俺、林業してます
狭川哲也は、祖父が残した山二つと実家を相続した。
父親は、反対したが。狭川が、強引に相続して、8000万の借金を作った。
首の回らない狭川に、救いの神が現れた。
俺の名前は、狭川哲也 28歳
去年の春に祖父を亡くした。
生前の祖父は、元気で100迄生きると、信じていた。
『78歳で他界は、早すぎだ』
足腰も、しっかりしていて、毎日山に登っている元気な爺さんだった。
誰しもが、相続なんて先だと思っていた。
「無理だ、諦めろ」
父親が、山を売ると言い出さした。
「何とかなるって。頼むよ、オヤジ」
無策に、デタラメを言っている訳では無い。
「二言目には、キャンプ場か。昔は、至る所にキャンプ場は有った。今は、何処も廃れている。綺麗な湖なんて、ごまんと有るぞ」
湖の畔に、古くなったログハウスが、4棟建っている。
「新しく、ログハウスを建て替えたら、お客さんは戻ってくるよ」
今にしてみれば、お花畑だ。
「悪い事は言わん諦めろ、相続税が高すぎる。実家と山二つで8000万だぞ。キャンプ場が軌道に乗っても、500万稼いでも、税金で取られるのだぞ」
父親の言い分が正しかった。キャンプ場に、費やして。1000万の借金が増えた。
客も入らず。オープンまで2ヶ月先だが、予約は1件も入っていない。
「爺ちゃんが、可哀想じゃないか」
俺は、この言葉で父親の言動を止めた。
49日も明けない、喪中の事だった。
今、一億近い借金を抱えて。日中は、山に毎日登っている。
夜は、ガラクタに愛情を込めて、トラクターに取りかかっている最中だ。
トラクターが無いと、田植えに間に合わない。
米が無いと、飢え死にしてしまう。
農業高校を出て、違う山で修行をこなして、重機の免許や薪の作り方に、炭の勉強もしたが。
ここには、重機も無く。チェーンソーを片手に、山を上り下りしている。
使える機材は、軽トラに無理やり付けたジープ用のウインチだけだ。
丸裸にする訳にもいかず。人手も足りないから、間伐だけをこなし、日々暮らしている。
俺を、拾う神が現れた。
半額惣菜を摘みながら、2本目のビールに手を伸ばし。無駄にテレビを、眺めていると。
『ジリリ〜。ジリリ〜』
黒い固定電話が鳴りだした。
一度、固定電話に目をやり。次に、立て掛けられた古い時計に目を向けた。
8時30分を少し過ぎている。
近所の揉め事か、畑に車が突っ込むのを、思い浮かべた。
お酒も入っているし、運転は無理だ。
面倒事だと思いながら、重たい腰を上げて。玄関の固定電話に向かった。
「もしもし」
敢えて名乗らなかった。
「夜分遅くに申し訳有りません。菅原と申しますが、狭川様のお宅ですか」
警戒を怠ってはいけない。古い電話帳には、全ての電話番号が載っている。
「狭川ですが。どちらの菅原様ですか」
俺は、菅原の事を忘れていた。
「哲也さんが中学生の頃の同級生なのですが、ご在宅ですか」
俺は、ここで菅原涼介の事を、思い出した。
懐かしく、険しい表情は消えて。笑顔が溢れ出していた。
「ダサくま。懐かしいな、元気だったか」
中学の同級生だ。
美術部の線の細い優男で、日に当たらない体は、真っ白でホッソリしている。
あくまで、中学の頃の話だ。
「そのあだ名は辞めろ。中学の頃とは違うんだぞ、お互いに」
菅原は、半信半疑だったが。電話口の相手が俺だと知ると、声のトーンが上がり、心なしか笑顔がこぼれているように感じた。
「そうだな、中学の頃とは違うな。悪い、悪い許してくれ。つい、懐かしくて」
俺が付けたあだ名だ。
放課後の美術部で、菅原を驚かそうとして、集中している菅原にゆっくりと近付いた。
菅原は、スケッチブックの隅に、クマの絵を描いていた。
俺は、『ワッ』と言わずに、『ダサくま』と言った。そこから、3ヶ月ほど、菅原と言わずに、『ダサくま』と呼んだ。
「何。ここに、帰ってきたのか。同窓会でも有るのか」
過疎化の進行し過ぎた田舎だ。周りは老人だらけで、出会いも無い。
この1年は、山とディスカウントストアと、近くの大型スーパーにしか出かけていない。
自分から、出会いも探そうとはしてなかった。
億に近い借金を抱えて、嫁を求めるのは、無謀に近い。
『この1年で、学んだ筈だった』が、忘れている。
「違う。今、シーズンオフだから、キャンプ場に住まわせて欲しいのだが。急だったか」
菅原は、単刀直入に聞いてきた。
「今、キャンプ場は無いんだ。一昨年の豪雨災害で、ボロボロになって。一度更地にして、ログハウスのキットだけが有るだけなんだ」
すぐに使える、乾燥した木はなく。
ログハウスのキットを注文したのだが、余り良い木では、なかったので、お金とやる気を喪失したのだ。
「それに、キャンプ場は、無くなる予定だ。売りに出そうと思っている」
誰にも相談ができず。話しを聞いて欲しかったのか、菅原を信用しているのか。
誰かと、話をしたのかった、だけなのかもしれない。
「売ってくれ。キャンプ場ごと買うよ、助けてくれ」
「それは無理だ。キャンプ場だけでは売れい。山ごと売らないと意味がないんだ。すまないが、助けにならない」
ここは、即答した。
キャンプ場が有るから、高く売れるのだ。
山の価値が、下がってしまう。
「問題ない、逆に助かる。山に人を、近づけさせないなら。1億までなら出せるぞ」
あんな山に、人が近寄るわけ無い。山菜やキノコは、採れるのだが。
イノシシが出る。熊が出たなんて話は、聞いたことがないが、鹿や猿などもたまに見かける。
猟銃を持って、他人の山に登るヤツもいない。
俺は、 二つ返事で山を売った。
山一つを、6000万で売却した。
売却の手続きは、弁護士を通して行い。
いくつかの条件を出された。
その一つに、山の管理を任されている。
菅原は、今まで通りに間伐を続けて欲しいとも言ってきた。
大雨で土砂が流れて来て、新たなログハウスが壊れるのを恐れたから。
俺に、給料を渡し手でも、キャンプ場を手にしたかったらしい。
日が傾き始めて、通常の仕事を終えて、帰路についた。
186cmの体を、無理やり軽トラに滑り込ませて、凸凹の道を下る。
スピードが出過ぎると、天井に頭を打ち付けて、鞭打ちになるかと思う程の衝撃が首にかかる。
起伏の激しい山道を抜けて、舗装されたアスファルトに出た。
昔、林業が栄えた時の名残りだ。
古い木材を置くヤードが有り。今は、ガラクタを放置している、価値しか無い。
アスファルトをそのまま下ると、キャンプ場が見えてきて。キャンプ場を見下ろす感じで、山道を下っている。
今日は、菅原がキャンプ場に来る日だったが。
現場監督が同席している。
急いで、仕事を依頼したのだから、菅原が頭を下げていて。今、再会するのは避けよう。
今の菅原は、俺の上司にあたる。
ごめんなさい。take2で書き直します。
読んて下さり有難うございます。
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