第72話 ショッピング後
家に帰り、服を着替えた。やっぱり、ジーパンが一番落ち着く。
首にかけていた加工済みの魔石を外そうとしたその時、スマホが鳴った。
「はい」
「柴ちゃん〜! 見たよ〜! 私があげた服、着てお出かけしてたね〜! めっっちゃ可愛かったよ!」
「うぅ……」
確かに、外出中にスマホを向けられた記憶がある。そのときに撮られて、ネットに上げられたんだ……。
「恥ずかしいので……」
「なんで? 可愛かったじゃん! ぴっちりしたジーパンとトップスの組み合わせもなかなか色っぽかったけど、スカート履いたらもっと可愛い系だよ! 今度、一緒に服選び行こうよ〜!」
「お、お断りします……」
服選びなんて、恥ずかしくて無理だ……。僕は即座に断った。
「そういえば、隣にいた子って、サラマンダーさんの弟でしょ〜? 柴ちゃん、早速男を引っ掛けたの〜?」
「違うよ! 服を買いに行ったら、たまたま途中で会っただけ。一緒に買い物しただけで、そんな変な意味はないから!」
電話の向こうで、くすくすと笑う声が聞こえた。
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リビングで、二人のやり取りが繰り広げられていた。
翔太くんは少し照れくさそうに、小銭と丁寧にリボンで結ばれた小さな包みをお姉ちゃんに差し出した。
受け取ったお姉ちゃんが梱包の紙を豪快に破き開けると、中身は財布だった。
お姉ちゃんは目を細めながら、ふと楽しげな声で言った。
「ふーん? ねえ翔太、私にも首輪を買ってくれてもよかったんじゃない?」
その言葉に対し、翔太くんは一切迷うことなく、真顔で即答した。
「それはダメだよ」
まるで当然のことのように、淡々とした口調で続ける。
「首輪はワンワンねーねーしかあげない。遠くに行ってほしくない人、僕のって分からせるためにあげるものだから。お姉ちゃんは、いつでも家にいるでしょ? だからいらないよ」
その言葉を聞いた姉は、顎に手を当て、何やら考え込むような素振りを見せた。そして、次の瞬間、にやりと笑う。
「なるほどね。でも、それってつまり、『お姉ちゃんには絶対逃げられない』ってことでしょ?」
唐突な指摘に、翔太の表情がわずかに強張る。
「え?」
「私がいらないっていうより、私がどこにも行かないから必要ないっていう意味よね?」
「……まあ、そうだけど」
返答に困ったように、翔太は目をそらした。その様子を見て、姉はさらに面白がるように身を乗り出す。
「だったらさ、逆もアリでしょ?」
「え?」
「つまり、翔太が逃げないように、私が翔太に首輪をつけてもいいってこと!」
その言葉を聞いた瞬間、翔太の顔が驚愕に染まる。
「はあ!? なんでそうなる!?」
「だって、私がどこにも行かない証拠が必要なら、翔太が私のそばから離れない証拠も必要じゃない?」
「僕は逃げないし!」
「でも証明がないわよね? だから、はい、首輪決定!」
勢いよく手を打ち、勝ち誇ったような笑みを浮かべる姉。対する翔太は、慌てて首を横に振った。
「絶対イヤだって!!」
声を張り上げ、全力で拒否する翔太くん。




