第9話 問題発生
僕は、少し問題が起きた。近くにあったボスが倒されたダンジョンが、突然探索者ギルドによって閉鎖されてしまったのだ。ダンジョン内には魔物がいないため、安心して魔石を掘り出すことができる。
それに、ダンジョンの中には誰もいないので、犬の姿のままでも、ダンジョンを出る時に人間の姿に戻っても問題がない。しかし、閉鎖されることは事前にわかっていたので、ボスが倒された場所を探していたが、ボスが倒されること自体が滅多にない。それに、もし倒されたとしても、その場所があまりにも遠かったりして、なかなか行けない。
「ん〜」
別に、ボスがいる場所で探索をしても良いのだけれど、服の問題が解決できなければ、ダンジョンに入ることができない。というのも、犬の姿でダンジョンに入ると、外に出た時に裸の人間の姿に戻ってしまうからだ。以前、病院に運ばれた時にダンジョン適応症のカウンセリングや身体検査を受けたことがある。その時の先生にでも相談しようかと考え、病院に向かった。
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病院で、僕は思い切って先生に相談を持ちかけた。
「あの......どうすれば良いでしょうか?」
と、少し不安そうに声をかけた。
先生は僕の質問に少し困ったような表情を浮かべながら、答えた。
「まあ、とりあえず、身体には何の問題も見つからなかったので、大丈夫ですね。それで、どうすれば良いかって言われてもな〜難しいな」
「やっぱり.....」
と、僕は落ち込んで肩を落とした。
ダンジョンでの問題を解決する方法がないと思い、少しだけ希望を失った瞬間だった。
「うん〜犬の姿になると服が脱げてしまう。それだと、ダンジョンの外に出ると裸になってしまう問題はどうしようもないですね。それに、ダンジョン適応症で完全に犬の姿になってしまう症例というのは今のところないから、対応が難しいんだよね。でも、一つだけ手が無いわけではないよ」
と、先生は少し考え込むような表情を見せた後、言葉を続けた。
「えっ、何ですか?」
と、僕は少し身を乗り出し、食い気味に聞いた。
「それは、魔石を使うんだよ。」
「魔石?」
と、僕は驚きの表情を浮かべた。
「そう。実は、ダンジョン適応症を引き起こす原因がダンジョンの中にある魔素だって言われているんだ。その魔素が結晶化して魔石になるって説があるんだよ。だから、魔石を持っていたら犬の姿でも問題なく家に帰れる可能性が高いんだ。」
「なるほど.....でも、魔石に触れても、僕は犬の姿になったりしませんでしたよ?」
僕は少し疑念を抱きながら言った。
「それがね、魔石を加工するんだよ。数年前、ダンジョン適応症の子がダンジョンを出ても元の姿に戻れなくて困っていたことがあったんだけど、その原因が魔石のアクセサリーだったんだよ」
「なるほど.....魔石を加工したものを身につけていると、変身した状態で外に出ることができる場合があるんですね.....」
僕は少し納得しながら、頭の中でその方法を想像してみる。
「うん、それだと犬の姿を保ちながら家に帰ることができるから、服の心配がなくなるんだ。ダンジョンから家に帰る時に着替える必要がなくなるし、ボスが倒されていないダンジョンにも挑戦できるようになるかもしれないね」
「それならいいなぁ.....」
僕はちょっと嬉しそうに呟いた。そうすれば、犬の姿で家に帰ることができるし、服を着替える手間も省けるから、ダンジョンの探索が楽になる。
「ただ、魔石は僕が興味があって取っておいたものなんだけど、経年劣化で壊れてしまって、今手元にはないんだけども、初めての事例だったから、その原因となった魔石の写真は撮っておいたから、参考にして作ってみたらいいと思うよ」
「ありがとうございます!」
僕は嬉しそうに言って、先生から数枚の写真をもらった。その写真をしっかりと受け取って、家に帰った。
帰宅後、早速家にある魔石を使って加工を始めようと思う。これで、犬の姿で家に帰れるようになれば、ダンジョン探索の自由度が増して、問題も解決できるだろう。ワクワクとした気持ちを胸に、僕はその日の夜、加工を始める準備を整えた。