!
あぁ、久しぶりにこんなに長く喋ったから、喉が渇いてちゃった。
今日はこの辺にしておこうかしら。
長々と私のつまらない話を聞いてくれた皆さん、どうもありがとう!
あっ、そうそう!
実は、一難去ってまた一難。
新たな困りごとがあるんです!
あはは、もうわかってるって?
そうです!
家族の骨の処分どうしようかなってことです!
引っ越しの時に段ボールに入れて、この新居に持ってきたんだけど、どうしたものかと思って……。
このまま、ずっと一緒にいてもいいんだけど……。
まぁ、これは喫緊の問題ではないので、ゆっくり考えようかなと思ってます。
さぁ、いい加減これくらいにしておきましょう。
私は今から家族の様子を見ながら、アールグレイでもいただいて、のんびり過ごしたいと思います。
それでは、皆さん、ごきげんよう!
次、お会いするかはわからないけど、それまでどうかお元気で!
読んでいただきありがとうございます。