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第60話 旅館

「獣人の柴犬さん....可愛い!!」

「柴ちゃん、本当に可愛いな〜」

「うお!?」


 美緒さんとアリスさんは、僕を見るなり抱きついてきた。


「いい匂いがします」

「お肉の香り?」

「さっき、お肉を焼いてたからかな?」


 お昼を食べる前に来るのが分かっていたので、事前にタルタルチキンを作って待っていた。


「うわぁ〜美味しそう〜」

「いただきます!!」


 ミノタウロスについて話す前に、まずはご飯を食べることにした。

 この体にもだいぶ慣れてきていて、お箸はまだ使えないが、フォークとナイフなら問題なく扱えるようになっていた。


「な、何ですか?」

「いえいえ、どうぞ食べてください」

「そ、そうですか?」

「はい。柴犬さんの食べる姿が可愛いので」


 じっと見つめられながら食べるのは、さすがに落ち着かない。

なるべく気にしないようにしながら、タルタルをたっぷり乗せたチキンを口に運んだ。


 食事を終えると、本題のミノタウロスについてどうするか話し合うことになった。


「やっぱり、オークキングの時みたいにゴリ押しじゃ勝てないと思うの。だから、25階層にミノタウロスが出現するダンジョンに行かない?」

「え、美緒ちゃん。ミノタウロスが出るダンジョンがあるの?」

「あるよ。探索者ギルドのダンジョン情報に書いてあったから」


 ミノタウロスは強い。オークキングの2倍ほどの戦闘力があるとされ、対策なしで挑めば全滅は免れない。


 そのため、ミノタウロスがボスとして出現するダンジョンは、攻略を諦める探索者も多い。


 しかし、ダンジョンの各階層にはボスが存在し、それを発見・報告することで探索者ギルドから報酬が支払われる仕組みになっている。


 ボスの特徴などの情報はギルドにとって貴重なデータであり、探索者たちが集めた情報はギルドによって管理され、攻略に役立てられる。


特に新しいダンジョンや、これまでボスの詳細が不明だった階層の情報は、高額報酬が支払われることもある。


「どこにあるんですか?」

「ここから電車で5時間.....くらいだと思います」

「遠いですね」

「だけど、柴犬さんの庭に出現したミノタウロスと戦う前に、肩慣らしとしてはいいと思いますよ」

「確かに」


 ということで、5時間かけてミノタウロスが出現したというダンジョンへ向かった。

ダンジョン近くに着く頃にはもう夜だったので、どこかに宿泊することになった。


 美緒さんが事前に予約してくれていたのは、なかなか趣のある旅館だった。

 中に入ると、広々とした部屋に露天風呂までついていた。


「すごおおい〜だけど、一緒の部屋で良かったんですか?」

「まあ、他に部屋を取ってなかったですし…..柴犬さんと一緒に泊まれるのは....ご褒美というか?」

「ん?」

「あ、いえ....」


 アリスさんは、旅館が初めてなのか僕よりもはしゃいでいた。


「部屋なのに、外に露天風呂がある!! 不思議〜だけど最高〜!!」


そんな感じで大興奮だった。

僕たちはさっそくお風呂に入りに向かった。

僕は勾玉を外し、男湯へ。


少しして、夜ご飯の時間になった。


「おいひい〜」

「お肉美味しい〜」

「柴犬さん。このお肉一切れあげますよ〜」


 夕食には刺身やお肉など、豪華な料理が並んでいた。


「柴犬さん、部屋の露天風呂には入らないんですか?」

「気持ち良かったよ〜」


 僕は、露天風呂に入るには勾玉を外さないといけないし、外さなくても乾かすのが面倒なので入っていなかった。


「乾かすのが面倒くさいから…」

「大丈夫です! 柴犬さんの毛を乾かして、ふわふわにしてあげます!!」


 そう言うと、美緒さんは鞄からブラシを取り出した。僕は言われるがまま獣人の姿で部屋の露天風呂に入っていた。


「ふう〜」


湯船に浸かり、じんわりと温まる。

お湯が肌に心地よく、ふっとため息が漏れた。


お風呂から上がると、タオルで体を拭いたが、まだ少し濡れている。


「柴犬さん、こっちに来てください」


 美緒さんがドライヤーを構えて待っていた。

 椅子に座ると、温風が心地よく、アリスさんと美緒さんが交互にブラシを通してくれる。


 ブラッシングは、最近知ったのだがかなり気持ちいいので、つい無抵抗になってしまう。


「おお〜柴犬さんふわっふわ!!」

「シャンプーのいい匂いがする〜柴ちゃん、いい子いい子〜」


 ふわふわになった毛を撫でられたり、シャンプーの香りを嗅がれたりと、なんだか恥ずかしい....


 翌朝、ミノタウロスのいるダンジョンに向かった。僕のハンマーは電車では持ち運べないので、再びクレーン車で運んでもらっていた。

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