第68話 地下室
1日署長は、疲れた。もし、車がもう少しスピードを出していたら、僕も止めることができなかったかもしれない。
一日署長も大変だった。今日は休日で配信とか予定も無いので、柴犬姿でテクテクと辺りを歩いていた。人間と犬の姿での散歩は目線が違うので、新しい発見ができる。柴犬姿での散歩は好きだ。
そんな感じで歩いていると、時々迷子になった犬だと思われて拾い上げられてしまう。でも、喋ると「あ、柴犬さんか〜」と最近はちょっと有名になってきたので、説明はあまり必要なくなった。
「柴犬くん」
「社長さん」
ばったり、社長さんと出会った。休日は、ダルっとした服で、真ん中に犬がプリントされた可愛い感じの服を着ている。
いつもはスーツでビシッと決めているので、なんだか新鮮だなと思っていると、突然抱きかかえられた。
「ちょっと、寄りたい所があるから、付き合って」
そう言われて、抱きかかえられながらどこかに連れてこられた。しばらくして、連れてこられたのは社長さんの家だった。
一人暮らしだが、結構広い一軒家を持っている。中に入るとより一層、凄さがわかる。
「す、すごい…」
僕はそのまま、お風呂で足を洗われ、ドライヤーで乾かされ、社長さんの家の中を探検した。大きな家の割には....ものが少ない。
「ちょっと来てくれる?」
と言われて着いていったのは、大きな本棚がある場所だった。社長さんが本棚の本を3冊取り出すと、本棚がスライドして地下室が現れた。
「す、すごい!!」
中には武器が飾られている。事務所の地下室ほどではないけど、かっこいい武器が並んでいる。
「武器マニアなのよ。ダンジョン武器資格取ってるし、銃刀法違反にはならないのよ」
「へぇ〜」
「ちなみに、あの折りたためるハンマーを作ったのも私よ」
「え、すごい!!」
「柴犬くんがミノタウロスを倒して、返してくれたハンマーね。あれ、棒部分に亀裂が入ってたの」
「ご、ごめんなさい」
もしかして、弁償とか!?と一瞬脳裏に浮かんだが違った。
「大丈夫よ。あれは、持ち運びやすさを追求して開発したから、耐久性が低くなって亀裂が入ったの。だから、改造して新しいハンマーを作ったのよ。私も、重量級の武器を扱ってくれる人がいなかったから、作り甲斐があるのよ」
奥に進むと、武器を作る作業場。そこには、滑車など、重いものを持ち上げる道具があり、そこに大きなハンマーがあった。
「柴犬くんの筋力なら、重さはいらないと思ってね。硬さと耐久力も上げたの。持ち手の下の部分にあるスイッチを押すとキャスターがハンマーの頭から出て、持ち運びができるようになるの」
へぇ〜、見た目は変わらないけどな〜と思っていると、社長さんが実際に使って見せてくれた。収納性はなくなったけど、重さが半分以下に抑えられ、200キロ以下だという。
まだ調整中だけど、完成したらプレゼントしてくれるらしい。社長さんは、重量級の武器が使われている所が好きらしい。
「ねぇ、柴犬くん。社長の私がここまでしてくれたから、前からやりたいと思ってた事....やってもいいかな?」
「ハンマーの事とか色々してくれたので良いですけど」
と言うと、社長さんが僕を持ち上げて、僕の鼻を甘噛みしてきた。
「ハム....ハム.....ハム.....」
別に痛くはない。でも、ちょっとこしょばい。
「ん?」
「前から、犬の鼻を噛んでみたかったの。なぜ私は犬に嫌われる体質なのか、よく吠えられたりするから、鼻噛みできなかったの」
鼻を甘噛みされていた。満足そうな顔になり社長さんは僕をおろした。
鼻が湿った感じがする。
「どうでした?」
「良かった。満足。今度は獣人の姿の時にも噛ませて貰う」
案外良かったのか、また僕の鼻を甘噛みしたいらしい。
確かに、僕の鼻は栗のような形をしていると自分でも思うけど...まあ、趣味は人それぞれだと思う。
「ハンマー出来たら直ぐに送るよ。楽しみにしておいて」
「ありがとうございます」
そう言って、僕は社長さんの家から出て行った。家に帰った後、僕も地下室欲しいと思い調べてたけど...高かったのでやめた。




