第83話 恐怖・プニプニ
ドラゴン討伐の準備を整え、明日の朝一番で、ドラゴンが棲むダンジョンに挑むことになった。
今日は二人とも僕の家に泊まることになっていて、リサイクルショップでの買い物の帰りに、スーパーへ立ち寄り、食材を買い揃えた。
「柴犬さん、お肉買いましょう!」
「やったー!」
「柴ちゃん、野菜もちゃんと食べようね?」
「ヌ!」
野菜はあまり好きじゃないので、適当に返事をしておいた。食材をたっぷり買い込んで、僕たちは家に戻った。
ご飯を炊いて、野菜を切り終えた後、テーブルに焼肉プレートを置き、お肉を焼き始める。
「ん〜、おいしい♡」
スーパーのお肉だと侮ってはいけない。お肉屋さんの肉と同じくらい、美味しく感じる。
……まあ、種類は少ないけど。
「柴犬さん、これ焼けてますよ〜」
「柴ちゃん!さっきからお肉ばっか食べてる〜!」
そう言われながらも、野菜を少しは口にしつつ、満腹になるまで食べ続けた。
「ふう〜、ごちそうさま〜」
僕はそのまま床にゴロンと横になった。
「柴ちゃん、一緒にお風呂入る?」
「そういえば、柴犬さんのお風呂って意外と広いですよね。三人くらい余裕で入れそうです」
「い、いや、遠慮します!」
即座に断った僕をよそに、二人は楽しげにお風呂へ向かっていった。その間、僕は残った食器の片付けをしていた。
「ふう〜……」
後片付けが終わってスマホで動画配信を見ていると、庭のほうから「ゴソゴソ……」という音が聞こえた。
その直後、外が一瞬、ピカッと光った。
――何だろう?
不審に思って音のした方へ足を運んでみると、そこにはナイフを持った前に働いていた町工場の社長と、たまにご飯を食べにくる警察官が取り押さえている場面だった。
「おう、柴犬。こいつ、お前の家に侵入しようとしてたから捕まえたぞ!」
「クソが……!離せっ!」
「……やっぱり、俺の予想、当たってたか」
「アイツが……!アイツが全部悪いんだ!」
暴れながらも、必死に言い訳のような叫び声を上げていた。
警察官が手錠をかけ、応援を呼ぶと、すぐにパトカーが到着し、元社長は連行されていった。後で聞いた話によると、警察官は逆恨みの可能性を考え、こっそり夜間警備をしてくれていたらしい。
「ありがとうございます!」
「まあ、これも仕事だからな」
話を聞いて驚いたが、どうやら以前僕が働いていた会社が知らないうちに倒産していて、その元社長が逆恨みし、僕に復讐しようとしていたのだという。
もし警察官が警戒していてくれなかったらと思うと、背筋が冷たくなる。全てが落ち着いたころ、二人がお風呂から戻ってきた。
「どうしたの?」
「大丈夫ですか?なんで警察が?」
僕は、さっきの出来事を二人に説明した。
「えっ、こっわ……」
「でも、柴犬さんに何もなくて本当に良かったです」
警察から事情を聞かれたりして、さすがに少し疲れた。僕も疲れを取るためにお風呂に入ったのだけれど――
さっきのことを思い出してしまい、怖くなってすぐに出てきてしまった。
それに……人間の姿に戻るのを忘れていて、毛がびしょ濡れに。乾かすのに、ちょっと時間がかかってしまった。
「柴犬さん、思ったより早かったですね」
「柴ちゃん、怖くてすぐ出てきちゃったんでしょ〜。今日は一緒に寝よっ」
「う、うん……一緒に寝よ」
ちょっと怖さが残っていたので、布団を三枚敷いて三人一緒に寝ることにした。
「柴ちゃんの肉球、柔らかい〜」
「本当ですね。ぷにぷにしてて、気持ちいいです」
「ひゃっ……♡ い、いきなり触らないでよ……」
僕は真ん中で寝る形になっていて、両隣から包み込むようにぴったりくっつかれていた。布団の中で、左右から指先が僕の肉球をくすぐるように撫でてくる。
くにゅ、ぷにゅ、と優しく押し返す感触。
「ふふ、柴ちゃん、反応かわいい〜」
「ずっと、触っていたい感触」
僕の手が揉まれマッサージされている感じで、気持ちよくなってしまい、僕は抗うこともできず、静かに眠りへと落ちていった。




