第76話 メスガキって、20歳以上のオスにも適用されるのだろうか?
昨日、ウサウサさんに教えてもらった通りにやってみることにした。まずは、視聴者で試してみよう。
「こんにちは〜!」
『元気そうで良かった〜』
『ナフーニュースで柴犬さんの記事見たよ!訴えられるかもって話だったから、しばらく配信できないのかと思った』
『こんにちは〜』
ネットニュースで、僕が「脅された」と騒がれていたせいで、視聴者たちは心配してくれていたらしい。
でも、その分、ちゃんと配信で楽しませてあげないとね。
「今日はウサウサさんに教えてもらった、視聴者が喜ぶことを試してみようと思いまーす!」
『え、喜ぶこと?』
『ウサウサって…』
『あのメスガキ配信者の……え、まさか!?』
僕は両手で輪っかを作り、口に当てながら、カメラのレンズにそっと手を添えた。
本当なら専用マイクを使って、耳元で囁くように届けたかったけど、持ってない。
でも、カメラのレンズ付近にマイクが内蔵されている。囁くように聞かせるため、そっと顔を近づけ、鼻先がレンズに触れた。
『ふぁあああ!!』
『柴犬さん顔近い!!最高かよ!!』
『もうご褒美!もうご褒美!!ありがとうございます!!!』
ちょっと恥ずかしくて、沈黙ができる。でも、頑張って、掠れた声を絞り出す。
熱い息が漏れ、レンズが白く曇る。
「……ざぁーこ♡」
『ふぁっ!?』
『ぐぬぬぬぬ!!』
『叡智!叡智です!!』
「もっと言ってほしいの〜?」
『くっ…/// そ、そんなこと…!』
『や、やめろぉぉぉ! こんなの屈辱なはずなのに…!』
『これは…試されている…ッ!』
画面を埋め尽くす、必死に耐えようとするコメント。
ふふん、ウサウサさんの言うとおり、これは喜んでる証拠でしょ?
なら、もっとやってあげなきゃ
「ほら、もう一回言ってあげる♡ ざぁーこ♡ ざぁーこ♡ こんなことでドキドキしちゃってるの〜? ねぇ、正直に言っちゃいなよぉ♡」
『ぎゃあああああ!!』
『ぐぬぬぬぬぬ!!!』
『し、試練…これは試練…!』
「まあまあ、負け惜しみはいいからさぁ? ほら、早く負けを認めなよぉ♡」
『はぁ!?』
『なんだと!?』
『大人を舐めるな!』
『¥10000「お、おい、急にスパチャできるようになってるぞ!!」』
「……え、スパチャ? え、なんで!? ちゃんとできない設定にしてたはずなのに!!! ちょ、待って、投げないで!!」
一通の通知がスマホに来た。送り主はマネージャーさん。
『柴犬さんがメスガキすぎるので、スパチャを解禁しました』
「え、なんで、マネージャーさんスパチャ解禁しちゃったの!?」
『マネージャーさんナイスー』
『有能』
『ありがとう!』
アカウントの管理は事務所がやってるから、僕じゃなくてもスパチャの設定は変えられるんだった……。
『¥20000「おら!!」』
『¥30000「このオスガキが!!」』
『¥40000「どうだ!!」』
「ちょ、ちょっと!? なんで!? だ、ダメだよぉ! こんなことでお金使っちゃ……っ!!」
『¥10000「自分のために使ってます」』
『¥50000「ほら、もっと煽れよ」』
『¥70000「おい、どうした? さっきまでの元気は?」』
「っ……!? な、なんで……?」
『¥150000「おら、続けろよ」』
『¥200000「お得意の煽りはどうした?更にスパチャしてやるからよ!」』
「スパチャダメ!!」
僕は急いで配信を切った。
直ぐに配信を閉じたが、100万円以上のスパチャが投げ込まれてしまった。
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SNSのコメント欄は、視聴者たちの歓喜の声で埋め尽くされていた。
『勝った……!!』
『これが経済の力だ……!!』
『メスガキ、スパチャで完全敗北』
『俺たちの資金力に屈したメスガキが!』
『ふ、柴犬さんがスパチャ解禁するまで、貯金した甲斐があったぜ』




